企業が定期預金口座を作るメリットとは?注意点や税法上の取扱についても解説

企業が定期預金口座を作るメリットとは?注意点や税法上の取扱についても解説

企業にとって、資金管理は経営戦略の中核をなす要素です。とくに安定したキャッシュフローを維持しつつ、余剰資金の有効活用を図ることは、企業価値を高めるためにもとても重要です。そこで、今回は資金活用の手段のひとつとして、法人の定期預金についてご紹介します。

定期預金は「個人の貯蓄手段」と思われがちですが、実は法人においても有効な運用手段となり得ます。

本記事では、法人口座における定期預金とは何か、法人が定期預金を活用するメリット・デメリット、税務上の取り扱いなどについて、わかりやすく解説していきます。資金管理に悩む事業者やその担当の税理士・会計士の方は、活用方法についてぜひ本記事をご参考ください。

目次

法人口座における「定期預金」とは

定期預金とは、あらかじめ定めた期間、銀行に資金を預けることで、その期間に応じた利息を受け取れる金融商品のことを指します。法人の場合も個人口座と同様に定期預金口座を開設でき、期間満了後に元本と利息が戻ってくる仕組みです。

銀行によっては、法人口座専用の定期預金商品も用意されており、運転資金の一部を一定期間動かさない前提で預けることで、利息収入を得ることができるものもあります。

また、定期預金にはいくつか種類があり、それぞれ利息の計算方法や解約の条件が異なるため、運用方針に応じた選択をすることが重要です。

主な定期預金商品の種類と特徴

法人向けの定期預金にはいくつか種類があり、金融機関によって取扱商品はことなります。以下に代表的なものについていくつか解説します。

  • スーパー定期:比較的高金利で、1カ月から数年まで幅広い期間が選べる一般的な定期預金。
  • 大口定期預金:1,000万円以上の高額預け入れに適し、交渉によっては金利が優遇されることも。
  • 積立定期預金:毎月一定額を継続的に積み立てる方式。まとまった資金の形成に最適。
  • 期日指定定期預金:一定の据え置き期間後、任意の時点で満期を選べる柔軟な商品。
  • 通知預金:定期預金と普通預金の中間に位置し、預け入れ後、数日前に通知すれば

引き出せるタイプ。急な出費に備えながら利率も確保可能。

定期預金のメリット

法人が定期預金を活用する主なメリットは以下の通りです。

資金の安全性が高い

定期預金は、元本保証がある安全性の高い金融商品であり、銀行が破綻しない限り、預けた資金は保全されます。リスクの高い金融商品に比べ、資金を安全に保管できる点が魅力です。

余剰資金の有効活用ができる

運転資金としてすぐに使わない資金を定期預金に回すことで、利息収入を得ることが可能です。普通預金よりも高い利率で運用できるため、低金利時代においても少しでも利益を増やしたい法人にとってはメリットがあります。

資金の管理がしやすくなる

定期預金は、目的別に口座を分けることで、資金用途の見える化にも貢献します。税金納付やボーナス支給、設備投資用などの目的別に分けることで、資金総額や用途をわかりやすくすることができるのです。

財務の信頼性向上

決算書に定期預金が記載されることで、財務の健全さをアピールすることができます。「安定した企業」として見られることで、金融機関との融資交渉や取引先との信頼構築にもプラスに働きます。

定期預金のデメリット

健全で安全性も高い定期預金ですが、デメリットも存在します。主な注意点を以下に示します。

流動性が低い

預け入れ期間中に資金を引き出す場合、中途解約扱いとなり、利息が減額されたり、元本割れのリスクが生じたりする可能性があります。流動性が必要な資金には不向きなので注意が必要です。

利回りが限定的

安全性が高い反面、利回りは他の投資商品に比べて低く、インフレの影響を考慮すると実質的な利益は限定的です。

銀行倒産リスク

万が一、預金を預けている銀行が破綻した場合、1,000万円とその利息までしか預金保険制度で保護されません。高額な資金を一行に集中させるのはリスク分散の観点から避けた方が良いでしょう。

法人の定期預金運用のポイント

法人が定期預金を運用する際のポイントは以下の通りです。

資金用途と預入期間の整合性を取る

必要資金を見極めた上で、余剰資金を適切な期間で預け入れることが大切です。資金繰りに影響しないよう、複数の期間で分割する「階層預金」も有効です。

銀行選びと金利の比較検討を行う

一口に定期預金といっても、金融機関によって金利や特徴が異なるため、定期預金口座を開設する銀行は慎重に選ぶことが大切です。また、ネット銀行では比較的高金利の定期預金があるため、選択肢に入れるようにすると良いでしょう。

