追徴課税とは?延滞税、利子税、加算税について解説

追徴課税とは?延滞税、利子税、加算税について解説

追徴課税は、税金の納付が遅れたり、申告納税の際に間違いがあったために、法定期限後に納税する必要が生じた場合に、追加で支払いが求められる税金です。大きく分けると、延滞税、利子税、加算税の3種類があります。

追徴課税の種類とその対処方法についておさらいしましょう。

目次

追徴課税とは?

追徴課税は、過去の税務申告に漏れがあったり、誤りがあった場合に、本来納税すべきだった額とすでに納税した額の差額を追加で納税するものです。

追徴課税では、不足税額を支払うだけでなく、附帯税も課せられます。

附帯税は次の3種類です。

  • 延滞税
  • 利子税
  • 加算税

延滞税は、本来の納期限までに納税しないといった履行遅滞に対して課される税金です。
利子税は、本来の納期限より遅れて納税する場合に一定の手続を踏んだ納税者に課される税金です。

加算税は、過少申告、無申告、不正の申告に対して懲罰的に加算する税金です。さらに細かく、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税の4種類に分類されます。

追徴課税を受けた際は、不足税額と附帯税をまとめて支払う形になります。

延滞税とは?

延滞税は、本来納税すべき期限までに納税されなかった場合に、法定納期限の翌日から納付する日までの日数の利息に相当する金額について納税を求められるというものです。

延滞税が賦課されるのは次の3つの場合です。

  • 法定納期限までに完納しなかった場合。
  • 納期限後に申告や修正申告を行い、納付しなければならない税額が生じた場合。
  • 更正や決定の処分を受けた際に、納付しなければならない税額が生じた場合。

延滞税の計算方法は?

延滞税の計算方法は次のとおりです。

(本来納税すべき税額×延滞税の割合×納付する日までの日数)÷365日

本来納付すべき税額のうち、10,000円未満の端数は切り捨てます。

延滞税の割合は、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までと納期限の翌日から2ヶ月を経過する日の翌日以後とでは割合が異なります。

  • 納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までの分は、年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」の いずれか低い割合。
  • 納期限の翌日から2ヶ月を経過する日の翌日以後の分は、年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合。

このようになります。

そのため、納期限の翌日から2ヶ月を経過を経過している場合は、分けて計算した後で合算する形になります。

なお、令和7年度分については、

  • 延滞税特例基準割合+1%の割合は、2.4%
  • 延滞税特例基準割合+7.3%の割合は、8.7%

それぞれこのようになっているため、こちらが適用されることになります。

納付する日までの日数は、納期限からの日数ですがそれぞれ次のようになります。

  • 期限内に申告した場合は、法定納期限。
  • 期限後の申告又は修正申告の場合は、申告書を提出した日。
  • 更正・決定の場合は、更正通知書を発した日から1か月後の日。

そして、延滞税の額のうち、100円未満の端数は切り捨てます。

参考:
国税庁延滞税の割合 | 国税庁
国税庁延滞税の計算方法 | 国税庁

利子税とは?

税金の延納、物納、納税申告書の提出期限の延長などを申し出た場合に、発生する税金です。

延納が認められるのは、所得税、相続税、贈与税です。納税申告書の提出期限の延長が認められるのは法人税です。

税金の延納を認める代わりに利子の支払いを求められるという形で課税されます。

利子税の計算方法は?

利子税の計算方法は次のとおりです。

(納税額 × 利子税の税率 × 延納の日数) ÷ 365日

利子税の税率は、原則として、年7.3%とされています。

ただ、「国内銀行の平均貸付割合+0.5%」で計算した額である「利子税特例基準割合」の方が低い場合はこちらの金額になります。

令和7年分は、年0.9%となっています。

なお、相続税、贈与税の延納利子税については、延納期間や相続、贈与の対象となる財産の構成により異なります。具体的には次のとおりです。

不動産等の割合が75%以上の場合

延納期間延納利子税割合
動産等に係る延納相続税額10年5.4%
不動産等に係る延納相続税額20年3.6%
森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額20年1.2%

不動産等の割合が50%以上75%未満の場合

延納期間延納利子税割合
動産等に係る延納相続税額10年5.4%
不動産等に係る延納相続税額15年3.6%
森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額20年1.2%

不動産等の割合が50%未満の場合

延納期間延納利子税割合
一般の延納相続税額5年6.0%
立木の割合が30%を超える場合の立木に係る延納相続税額5年4.2%
森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額5年1.2%

そして、相続税、贈与税の延納利子税についても特例割合がありますが、延納特例基準割合により年々変動するため、所轄税務署で確認する必要があります。

参考:相続税の延納 | 国税庁

加算税とは?

