為替介入(外国為替市場介入)とは?押さえておきたい基本と実務への影響
近年、為替レートの大きな変動が企業経営に強い影響を与える場面が増えています。円相場は、各国との金利の差、国際情勢の不安、原油などの資源価格の変動といったさまざまな要因によって、大きく上下する状態です。
その都度、「為替介入(外国為替市場介入)とは何か」という言葉がニュースや新聞で取り上げられ、関心が高まります。
本記事では、為替介入の基本的な仕組みと目的、市場や企業実務にどのような影響が出るのか、税理士・会計士がどのように向き合うべきか解説します。
目次
為替介入を正しく理解する重要性

報道では「政府が介入した」「大規模な円買いが入った」といった説明になることが多く、為替介入(外国為替市場介入)とは何か、その仕組みや本当の目的まで詳しく解説されることはほとんどありません。
税理士・会計士としては、表面的な値動きだけを見るのではなく、為替介入の仕組みや背景、クライアント企業の財務や税務にどのような影響があるのかを、全体の流れとして理解しておく必要があります。
為替介入(外国為替市場介入)とは、単なる通貨の売買ではありません。国の経済政策の一つとして行われる重要な行動です。その影響は為替レートだけではなく、金利、株価、企業の業績、税額計算、さらには移転価格の考え方にまで広がります。
為替介入(外国為替市場介入)とは?仕組みと目的
為替介入(外国為替市場介入)とは何かを理解するためには、外国為替市場がどのような場所なのか、国の当局がどのような役割を持っているのかを押さえることが大切です。ここでは、為替介入の意味、具体的な方法や目的について解説します。
為替介入の意味と実施する主体の仕組み
為替介入(外国為替市場介入)とは、政府や中央銀行が外国為替市場で自国通貨や外国通貨を売買し、為替レートに直接働きかける政策のことを指します。日本の場合、最終的に介入を決めるのは財務省で、実際の売買の手続きを行うのは日本銀行です。このように、決定する役割と実行する役割が分かれています。
この点は、日本銀行が行う金利政策などの金融政策とは区別して考えなければなりません。金融政策は日本銀行が独立して判断しますが、為替介入は政府の判断で行われる政策です。
法的な根拠は外国為替と外国貿易法にあり、政府は為替の安定を図る責任を負っています。税理士・会計士にとっては、このような制度の背景を理解しておくことが重要です。為替介入は市場参加者の思いつきではなく、国の意思決定の結果として行われるであるためです。
また、どの機関がどのような立場で動いているのかを知ることで、今後も同じ方向の政策が続くのかどうかを考えるヒントにもなるでしょう。
円売り介入・円買い介入の仕組みとその効果
為替介入には、大きく分けて円売り介入と円買い介入の2つがあります。円売り介入とは、政府が円を売って外貨を買うことで、円安方向に動かそうとするものです。急激な円高が進み、輸出企業の業績に大きな悪影響が出ていると判断された場合などに行われることがあります。
一方、円買い介入は、政府が外貨を売って円を買うことで、行き過ぎた円安を抑えようとするものです。急激な円安は輸入コストの上昇や物価の上昇につながるため、そのスピードを緩める目的で行われることがあります。
ただし、為替市場は非常に大きく、世界中の投資家や企業が参加しています。そのため、介入によって一時的にレートが動いても、その効果が長く続くかどうかは市場の受け止め方次第です。
税理士・会計士としては、目先のレート変動だけに注目するのではなく、自社やクライアント企業がどの水準の為替レートに弱いのかを分析する視点が必要になります。外貨建取引が多い企業では、円高か円安かによって売上や利益、資金計画に直接影響が出るため、介入の方向性を理解することは重要です。
為替介入が市場全体に与える影響
為替介入(外国為替市場介入)とは為替レートを対象とした政策ですが、その影響は為替市場だけにとどまりません。為替、金利、株価はお互いに関連して動いています。そのため、1つの政策が複数の市場に同時に影響を与えることがあるのです。ここでは、為替介入の広がりについて解説します。
為替レートへの直接的な影響とその続き方
為替介入の分かりやすい効果のひとつは、為替レートが動くことです。大きな金額の通貨売買が行われれば、短期間で相場が大きく変動することがあります。
しかし、外国為替市場は世界でも最大規模の市場であり、毎日莫大な金額が取引されています。そのため、1度の介入だけで長期的な流れを完全に変えることは簡単ではありません。
実務では、一時的なレートの動きと、長期的な水準の変化を区別することが大切です。業績予想が過度に楽観的になったり、反対に悲観的になったりする可能性があります。そのため、決算や事業計画を立てる際には、介入直後のレートだけを見るのではなく、一定期間の平均値や今後の金利差の見通しを踏まえて考えなければなりません。
