【令和6年】建設事業主等に対する助成金の各コースを解説
トライアル雇用助成金、人材確保等支援助成金、人材開発支援助成金には、建設事業主向けのコースがあります。
この記事では、3つの助成金に設けられている建設事業主向けの各コースについて、助成内容や助成金の額、顧問先に案内する際のポイントをまとめます。
目次
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金とは、一定の理由から就職が困難な求職者への雇用機会の創出を図ることを目的とする助成金です。無期雇用契約へ移行することを前提に、試行雇用(トライアル雇用)を一定期間行うことで、1人あたり月額4万円が助成されます。
さらに建設事業主のトライアル雇用助成金(一般トライアルコースまたは障害者トライアルコース)の対象者が、現場作業や施工管理を行う若年者(雇用開始時点で35歳未満)か女性である場合、その上乗せとして「若年・女性建設労働者トライアルコース」を追加申請することにより、追加で1人あたり月額4万円が助成されます。つまり最大で「1人あたり8万円×3か月」です。
建設事業主向けコースの助成金の金額
コース名 | 助成金額 |
若年・女性建設労働者トライアルコース | 1人あたり4万円/月×最長3か月 (トライアル雇用助成金の上乗せ) |
(※)就労日数が少ないと減額になる場合があります。
建設事業主向けコースのポイント
「若年・女性建設労働者トライアルコース」に関心のある建設事業主には、次の点に注意して、案内をするようにしましょう。
- 建設事業主の要件
建設事業主については、雇用管理責任者の選任をしていることや、土木や建築の区分での雇用保険料率(18.5/1,000)が適用されていることなどの要件があります。本文末で一覧にしてまとめています。 - 若年者と女性の業務内容
建設工事現場での現場作業(左官、大工、鉄筋工、配管工など)に従事する者や、施工管理を行う者が該当します。施工管理であっても、設計、測量、経理、営業などに従事する者は対象とならないことに注意しましょう。なお、厚生労働のQ&Aによれば、対象外の業務に従事しても、現場作業等が「実労働時間の半分」を超えれば助成対象になるとしています。
厚生労働省HP:建設事業主等に対する助成金Q&A(Q2-3) - 申請の手続き
通常のトライアル雇用助成金(一般コースまたは障害者コース)の手続きを行い、その支給申請時に「若年・女性建設労働者トライアルコース」を申請するという流れになります。
人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金とは、人材の確保と定着を目的とする助成金です。労働環境の向上を図る魅力ある職場づくりに取り組んだ経費の一部を国が助成します。
建設事業主向けのコースには「若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)」と「作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)」があります。このうち、「魅力ある職場づくり」のコースは対象事業が幅広いため、アイデア次第で多様な利用ができそうです。
建設事業主向けコースの助成金の金額
コース名 | 助成金額 |
若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野) | ・中小建設事業主経費助成:対象経費×5分の3(追加要件+20分の3)研修受講(下記⑥):8,550円/人日 ・中小建設事業主以外 経費助成:対象経費×20分の9(追加要件+20分の3)研修受講(下記⑥):8,550円/人日(※)上限200万円 |
作業員宿舎等設置助成コース(建設分野) | 【女性専用の作業員施設整備】 対象経費×5分の3(追加要件+20分の3) 【作業員宿舎・施設整備(岩手・宮城・福島)】 対象経費×3分の2 【作業員宿舎・施設整備(石川)】 宿舎:建設労働者数×25万円 施設:対象経費×3分の2 |
建設事業主向けコースのポイント
人材確保等支援助成金に関心のある建設事業主には、次の点に注意して案内をするようにしましょう。
- 建設事業主の要件
建設事業主については、雇用管理責任者の選任をしていることや、建設の事業区分での雇用保険料率(18.5/1,000)が適用されていることなどの要件があります。後半の「助成金の対象となる建設事業主の要件」でまとめています。 - 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業の範囲
下記の①~⑦の事業が対象になります。実施期間は最大1年間です。
