暗号資産(仮想通貨)にかかる所得税とは?税率や課税タイミングなどを紹介

税率や課税タイミングなどを紹介で大きな利益をあげても、税金に関する知識がなければ真っ当な利益が得られないばかりか、納税金額を準備できなかった!という事態にも陥りかねません。

本記事では、暗号資産(仮想通貨)の所得税を中心に、課税に関する詳細をまとめています。暗号資産の課税について、詳細が気になる人はぜひ記事内容をご確認ください。

目次

暗号資産の取引で発生する所得税は雑所得

暗号資産の売買などで年間20万円以上を収益を得た場合、収益に対して所得税がかかります。

暗号資産で得た収益への所得税分類は、雑所得です。雑所得は給与所得などと合算した額に応じて税金が決まる総合課税に分類されます。

暗号資産の利益が多い場合、累進課税制度によって所得税の税率は最大で45%となり、住民税の10%と合わせて、税率55%となるケースもあります。

株式やFXなどと比べても暗号資産の取引で得た所得にかかる税金は割高です。

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え330万円以下10%97,500円
330万円を超え695万円以下20%427,500円
695万円を超え900万円以下23%636,000円
900万円を超え1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

暗号資産の利用で課税対象となるタイミング

課税対象となるタイミングを4つ紹介します。

  • 暗号資産を売却したとき
  • 暗号資産で決済したとき
  • 暗号資産を使って他の暗号資産を買ったとき
  • マイニングやステーキング、レンディングで暗号資産を取得したとき

暗号資産を売却したとき

暗号資産の取引では、購入価格と売却価格の差額で損益が発生します。

売却時の収益が年間を通じて20万円以下の場合、税務申告は発生しないため、非課税です。

厳密には暗号資産や他の副業などの収益から必要経費を差し引いて、利益が20万円を超えた場合に確定申告と納税の義務が発生します。

暗号資産で決済したとき

含み益がある状態で、暗号資産にて決済を行うと課税対象となります。含み益がある状態でも保有しているだけなら課税対象とはなりませんが、決済すると課税対象となる点に注意が必要です。

例えば、ビットコインを「1BTC=150万円」で1BTC購入し、それが「1BTC=200万円」に値上がりすると50万円の含み益が発生します。

この時に200万円の商品購入のためにビットコインを使った場合、利益確定と見なされ50万円の収益に対して課税が発生します。

現在、日本国内で暗号資産を使った決済ができるのは、ビックカメラなどごく少数の事業者に限られるため、決済で課税対象となるケースは稀です。

暗号資産を使って他の暗号資産を買ったとき

決済手段に用いる方法と同じく、含み益が発生している暗号資産で他の暗号資産を購入した場合、利益の確定と見なされて課税対象となります。

暗号資産は、決済手段に利用できる他に他の暗号資産と交換できる性質も持ち合わせています。保有しているビットコインでイーサリアムや、リップルを購入するケースもあり得ます。

商品購入による課税発生よりも暗号資産の交換による課税発生の方がケースとしては多いでしょう。

マイニングやステーキング、レンディングで暗号資産を取得したとき

その他、暗号資産を獲得したそれぞれのタイミングで課税対象となります。

マイニング仮想通貨の取引内容を承認し、取引を成立させる作業。取引の承認を行い、ブロックの生成を手伝う見返りとして報酬が得られる
ステーキング 暗号資産をブロックチェーンネットワークに預けておくと、その対価として報酬が得られる仕組み
レンディング一定の期間、保有している仮想通貨を取引所に貸し出して取引所から金利収入を得る

その他にも、エアドロップという暗号資産無料配布や、ハードフォークによる暗号資産の取得も対象です。収益から必要経費を引いた残りが所得となります。

暗号資産の所得を計算する方法は総平均法を用いる

暗号資産で得た所得を算出するために用いられる計算式は総平均法です。基本的に個人の申告では総平均法にて算出されます。

総平均法の算出方法はいたってシンプルです。基準期間内の暗号資産の平均購入価格を計算して、売却価格との差額を算出します。

具体的には以下の通りです。

相場購入数量売却数量
2月1BTC:100万円5BTC
3月1BTC:150万円2BTC
7月1BTC:200万円5BTC
9月1BTC:250万円2BTC

1年間の合計購入数量 5BTC×2=10BTC
1年間の合計購入価格 (100万円×5BTC)+(200万円×5BTC)=1,500万円
1年間の平均購入価格 1,500万円÷10BTC=150万円

