暗号資産の申告漏れによる税務調査とは?チェックポイントや調査方法も紹介

暗号資産も他の資産と同様に、正しく税務申告をしていないと税務調査の対象となります。税務調査にて脱税が指摘された場合、無申告加算税や重加算税のペナルティが与えられるため、注意が必要です。

本記事では、税務調査のチェックポイントや申告漏れを追跡する税務調査の方法を紹介しています。暗号資産の税務調査のポイントを知りたい人はぜひ記事内容をご確認ください。

目次

暗号資産の未申告はバレる?収益を申告しなかった場合も紹介

税務署では多少の時間はかかっても、ほとんどの暗号資産取引情報を調べ上げることができます。どんな小さな取引でも隠すことはできないと考えておいた方が良いでしょう。

たとえ小さな収益であったとしても、確定申告の義務がある場合は税務調査にて指摘されることは大いにあり得ることです。

他の無申告分と合わせて、税務署は細かく把握しています。申告のタイミングが複雑な暗号資産取引ですが、基本的に無申告は税務署にバレる前提で考えておく必要があります。

税務調査で発覚した無申告の扱いは、基本的に一般的な申告漏れと同じく、無申告加算税や重加算税のペナルティを受けます。直近の年度のみならず、3〜5年、悪質な場合は7年まで遡って指摘されるため、過去の申告漏れをまとめて指摘される可能性もあります。

暗号資産の税務調査で見られるポイント

税務調査の際に、調査官がチェックする主なポイントを3つ紹介します。

  • 暗号資産の取引の損益計算が正しくなされているか
  • イレギュラーな取引の申告漏れ
  • 暗号資産の取引をすべて網羅できているか

暗号資産の取引の損益計算が正しくなされているか

暗号資産の損益計算は取引量が多くなればなるほど、複雑さを極めます。エクセルや手動の計算で収益を管理している人は、正確に計算できていない可能性があるため、注意しましょう。

今一度、暗号資産の課税タイミングと収益計算をおさらいして、間違いがないか十分に確認しておく必要があります。

どうしても不安な場合、専門家や税務署への問い合わせが必要であることをクライアントへ伝えましょう。

イレギュラーな取引の申告漏れ

暗号資産の取引は、税理士の間でも判断が分かれるほど複雑なケースがあります。

税法上の処理がグレー状態の暗号資産取引については、租税原則や関係法令規則の趣旨に則って正しく税務処理ができているか、不当に税金を低くするような処理がなされていないか、という点は税務署の見極めポイントの一つです。

暗号資産を貸付する取引や相対取引など、イレギュラー取引は数多いです。取引の一つ一つの処理が税法の趣旨、原則からかけ離れていないか、しっかり確認しておきましょう。

暗号資産の取引をすべて網羅できているか

計算の正確性とともに、すべての取引を集計して損益計算がなされているか、という点も大事なポイントです。
税務調査においては、取引の網羅性がもっとも重要視されます。過失による損益計算の間違いは指摘されるものの、金額はそれほど多くなく、悪質と見られるケースは少ないです。

取引漏れの場合は税金を抑えるための過少申告とみなされるため、故意と見られる可能性が高いです。脱税を疑われる可能性が高いため、しっかりチェックしておきましょう。

よくある取引漏れの実例を3つ紹介します。

  • 海外取引所の収益を損益計算に算入しなかった
  • 現金換金業者を利用して相対取引を行なったものの、損益計算に算入しなかった
  • ICO取引について、最初から損益に入れてなかった

以上のケースで損益計算に算入しなければ、確定申告で収める税金に大きな違いがあらわれます。

税務署が行う基本的な税務調査の方法

税務申告の整合性を確認するために、税務署が行う取引の確認方法を紹介します。整合性が確認できなかった場合に、本格的な税務調査へ移行する流れです。

  • 損益計算の保有コイン数と暗号資産取引所の保有コイン数の整合性
  • Google Authenticatorに登録されている取引所の調査
  • 暗号資産取引所や相対取引先が税務調査を受けた場合の反面調査

損益計算の保有コイン数と暗号資産取引所の保有コイン数の整合性

損益計算をすると期末の保有コインを算出することができます。たとえば1ビットコインを購入した後、0.5ビットコインを売却して期末を迎えた場合、期末日保有のコイン数は0.5です。