加算税は適正に納税されなかった場合に加算される税金です。

加算税には、次の4種類があります。

  • 過少申告加算税
  • 無申告加算税
  • 不納付加算税
  • 重加算税

一つ一つ、確認していきましょう。

過少申告加算税

納税した税額が本来納税すべき税額よりも少なかった場合などに、修正申告する際に加算される税金です。

過少申告加算税が課されるのは次の場合です。

  • 税務署からの調査の事前通知の後に修正申告する場合。
  • 税務署から申告納税額の更正を受けた場合。

税務署からの調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合ならば、過少申告加算税がかかりません。

過少申告加算税の税額は次のように計算します。

新たに納める税金×過少申告加算税の税率

過少申告加算税の税率は、どの時点で申告したかにより異なります。

税務調査の事前通知の後に、更正される前に修正申告した場合は、納税額により次のようになります。

  • 基本的な税率は、5%
  • 納税額が期限内申告税額と50万円のどちらか多い金額の超過部分は、10%

税務調査により更正された場合は、納税額により次のようになります。

  • 基本的な税率は、10%
  • 納税額が期限内申告税額と50万円のどちらか多い金額の超過部分は、15%

そのため、税務調査の事前通知を受けて、過少申告に気づいたときは、早めに修正申告した方が、追徴課税額が少なくて済むということです。

参考:確定申告を間違えたとき | 国税庁 

無申告加算税

無申告加算税は、申告して納税すべきなのに、申告すらしていなかった場合に、期限後申告する際に加算される税金です。

無申告加算税は、過少申告加算税と異なり、税務署からの調査の事前通知を受ける前に自主的に申告をした場合でも加算されます。

無申告加算税の税額は次のように計算します。

新たに納める税金×無申告加算税の税率

無申告加算税の税率は、どの時点で申告したかにより異なります。

税務署からの調査の事前通知を受ける前に自主的に申告をした場合は、5%です。

税務調査の事前通知の後、納税額の決定前に修正申告した場合は、納税額により次のようになります。

50万円以下の部分10%
50万円超300万円以下の部分15%
300万円超の部分25%

税務署から納税額の決定を受けた場合は、納税額により次のようになります。

50万円以下の部分15%
50万円超300万円以下の部分20%
300万円超の部分30%

なお、計算時は、50万円以下の部分、50万円超300万円以下の部分、300万円超の部分を分けて計算し、それぞれの金額を合算する形になります。

参考:確定申告を忘れたとき | 国税庁 

不納付加算税

不納付加算税は、源泉所得税の納付を行わなかった場合に加算される税金です。

法定納期限までに源泉所得税を納付しなかった場合は、必ず不納付加算税がかかります。

無申告加算税の税額は次のように計算します。

法定納期限までに納付しなかった源泉所得税×不納付加算税の税率

不納付加算税の税率は、法定納期限後に納付・納税の告知を受ける前に支払うか、納付・納税の告知を受けた後で支払うかにより異なります。

  • 納付・納税の告知を受ける前に支払う場合は、5%
  • 納付・納税の告知を受けた後で支払う場合は、10%

それぞれ、このようになります。

重加算税

重加算税は、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税が課税される場合において、隠蔽や仮装などがあった場合に課される税金です。

上記の税率よりもさらに上乗せされることになります。

追徴課税の対象期間

追徴課税の対象期間は、税務調査で調査される期間内です。税務調査では、原則として3期分について調査を行うため、この期間分について、追徴課税を受ける可能性があります。

なお、過去に追徴課税を受けている場合は5期分、重加算税を課されている場合は7期分が対象となるため、より長い期間分について追徴課税を受けてしまう恐れがあります。

追徴課税を避けるためには?

追徴課税を避けるためには、日々の帳簿を正確に付けることと法定期限内に申告納税することを忘れないようにすることが大切です。

また、申告漏れなどに気づいたときは、早期に対処することが重要です。

例えば、上記までに紹介したとおり、過少申告加算税は税務署からの調査の事前通知を受ける前に修正申告していれば加算されません。このように早期に対処することで、追徴課税の額を軽減することもできます。

追徴課税を受けてしまったら?

追徴課税を受けた場合、納付が遅れるほど、延滞税がかさんでしまうため、早期に納付することが大切です。なお、追徴課税は一括払いが原則とされていますが、金額が大きい場合などは、分割払いも認められています。

追徴課税を受けて納付しない場合は、滞納処分の対象となり、差押等が行われてしまうことがあります。

まとめ

税理士としては、顧問先のクライアントが追徴課税を受けないように、日々、帳簿をチェックすると共に、申告納税も適正に行われるようにサポートすることが大切です。

そして、追徴課税を受ける可能性があるのは、税務調査を受けた時です。

税務調査の通知が来たという相談を受けたときは、速やかに帳簿や申告内容を再点検して、ミスを発見したら、すぐに対処することが大切です。

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