中途解約の条件を確認しておく

いざというときに備え、中途解約のルールやペナルティについて事前に確認しておくようにしましょう。

税法上の取り扱いについて

ここでは、法人の定期預金にかかる税務処理について解説していきます。

利息収入の計上時期

法人では、定期預金の利息は「受取利息」として益金計上されます。計上時期は「実現主義」に基づき、原則として利息の受取日が属する事業年度に収益計上します。

利子所得の源泉徴収と法人税への影響

定期預金の利息には、原則20.315%の源泉徴収税が課されます。ただし、法人は確定申告時に源泉税を含めて申告するため、法人税の計算に影響を与える形となります。

法人税率が実効税率で30%程度の場合、受取利息に対する実質的な税負担はトータルで考慮される必要があります。そのため、利息収入を得る際は源泉徴収後のリターンにも注意が必要です。

金融商品としての評価・貸借対照表上の表示方法

定期預金は「現金及び預金」として貸借対照表に計上されるため、運用の透明性を高めることができます。

業種別の活用事例

ここでは、どのように定期預金が活用されているのか、業種別に解説していきます。

製造業:ボーナス資金の準備に活用

社員数の多い製造業では、毎年の賞与支給額が大きいため、半年~1年程度の定期預金で賞与資金を計画的に積み立てる企業が多くあります。

IT企業:M&Aや新規投資の待機資金に活用

事業拡大に積極的なベンチャー企業では、将来の買収や新事業への投資資金を一時的に定期預金で保管し、資金の安全性を保ちつつ利息収入を得るという手段もあります。

医療法人:設備更新資金の蓄積手段として活用

高額な医療機器の更新を見据え、3年~5年の長期定期預金を活用して計画的に資金を準備している事例もあります。

よくある質問(FAQ)

ここでは、よくある質問についてFAQ形式で解説していきます。

Q1. 法人でもネット銀行で定期預金できますか?

A. はい、多くのネット銀行が法人口座での定期預金を提供しています。金利が高めに設定されていることが多く、選択肢として有力です。どのネット銀行が定期預金を取り扱っているか、事前に調べておきましょう。

Q2. 定期預金の金利はどのように比較すれば良いですか?

A. 銀行のホームページや金融情報サイトで比較できます。預入期間・金額によって金利が異なるため、条件に合った商品を選びましょう。

Q3. 定期預金は節税になりますか?

A. 定期預金自体は節税にはなりませんが、利息収入を計画的に管理することで、課税タイミングや利益調整の一助となる場合があります。不明点がある場合には、税理士への相談をおすすめします。

Q4. 法人での定期預金は元本保証されますか?

A. 銀行が破綻しない限り元本保証です。ただし、預金保険制度では1,000万円とその利息までしか保護されない点に注意してください。

Q5. 定期預金を担保に融資を受けることは可能ですか?

A. はい、定期預金を担保にした融資商品を提供している銀行もあります。必要資金を確保しつつ運用継続が可能です。

まとめ

いかがでしたか?

本記事では法人の定期預金口座の活用方法についてわかりやすく解説してきました。

まとめると、

  • 法人も定期預金を活用することで、安全に余剰資金を運用できる
  • 定期預金には複数の商品タイプがあり、用途や資金計画に応じた選択が重要
  • 定期預金の運用において、流動性や利回りなどにおいてデメリットもあるため注意が必要
  • 利息収入は法人税の対象となるため、税務処理や計上タイミングに注意が必要

以上が本記事の要点となります。

企業が定期預金を活用することで、資金の安全性確保だけでなく、資金管理の効率化や財務の信頼性向上にも役立てることができます。

しかし、流動性の問題や利回りの制約といった注意点も多くあるため、運用にあたっては資金の性質や使用時期を見極めたうえで、注意して活用することが求められます。

資金繰りと投資をバランスさせることはとても難しく、しかし重要であるために、事業者は慎重な経営判断をする必要があります。注意点の多い定期預金ですが、うまく使うことができれば、経営戦略において健全で確実性のあるメリットをもたらしてくれるでしょう。

本記事が法人における定期預金活用の知識を深める一助となれば幸いです。

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