金利政策との関係と資金調達への影響
為替レートは、国ごとの金利の差に大きく影響されます。金利差の拡大によって円安が進んでいる場合、為替介入だけで流れを止めるのは難しいこともあるでしょう。その場合は、金融政策の方向性が重要です。
為替介入と金利政策が同じ方向を向いているかどうかは市場の信頼に大きく関わり、方向がずれていると市場は政策の効果を疑うことがあります。
企業実務では、金利上昇と為替変動が同時に起こることも珍しくありません。外貨建てで借入をしている企業では、為替差損益と利息負担の両方が変動する可能性があります。税理士・会計士は、資金繰りや損金算入額への影響を総合的に考え、企業の財務体質にどのような影響が出るかを確認しましょう。
株式市場や企業価値評価への影響
為替レートが変わると、企業の将来の利益見通しが変わるため、株式市場にも大きな影響を与えます。円安は輸出企業にとっては追い風になりますが輸入に頼る企業には負担が増え、円高の場合はその逆になります。
税理士・会計士が企業価値評価や事業再編に関わる場合、為替の前提をどの水準に置くかは重要です。将来のキャッシュフローをもとに企業価値を計算する方法では、為替レートの想定次第で評価額が大きく変わります。
為替の見通しを慎重に設定しないと、企業価値を高く見積もり過ぎたり、反対に低く見積もったりする可能性があるため注意しましょう。
為替介入が実務に与える影響

為替介入の影響は、国全体の経済だけでなく、企業の決算や税務申告にも影響します。ここでは、税理士・会計士が実務で特に注意すべきポイントを解説します。
外貨建取引と為替差損益の処理
外貨建ての売掛金や買掛金、外貨預金、外貨建借入金を持つ企業では、決算時に円換算を行うため、為替差損益が発生します。為替介入によってレートが大きく動くと、期末の評価額も大きく変わり、当期純利益や課税所得に影響が出るこもあります。
基本的に、税務上は会計処理に合わせて処理されますが、評価替えと実際に確定した損益の区別など実務上の問題点は少なくありません。特に決算期末に相場が急変した場合は、翌期に反対の損益が出る可能性もあります。そのため、企業が今後も事業を続けられるかという前提や、計上している繰延税金資産を将来使い切れる見込みがあるかについても確認しましょう。
ヘッジ会計とその有効性の確認
為替リスクを抑えるために、多くの企業が為替予約や通貨オプションなどを利用しています。為替介入によって相場の動きが大きくなると、ヘッジの効果にズレが生じることがあります。その結果、ヘッジ会計の有効性に影響が出る可能性もあるでしょう。
税理士・会計士は、ヘッジの内容が文書化されているか、有効性テストが適切に行われているかを確認しなければなりません。ヘッジ比率の見直しやリスク管理方針の再検討について、経営陣にアドバイスをすることも重要です。
移転価格税制とグループ内の利益配分
為替レートが大きく変動すると、多国籍企業グループ内の利益の配分にも影響が出ます。固定的な利益率を設定している場合、為替の変動によって特定の法人に利益が偏ることも少なくありません。
その利益の配分が、第三者同士で取引した場合と比べて不自然ではないかどうかを確認する必要があります。為替レートの変動が一時的なものではなく長期間続のであれば、現在の移転価格の決め方そのものを見直したり、為替変動に応じて価格を調整できる仕組みを取り入れたりすることも検討すべきでしょう。
為替介入で税理士・会計士に求められる役割
為替介入(外国為替市場介入)とは、市場に対する強いメッセージであり、経済全体に影響を与える重要な政策です。その効果が長続きしない場合もありますが、短期的な変動でも企業経営への影響は小さくありません。
国際取引が増え、外貨建取引が当たり前になっており、為替変動リスクは企業にとって避けられない課題です。政策の動きを読み取って数字に落とし込み、リスクとチャンスを見える形にすることが、現職の税理士・会計士に求められる専門性であるといえるでしょう。
オンライン研修・eラーニング
e-JINZAIで
社員スキルUP!
- e-JINZAI for account(会計事務所向け)
- e-JINZAI for business(一般企業・団体向け)
- 今ならe-JINZAIを2週間無料でお試しいただけます!
税理士.ch 編集部
税理士チャンネルでは、業界のプロフェッショナルによる連載から
最新の税制まで、税理士・会計士のためのお役立ち情報を多数掲載しています。
運営会社:株式会社ビズアップ総研
公式HP:https://www.bmc-net.jp/