売却価格 (150万円×2BTC)+(250万円×2BTC)=800万円

所得の算出
800万円(売却価格)-(150万円(平均購入価格)×4(売却数量))=200万円

まず、1年間に購入した暗号資産の合計費用を購入数量で割って1回あたりの平均購入金額を算出します。1回あたりの平均購入価格に、年間の購入数量をかけた数字が年間の平均購入価格です。

この例では、年間の所得は200万円と算出されました。

暗号資産で得た所得について確定申告が必要なケースとは

年間20万円の所得を超えると確定申告が必要です。確定申告が必要となるのは、源泉徴収されていない所得が一定以上ある人です。

暗号資産の所得は株式のように特定口座・源泉徴収ありの制度がないため、所得が20万円以上になれば確定申告が必要になります。

年間20万円の利益を得た場合

確定申告が必要になるケースは、暗号資産の所得と他の雑所得の合計が20万円以上となった時です。
暗号資産の収益から必要経費を引いた金額が20万円を超える場合は、必ず確定申告が必要、ということになります。

暗号資産の経費として計上できる項目は、取得費用、出金手数料、取引手数料、暗号資産関連の書籍やセミナー代です。取引に関連する箇所を明確にできる場合、通信費も経費項目の対象にできます。

持っているだけでは確定申告の対象にならない

取得した暗号資産を保有しているだけなら、いくら値上がりしても課税対象になりません。

課税対象となるのは次の通りです。

  • エアドロップなどによる新たな暗号資産を取得したとき
  • 保有している暗号資産を法定通貨へ換金したとき
  • 決済・交換などによって確定した利益

判断が難しいケースとペナルティ

最近では、スマートフォンなどモバイル端末でゲームをすると簡単に暗号資産やNFTが獲得できる仕組みがあります。

その他、歩くことで暗号資産がゲットできる「ステップン」など、ゲームとファイナンスを掛け合わせた、いわゆる「GameFi」が盛んです。

ゲームで獲得した暗号資産も課税対象となりますので、注意が必要です。資産運用に暗号資産を取り入れている事業所では、取り扱いに注意しなければいけません。

判断が難しい場合は、税務署へ確認しましょう。

税務申告におけるペナルティを簡単にまとめました。

無申告加算税税額の50万円までについては15%、50万円を超える部分については20%の加算税
過少申告加算税不足していた所得税と併せて、10%の過少申告加算税を納付。
重加算税悪質な仮装・隠ぺい行為が発覚した場合。無申告の場合であれば40%、過少申告の場合は35%。

暗号資産の節税方法として有効な手段

暗号資産の節税方法はある程度限られていますが、中でも有効と思われる方法を3つ紹介します。

  • できる限り経費を計上する
  • 暗号資産どうしの損益通算を行う
  • 法人成りで節税する

できる限り経費を計上する

暗号資産の取引には、取引手数料やウォレットの維持費、書籍代やセミナー費用など様々な経費がかかります。

経費次第では暗号資産の所得を半分にして申告することも可能です。

細かい経費をしっかり計上できれば所得の圧縮に繋がるため、節税効果は十分見込めます。基本的な節税対策として、きちんと経費計上することを提案しましょう。

暗号資産どうしの損益通算を行う

雑所得は他の所得と相殺できませんが、暗号資産どうしの損益は相殺できます。ビットコインとイーサリアム、リップルなど、複数の暗号資産を取引している人には、暗号資産どうしの損益通算ができることを伝えましょう。

確定申告の際は正確な計算と、証拠となる物を揃えた上での申告が必要です。根拠を問われた時に説明できなければ、過少申告と見なされる可能性があります。

法人成りで節税する

法人を設立して税率を下げる方法もあります。法人税の税率は所得税よりも低いため、節税には有効な手段です。個人の最高税率は55%ですが、法人税の場合、最高税率は22.5%にとどまります。

法人化には暗号資産の譲渡や固定費などのデメリットもあるため、節税効果とのバランスを考えて提案すると良いでしょう。

まとめ

昨今では個人のみならず企業や団体の資産運用にて、暗号資産を組み入れるケースもわずかながら見受けられるようになりました。

暗号資産は株などに比べて、税率が割高で節税対策も用意されていません。また、課税タイミングも分かりにくく、知らない間に所得が発生していた、ということもありえます。

暗号資産を扱う事業所や個人を担当する時は、課税に関する基本的な知識を身につけておきましょう。

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