税理士事務所で利用する会計ソフトはどれが良い？インストール型とクラウド型を比較

税理士事務所にとって会計ソフトは仕事の効率化を図るための大事なツールです。従来の会計ソフトはインストール型が主流でしたが、昨今では常に最新の状態で利用できるクラウド型の利用も増えつつあります。

本記事では会計ソフトの選び方をはじめとして、インストール型とクラウド型、それぞれの特徴やメリットデメリットをまとめています。
会計ソフト選びの参考に、記事内容をご確認ください。

目次

• 税理士事務所で利用する会計ソフトの選び方
  • 導入にかかるコストをチェック
  • 顧客層や事務所の方針に合わせる
  • 使い慣れた会計ソフトを選ぶ
• 会計ソフトの種類
  • インストール型
  • クラウド型
• インストール型会計ソフトのメリット
  • オフラインでも利用できる
  • 月額料金がかからない
  • システム障害に巻き込まれない
• インストール型会計ソフトのデメリット
  • バージョンアップ作業に一手間かかる
  • デバイスの制約を大きく受ける
  • ハードディスク容量を圧迫する
• クラウド型会計ソフトのメリット
  • インターネット環境があればどこでも利用できる
  • 常に最新ソフトが利用できるうえに、法改正にも対応
  • バックアップの手間は不要
  • 自動仕訳が便利
• クラウド会計ソフトのデメリット
  • インターネット環境への依存度が高い
  • ランニングコストがかかる
  • セキュリティ面への不安
• まとめ

税理士事務所で利用する会計ソフトの選び方

税理士事務所で使う会計ソフトは、仕事を円滑に進める上でとても大切なものです。

事業内容に合わせて適切な会計ソフトを選びましょう。
選ぶ時に押さえておきたいポイントを3つ紹介します。

• 導入にかかるコストをチェック
• 顧客層や事務所の方針に合わせる
• 使い慣れた会計ソフトを選ぶ

導入にかかるコストをチェック

特に新規開業において会計ソフトを導入する際は、限られた予算内での選択を強いられる可能性があります。事業が軌道に乗るまではできるだけ安く抑えておきたいところです。

インストール型の会計ソフトは製品の購入が必要となり、最初にまとまった資金が必要ですが、買い切りのためランニングコストは必要ありません。一方で、クラウド型会計ソフトはサービスの利用として月々費用が発生するため、初期費用が安価な代わりにランニングコストは発生し続けます。

事業規模や使用頻度に合わせて、ぴったりの会計ソフトを選びましょう。

顧客層や事務所の方針に合わせる

利用する会計ソフトは、顧客層に合わせて選ぶと良いです。

例えば、20～30代の若手経営者や新規創業者を中心とした顧客を想定する場合、最新ツールの利用に慣れているクラウド型会計ソフトの方がすんなりと馴染む可能性が高いです。

一方で、長年にわたって事業を営む法人を顧客とする場合、既存の会計ソフトや社内システムに沿った利用を検討しなければいけません。この場合、インストール型会計ソフトの方がちょうどよく合致します。

使い慣れた会計ソフトを選ぶ

自分が使い慣れた会計ソフトを選ぶのも良い選択肢です。利用経験があればあるほど、スムーズに業務に導入することができ、クライアントとの共有も簡単です。新たな操作を覚える必要もないため、手間がかかりません。

しかし、自分中心に合わせてしまうと、クライアント側での不便さが増してしまう可能性があります。ちょうど良い妥協点を探して円滑な業務推進を目指しましょう。

会計ソフトの種類

会計ソフトの種類にはインストール型とクラウド型があります。それぞれの特徴について、詳細を説明します。

インストール型

インストール型はパソコンのハードディスクに保存して使用するソフトウェアです。インターネットに接続して作業する必要がないため、通信の不安定さによる作業の中断がありません。

初期費用はかかるもののランニングコストがかからないため、長く使えば使うほど結果としてローコストを実現できます。

パソコンの性能に依存するため、低スペックパソコンでは会計ソフトの動作が遅くなる可能性があります。ハードディスクが壊れると、一部または全部のデータが消失する可能性があるため、定期的なバックアップは必須です。

クラウド型

クラウド型はインターネットに接続してクラウドストレージにデータを保存します。デバイスの性能に依存しないため、低スペックなパソコンでも高速通信ができればそれほど業務に影響はありません。

データはクラウド上に保存されているため、インストール型のようにデータ消失のリスクはありません。デバイスが故障した時でもセキュリティとバックアップ技術によってデータは保護されます。

クラウド型には通帳やクレジットカード情報を自動で取り込む機能も搭載されており、とても便利です。

通信状況による利用制限やランニングコストがかかり続ける点がデメリットとして挙げられます。

インストール型会計ソフトのメリット

インストール型会計ソフトの主なメリットを3つ紹介します。

• オフラインでも利用できる
• 月額料金がかからない
• システム障害に巻き込まれない

オフラインでも利用できる

インストール型の会計ソフトはインターネットに接続することなく利用可能です。

ほとんどの処理がオフラインで実行できるため、ソフトをインストールしている端末さえあればいつでもどこでもスムーズに作業を進められます。少しの時間を使ってどんな場所でも会計処理を進めたいという人にはおすすめです。