期末に保有しているビットコインは、利用しているそれぞれの取引所に表示されている保有コイン数の合計と一致するはずです。 保有残高が合わない場合は、IOC取引の集計漏れや海外取引所の集計漏れの可能性が考えられます。

損益計算と取引所の取引履歴との照合は税務調査の基本と言っても良いでしょう。

Google Authenticator に登録されている取引所の調査

Google Authenticator は暗号資産の取引所にログインする時や、取引を行う際に使う2段階認証アプリです。2段階認証にGoogle Authenticator を利用している取引所は数多くあります。

税務調査の際に、Google Authenticator の提示を求められることがあります。登録されている取引所と申告している取引所が違う場合、注意が必要です。未申告の資産を持っていると疑われてしまいます。

Google Authenticator に登録したものの、一度も取引をしていない取引所がある場合は、その取引所の取引履歴や入出金データをしっかり揃えておきましょう。

暗号資産取引所や相対取引先が税務調査を受けた場合の反面調査

相対取引先に税務調査が入った場合、反面調査として取引相手先にも税務調査が入る可能性が高いです。

相対取引とは、暗号資産取引所を介さずに現金化する取引のことを言います。相対取引はマネーロンダリングの疑いがかけられる可能性がとても高いです。相対取引による現金化を行う場合、犯罪収益移転防止法に抵触しないか、十分に気をつけましょう。

仮に相対取引をした場合、税務上、贈与税が課税される可能性もあり得ます。

税務調査を受けてしまった時の対応

税務調査は、申告内容の整合性を確認するための調査です。もし間違えていたら、申告内容の修正を求めます。

税務調査の対応は基本的に税理士は同席する必要はありません。とはいえ、税金の専門家でない人が税金の専門家である税務調査官と、税務について話し合うのは無理があります。

税金の徴収を目的とする税務調査官の前では、判断が難しいグレーな内容についても、納税の方向で話を進められてしまうでしょう。反論するためには、関連する税法に従いつつ適切に説得しなければいけません。したがって、クライアントが税務調査を受けた場合は、税理士として同席するのが望ましいです。

税理士が同席した方が交渉がスムーズに進み、結果としてクライアントの負担が少なくなるケースが多いです。

暗号資産に課税されるタイミング

暗号資産が課税される主なタイミングをピックアップしました。おさらい程度にご確認ください。

  • 暗号資産の売却 
  • 他の暗号資産への交換
  • 暗号資産による決済 
  • 暗号資産の無償受け取り
  • 商品やサービスの対価として暗号資産を受け取った時
  • 暗号資産のマイニングやレンディング(貸出)などで利子を得た時 

暗号資産の売却で得た差益は基本的な課税タイミングです。購入時よりも価格が上がった状態で別の仮想通貨へ交換する、または決済手段に使う場合も、購入当初より高いレートで精算できた場合も課税対象になります。

その他、無償で暗号資産を受け取った場合や、商品、サービスの対価として暗号資産を受け取った場合、マイニングによる暗号資産の取得や貸し出しによる利子の取得も課税対象です。

売却による差益以外の課税タイミングは、暗号資産特有の難解さがあります。他の暗号資産との交換や、決済として暗号資産を使ったことがある場合は、取引内容をよく確認する必要があります。

暗号資産の確定申告が必要なケース

確定申告が必要なのか、迷った時のチェックポイントは次の通りです。

  • 暗号資産の所得が20万円を超えた場合
  • 他に事業所得がある場合
  • 贈与の控除額を超えている場合

暗号資産の所得が20万円を超えていなければ、確定申告の必要はありません。売却益が20万円を超えている場合でも、収益から必要経費を引いた金額が20万円以下の場合、確定申告は不要です。

一方で、20万円を超えていない場合でも、他の事業所得と合わせて20万円を超える場合には暗号資産の所得と合わせて確定申告をする必要があります。

また、年間110万円の控除額を超える贈与を受けた場合も確定申告が必要です。

まとめ

暗号資産の課税タイミングはイレギュラーケースが多く、無意識のうちに申告漏れをしてしまいます。まずは、基本的な課税タイミングを抑えておきましょう。

万が一、クライアントが税務調査にあってしまった場合、担当税理士として同席を求められる可能性が高いです。担当税理士として十分な立ち振る舞いができるように、基本的な知識はしっかり身につけておきましょう。

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