電子帳簿保存法の罰則は?経理担当者が知るべきリスクと回避策

電子帳簿保存法の罰則は?経理担当者が知るべきリスクと回避策

令和7年度税制改正大綱で改定された電子帳簿保存法。猶予期間がすでに終了している現在において「自社の法対応はこのままでいいのだろうか?」と気になっている経理担当の方も多いのではないでしょうか。

電子帳簿保存法違反の罰則は、思いの外、重いものです。事業規模によっては事業継続に致命的な影響を与えかねません。

この記事では、罰則の内容やよくある違反の事例、具体的な対策などを詳しく紹介しています。自社の法対応が本当に要件を満たしているのか、不安な方はぜひ記事内容をご確認ください。

目次

知らなかったでは済まされない|電子帳簿保存法違反の罰則を軽視できない理由

新たに電子帳簿保存法が改正され、法律に違反した場合、重大な罰則が科されるようになりました。

知らなかったでは済まされない、業務に与える大きな影響について詳しく説明します。

  • 電子帳簿保存法とは?
  • 企業の存続に関わるほどの大きな影響がある

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは、所得税や法人税に関する帳簿や書類を、一定の要件を満たした上で電子データとして保存することを認めた法律です。

紙での保存が原則だった経理業務のデジタル化を推進するために制定されました。

以下の3つの区分で定められています。

媒体保存方法
電子帳簿等保存会計ソフト等で作成した帳簿や書類をそのまま電子保存
スキャナ保存紙で受け取った領収書や請求書などをスキャンして電子保存
電子取引メールなどで授受したデータを電子データのまま保存すること(2024年1月からは原則義務化)

特に電子取引のデータ保存が義務化されたことで、すべての事業者に大きな影響を与えています。

企業の存続に関わるほどの大きな影響がある

電子帳簿保存法の罰則は、単なる過料に終わりません。違反すると、会社の存続に関わるほどの重大な罰則を受けることになります。

主なリスクは次の3点です。

  1. 青色申告の承認取消し
  2. 重加算税の加重
  3. 会社法による過料

税務関連の特例を失うことになり、業態や事業規模によっては大変なダメージを負うことになります。

具体的な内容について、次の項目にて詳しく説明します。

電子帳簿保存法違反「3大罰則」の全容とは?

会社の存続にも影響を及ぼしかねない3大罰則について、詳しく説明します。

  • 青色申告の承認取り消し
  • 重加算税の10%加重
  • 100万円以下の罰金

青色申告の承認取り消し

電子帳簿保存法の違反、国税関係帳簿書類の備付け・記録・保存が著しく不十分と税務署に判断された場合、青色申告の承認が取り消される恐れがあります。

青色申告の取り消しは会社運営にとって、重大な影響を及ぼしかねない罰則の一つです。承認が取り消しされることで想定されるリスクは次の2点です。

  1. 税制優遇の消失
  2. 欠損金の繰越不適用

個人事業主の場合、最大65万円の青色申告特別控除が受けられなくなります。

欠損金の繰越ができなくなると、法人や個人事業主が赤字を出した場合、翌年以降の黒字と相殺して税金を軽減できる救済措置が使えなくなります。

罰則によって2つの特例が受けられなくなると、将来的に支払う税金が大幅に上がってしまい、事業運営に与えるダメージは見過ごせないものとなるでしょう。

重加算税の10%加重

重加算税の10%加重は、電子取引データやスキャナ保存データに関して、データの改ざんなどの悪質な隠蔽や仮装が税務調査で判明した場合に適用されるペナルティです。

通常の重加算税に、さらに10%が上乗せされます。合計45%もの重加算税が課せられることになり、企業の金銭的負担は非常に大きくなります。

重加算税の10%加重の罰則は、電子データによる不正行為の抑止を目的として、2022年1月の法改正で設けられました。電子化された帳簿書類の真実性の確保を怠り、意図的な不正を行った場合に適用されます。

会社法違反による100万円以下の罰金

電子帳簿保存法の要件を満たさずに国税関係帳簿書類の保存を怠った場合、会社法第976条に定める「帳簿等に関する記録・保存義務違反」に問われる可能性があります。

会社法違反が認められた場合の罰則は100万円以下の過料です。会社法違反の罰金は、青色申告の取消や重加算税などの税務上のペナルティとは別に、会社としての法律違反として問われます。

