過少申告加算税とは?課税対象や免除される条件・計算方法等を解説

過少申告加算税とは、税務申告書の内容に誤りがあり、追加で納税を行う際に発生する加算税の一つです。
本記事では、過少申告加算税について解説します。
目次
過少申告加算税とは

過少申告加算税とは、国税通則法に定められる4つの加算税(過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税)のうちの一つです。
加算税とは、申告や納付を怠った納税者へのペナルティにあたる税金のことで、悪質なケースほど重くなるよう設計されています。過少申告加算税の対象になるのは、基本的には期限内申告を行っているものの、その納税額に不足があることが発覚した場合です。
このことから、期限後申告に対する「無申告加算税」や、隠蔽や仮装が行われた場合の「重加算税」と比較すると、過少申告加算税の税率は低く設定されています。
とはいえ、過少申告に至った状況が悪質である場合には、過少申告加算税の税率が加重される仕組みもあるため、注意が必要です。
過少申告加算税が課税される3つのパターン
過少申告加算税は、申告納税方式による国税の期限内申告について「修正申告書の提出」または「更正」(税務署による処分)が行われた際、追加で納付する税額に対して課されます。(国税通則法第65条第1項)
また、一定要件に該当する期限後申告について、修正申告等を行う場合にも課されます。
以下、過少申告加算税が課されるパターンを3つに分けて解説します。
期限内申告に対する修正申告書を提出した場合
修正申告とは、提出した申告書において課税標準や税額が過少である場合、または還付税額が過大である場合に、その誤りを修正する申告のことです。
このうち、当初の申告が期限内申告書(還付申告書を含む)である場合、その修正申告で納付すべき追加の税額が、過少申告加算税の対象になります。
期限内申告に対して更正の処分を受けた場合
更正とは、申告書に記載された課税標準や税額などに誤りがある場合に、税務署がその課税標準額や税額を確定する処分のことです。
税務調査などで期限内申告書(還付申告書を含む)に申告漏れがあることが発覚したものの、それに基づく修正申告が行われない場合などに行われます。
これにより生じた追加の税額が、過少申告加算税の対象になります。
期限後申告が対象になることも
当初の申告が期限「後」申告である場合、過少申告加算税ではなく無申告加算税の対象になります。
ただし、期限内申告ができなかったことについて正当な理由があるなど、無申告加算税の対象外となる期限後申告であれば、例外的にその修正申告や更正は、過少申告加算税の対象になります。(国税通則法第65条第1項)
過少申告加算税の納付方法と納期限
過少申告加算税は、修正申告書の提出や更正の後に税務署から送付される賦課決定通知書の金額を、同封の納付書を使用するなどして納税します。
納期限は、「通知書が発せられた日」の翌日から起算して「1か月を経過する日まで」となります。(国税通則法第35条第3項)
過少申告加算税の計算方法