特に②の「技能の向上を図るための活動等に関する事業」は導入しやすい事業主が多いのではないでしょうか。⑤や⑥は雇用管理に関する研修を受ける費用が助成の対象になりますが、対象者となる受講者の範囲、研修のテーマ、その受講時間にそれぞれに細かい条件があります。厚生労働省のパンフレットにまとめられていますので参考にしましょう。
- 手続きについて
まずは事業実施の原則2ヶ月前までに、計画届などの書類一式を管轄の労働局に提出する必要があります。
人材開発支援助成金とは
人材開発支援助成金とは、雇用した人材に対する職業訓練を促進するための助成金です。
建設事業主向けのコースには「建設労働者認定訓練コース」と「建設労働者技能実習コース」があります。
それぞれのコースは、さらに経費助成(対象経費の一部の助成)と賃金助成(対象人数に応じた日額の助成)に分かれており、前の2つの助成金に比べると複雑です。
したがって、コースを1つずつ確認していきます。
建設労働者認定訓練コース
まずは、建設労働者認定訓練コースから見ていきましょう。
コース名 | 助成金額 |
建設労働者認定訓練コース | 【経費助成】対象経費×6分の1【賃金助成】3,800円/人日(追加要件+1,000円/人日) |
- 【経費助成】は、都道府県から認定訓練助成事業費補助金、または広域団体認定訓練助成金の交付を受けて「認定訓練」を行った際の経費の6分の1が助成されます。
- 【賃金助成】は、雇用する建設労働者に「認定訓練」を受講させ、その間、通常以上の賃金を支払った場合、人数に応じた日額が助成されます。
- 【賃金助成】は、人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の支給決定を受ける必要があります。
- 人材開発支援助成金は建設事業に関する専門的な知識や技能を習得させるための助成金ですので、経理事務・営業販売的な要素を持つ訓練は対象外となります。
建設労働者技能実習コース
次に、建設労働者技能実習コースを見ていきましょう。
コース名 | 助成金額 |
建設労働者技能実習コース | ・中小建設事業主(20人以下) 【経費助成】4分の3 (追加要件+20分の3) 【賃金助成】8,550円/人日(追加要件+2,000円/人日) ・中小建設事業主(21人以上) 【経費助成】35歳未満:10分の7 (追加要件+20分の3)35歳以上:20分の9(追加要件+20分の3) 【賃金助成】7,600円/人日(追加要件+1,750円/人日) |
- 【経費助成】とは、雇用する建設労働者の技能実習を実施した際の費用(例:指導員謝金など)の一部が助成されるものです。
- 【賃金助成】とは、技能実習を受講した日数と受講者の人数に応じた日額が助成されるものです。
助成金の対象となる建設事業主の要件
助成金を申請できる建設事業主について、雇用保険の区分、中小事業主の要件、雇用管理責任者の条件で一覧表にまとめました。
助成金・コース名 | 雇用保険の区分 | 中小要件 | 雇用管理責任者 |
トライアル雇用助成金 【若年・女性建設労働者】 | A | あり | 要選任 |
人材確保等支援助成金 【若年者及び女性の魅力ある職場づくり】 | A | なし | 要選任 |
人材確保等支援助成金 【作業員宿舎等(女性専用)】 | A | あり | 要選任 |
人材確保等支援助成金 【作業員宿舎等(岩手・宮城・福島)】 | A・B | あり | 要選任 |
人材確保等支援助成金 【作業員宿舎等(石川)】 | A・B | あり | 要選任 |
人材開発支援助成金【認定訓練・技能実習】 | A・B | あり | 要選任 |
雇用保険の区分
- A:令和6年度における雇用保険料率について「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業」の18.5/1,000が適用されている
- B:令和6年度における雇用保険料率について「一般の事業」の15.5/1,000、または「農林水産業、清酒製造業」の17.5/1,000が適用されている
中小要件
資本金の額が3億円以下、または常時雇用する労働者数が300人以下の建設事業主を対象とする助成金の場合、中小要件「あり」となります。
雇用管理責任者
「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」における雇用管理責任者を、事業所ごとに選任している建設事業主のことです。
紹介した助成金はすべて、雇用管理責任者を選任していることが必要になります。
令和6年の建設事業主の助成金のまとめ
令和6年における建設事業主向けの助成金として、トライアル雇用助成金、人材確保等支援助成、人材開発支援助成金における建設事業主向けの各コースを解説しました。
人手不足に悩む建設事業主の支援に役立てば幸いです。
税理士.ch 編集部
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