電子取引データ保存の義務化により、適切な保存を怠ると会社法上の義務違反に問われる可能性があります。

よくある電子帳簿保存法の違反事例

想定される電子帳簿保存法の違反事例を2点、紹介します。

  • 真実性と可視性の要件不備
  • 電子取引データの紙保存

真実性と可視性の要件不備

電子帳簿保存法では、電子データの信頼性を確保するため、主に「真実性」と「可視性」という二つの要件を満たす必要があります。

真実性の要件不備

データが改ざんされていないことを保証する要件です。不備の例として、タイムスタンプの付与や、訂正・削除履歴が残るシステムを使っていないことがあります。真実性が守られていないと、悪質な不正行為と見なされ、重加算税の10%加重などの重い罰則が科される可能性があります。

可視性の要件不備

保存されたデータは、必要な時にすぐに見られる状態にしておかなければいけません。

不備の例として、税務職員の求めに応じたダウンロード提供ができないことや、「日付」「金額」「取引先」で検索できない状態になっていることなどが挙げられます。

可視性の要件を満たしていないと、税務調査において業務処理が不十分と判断される要因になります。

電子取引データの紙保存

メール添付の請求書PDF、クラウドサービス経由の領収書などの電子取引データの保存は、2024年1月1日以降、企業規模にかかわらず、紙に出力しての保存は認められなくなりました。電子データのまま保存することは義務となっています。

電子取引データ保存の義務に違反し、紙に出力して原本と見なしたり、電子データ自体を削除したりする行為は、電帳法上の重大な違反事例です。

もし税務調査で電子データが確認できず、検索機能や真実性の確保などの要件を満たさずに保存していることが発覚した場合、青色申告の承認取り消しや、重加算税の加重といった罰則を受ける可能性があります。

経理担当者がとるべき罰則回避の3ステップ

会社の経理担当者は、罰則にならないように社内制度の整備と必要に応じたシステムの導入を検討する必要があります。

以下3つのステップにわけて、罰則対策を紹介します。

  • 現在の保存体制のチェックリストを作成する
  • 社内規定・ルールの整備と社員教育の徹底
  • 電子法対応のシステム導入や見直し

現在の保存体制のチェックリストを作成する

罰則を回避するためには、まず自社の電子帳簿保存法への対応状況を正確に把握しなければいけません。

次の3つの区分ごとに、現状の業務フローとシステムが法要件を満たしているか、確認用のチェックリストを作成しましょう。

保存種別チェック項目
電子帳簿等保存会計ソフトなどで作成した帳簿や書類が、訂正・削除履歴の確保など、優良な電子帳簿の要件を満たしているか
スキャナ保存紙の書類をスキャンする場合、タイムスタンプや解像度など要件を満たしているか
電子取引受領・発行した電子データが、真実性と可視性の要件を満たして保存されているか

保存体制のチェックリストを作成することによって、次のステップ移行の優先順位がつけやすくなります。

社内規定・ルールの整備と社員教育の徹底

電子帳簿保存法の要件に適合する保存と管理を行うには、システムを導入するだけでは不十分です。罰則を回避するために、全社で統一されたルール設定と周知が求められます。

具体的には、電子取引データの授受や保存に関する「事務処理規定」の策定と、運用が必要です。事務処理規定には、データをいつ、誰が、どのように保存し、訂正・削除を行うのか、などのプロセスなどを明確に定めます。この規定は、特に改ざん防止の真実性要件を満たすための重要な対応策の一つです。

ルールを決めても形骸化してしまっては意味がありません。単なる飾りにならないように、経理担当者だけでなく、営業や購買など電子データを取り扱うすべての従業員に対して継続的な教育が必要です。

コンプライアンス意識が、結果的に罰則回避につながります。

電子法対応のシステム導入や見直し

最後のステップは、電帳法要件を満たしたシステムの活用です。

特に義務化された電子取引データ保存においては、手作業で要件を満たすのは非常に困難です。日付、金額、取引先などの検索機能や、改ざん防止措置に対応したクラウド型会計システムや、文書管理システムを導入しましょう。

すでにシステムを導入済みの場合も、最新の法令改正にシステムが対応し続けているかを定期的に見直す必要があります。システムを活用しつつ業務効率を上げて、できる限りヒューマンエラーが起きない体制を構築しましょう。

まとめ

電子帳簿保存法の罰則は、事業規模次第では、事業運営に致命的なダメージを与えかねません。知らなかったでは済まされない内容です。まずは、電子帳簿保存法と罰則について、十分に認識しておきましょう。

必要に応じて、社内制度の整備と対応したシステムの導入も検討する必要があります。経理に携わる人だけでなく、電子データを扱う全ての従業員に対して、しっかりとした周知徹底が必要です。

違反をしてしまってからでは、取り返しがつきません。日々の心がけがとても大切です。

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