過少申告加算税は、「増差本税」に税率を乗じて計算されます。
「増差本税」とは、当初の申告税額と本来納めるべき正しい税額の差額であり、修正申告や更正により追加で納付する税額になります。
たとえば、当初の申告税額が40万円、本来納めるべき税額が100万円であれば、差額の60万円が増差本税となり、過少申告加算税は、この60万円に適用税率を乗じて計算します。
過少申告加算税の税率・計算例
増差本税に適用される過少申告加算税の税率は、「通常分」と、一定要件を満たしたときに上乗せされる「加重分」の合計になります。
「加重分」には、税額による加重と、帳簿に関する加重があります。
通常分:税率10%または5%
過少申告加算税の通常分の税率は、原則10%です。ただし、調査の通知以後、更正の予知なく修正申告が自発的に行われた場合は「5%」になります。なお、調査の通知「前」に自発的に行われた修正申告であれば、過少申告加算税は不適用(免除)となります。
加重分(①税額による加重):税率+5%
増差本税の額が「期限内申告税額」または「50万円」のいずれか多いほうの金額を超える場合、その超過分に適用される税率は、通常分に「5%」を加重した税率になります。
【計算例】
・期限内申告税額(当初の申告税額):40万円(A)
・本来納めるべき税額:100万円(B)
・増差本税:60万円(B-A)
【計算式】
・通常分(10%):6万円
60万円(万円未満切り捨て)×10%=6万円
・加重分(+5%):5,000円
40万円<50万円(①と50万円のいずれか多いほうを判定)
60万円(万円未満切り捨て)-50万円=10万円
10万円(万円未満切り捨て)×5%=5,000円
・過少申告加算税の額:通常分+加重分=6万5,000円
つまり、増差本税が、当初の申告税額か50万円を超える場合、その超過部分には、通常分「10%」と合わせた「15%」(通常分が5%の場合は、10%)の税率が適用されるということです。(国税通則法第65条第2項)
加重分(②帳簿に関する加重):税率+10%または+5%
帳簿について、以下のいずれかのケースに該当する場合は、増差本税に対する税率に「10%」または「5%」が加算されます。(国税通則法第65条第4項)
【10%が加算されるケース】
・税務調査の際に帳簿の提示または提出をしなかった場合
・帳簿に記録された売上が、本来記録すべき金額の2分の1未満の場合
【5%が加算されるケース】
・帳簿に記録された売上が、本来記録すべき金額の3分の2未満の場合
たとえば、帳簿に記載された売上金額が3分の2未満で「5%」の加重分が適用される場合、「増差本税に5%を乗じた税額」が、前述の「通常分+加重分①」に加算されます。
過少申告加算税の加重・軽減措置
過少申告加算税の税率は、他の税制によっても±5%の加重と軽減が行われる場合があります。
財産債務調書・国外財産調書
5%の加重措置
財産債務調書・国外財産調書の提出義務があるにもかかわらず、期限内に提出しなかった場合や、提出した各調書に財産等の記載漏れがある場合、その財産等に関する所得税や相続税(財産債務調書は所得税のみ)の過少申告加算税が5%加重されます。
5%の軽減措置
財産債務調書・国外財産調書を期限内に提出しており、その調書に記載のある財産について所得税・相続税の申告漏れが生じたときは、その財産等に関する所得税や相続税の過少申告加算税または無申告加算税が5%軽減されます。
電子帳簿保存制度(優良な電子帳簿)
電子帳簿保存法に基づく「優良な電子帳簿」の要件を満たして帳簿を保存している場合、後にその帳簿に関連する申告漏れが判明した際の所得税・法人税・消費税の過少申告加算税が5%軽減されます。
なお、この軽減措置の適用を受けるには、事前に税務署への届け出が必要です。
過少申告加算税が免除されるケース
以下のいずれかのケースに該当する場合、過少申告加算税は課されません。
正当な理由がある場合
修正申告や更正によって追加で納付することとなった税額が、申告時に課税対象とされていなかったことについて「正当な理由」があると認められる場合、過少申告加算税は課されません。
「正当な理由」があると認められる具体的なケースについては、法令では定められていませんが、国税庁の事務運営指針において、正当な理由があると認められるケースとして例示されている内容があります。
その内容とは、納税者の責めに帰すべき事由のない、次のようなケースとされています。
- 申告書の提出後に新たに法令解釈が明確化された場合
- 納税相談等を受けた税務職員の指導が誤っていた場合 など
(参考)国税庁HP:平成12年7月3日付け「申告所得税及び復興特別所得税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
減額更正後である場合
期限内申告について、納付税額を減少させる更正や還付金を増加させる更正が行われている場合、修正申告や更正で納付する税額のうち、期限内申告の税額に達するまでの額は、過少申告加算税の対象になりません。
更正の予知なく行われた修正申告の場合
修正申告書の提出が調査通知が行われる「前」に自発的に行われており、更正があることを予知してされたものでない場合、過少申告加算税は課されません。
ただし、調査通知が行われた時点からこの規定は適用されないこととなります。
まとめ
本記事では、過少申告加算税が課されるケース、税額の計算方法、他制度による加重・軽減の措置、免除されるケースなどを解説しました。
誤りがあると判明した時点で自主的に修正申告を行えば、過少申告加算税が課されないこともあります。
同時に発生する延滞税も含めて、顧問先にとって不利益を最小限に抑えることが大切です。

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