月額料金がかからない

インストール型会計ソフトは買い切り型のため、結果としてクラウド型よりも安く利用できるメリットがあります。

一見するとインストール型はクラウド型に比べて費用が高いように見えますが、長く使えば使うほどインストール型の方が安上がりです。例外的に、オプション機能などサービス追加を受ける場合や税率変更などの理由で更新が必要な場合は別途料金が発生します。

システム障害に巻き込まれない

インストール型会計ソフトは端末にソフトをダウンロードして利用するため、インターネットを接続する必要がありません。

インターネットの通信速度やメンテナンスの影響を受けることなく作業を進められます。パソコンの性能にもよりますが、クラウド型よりも動作速度が早いのも特徴の一つです。動作の遅さによる苛立ちは大幅に軽減できるでしょう。

インストール型会計ソフトのデメリット

インストール型会計ソフトのデメリットを3つピックアップしました。

• バージョンアップ作業に一手間かかる
• デバイスの制約を大きく受ける
• ハードディスク容量を圧迫する

バージョンアップ作業に一手間かかる

法改正によってバージョンアップが必要となった場合、インストール型では自動対応できません。データのバックアップと合わせて自社内での管理が求められます。

ソフトによっては自動でバージョンアップできるものもありますが、基本的には自力での作業が必要です。消費税の免税対象業者であれば税率変更に伴うバージョンアップの必要はありませんが、インボイスなど大きな法改正への対応は必要です。

デバイスの制約を大きく受ける

インストール型は一つのライセンスに対して一つのデバイスしかインストールできません。ソフトによっては2つのデバイスにインストールできますが、同時に利用できない場合がほとんどです。

ソフトとデバイスの相性問題もあるため、ソフトを選ぶときは十分な注意が必要です。

ハードディスク容量を圧迫する

会計ソフトをパソコンにインストールすると、当然ながらハードディスクの容量を消費します。最低でも500MB以上、容量の大きなソフトでは2GB以上消費します。

容量に余裕がなければインストールできません。

クラウド型会計ソフトのメリット

クラウド型会計ソフトの主なメリットを3つピックアップしました。

• インターネット環境があればどこでも利用できる
• 常に最新ソフトが利用できるうえに、法改正にも対応
• バックアップの手間は不要
• 自動仕訳が便利

インターネット環境があればどこでも利用できる

インターネット環境があればどこからでも利用できます。どのデバイスでも利用できるため、新たに機器を導入する必要もありません。複数人で利用することもできます。

スマートフォンアプリに対応しているソフトも多く、簡単な作業ならパソコンを開かずに処理できます。

常に最新ソフトが利用できるうえに、法改正にも対応

インストール型のソフトでは、アップデートが行われるたびに新しいソフトを購入する必要がありました。クラウド型は追加購入の必要がありません。アップデートされたクラウド上のサービスにアクセスするだけです。

法改正への対応も同様です。常に最新の状態で利用できます。

バックアップの手間は不要

クラウドサーバー上にデータが保管されるため、会社側でのデータ保存は不要です。記録媒体にデータを保存して管理する手間は不要になります。

社内にデータを保管する場合は相応のセキュリティ対策が必要ですが、クラウド型ならセキュリティリスクを大幅に抑えることも可能です。

自動仕訳が便利

データの連携によって自動で仕訳をしてくれるソフトもあります。インターネットバンキングの口座やクレジットカードと連携すると、作業効率のアップは間違いありません。

確定申告の際には、データ連携による自動仕訳のありがたみを十分に体感できることでしょう。

クラウド会計ソフトのデメリット

クラウド型会計ソフトの主なデメリットを3つ紹介します。

• インターネット環境への依存度が高い
• ランニングコストがかかる
• セキュリティ面への不安

インターネット環境への依存度が高い

クラウド会計ソフトはインターネット環境があればどこでも利用できますが、裏を返せばインターネット環境がなければ使えない、ということになります。

オフラインでも作業を進めたいのに、インターネット環境がない、もしくは通信が安定しない状況下では何もすることができません。インターネット環境への依存度の高さは、クラウド型会計ソフトの大きなデメリットです。

ランニングコストがかかる

買い切りのインストール型会計ソフトに比べて、クラウド型は毎月月額費用がかかります。会計ソフトを長期間使い続けることを考えると、インストール型の方が安上がりです。

従量課金プランの場合、毎月のコストがわかりにくいため、予算を立てにくいというデメリットもあります。

セキュリティ面への不安

インターネット上にデータを入力して保存するという性質上、セキュリティ面での不安が残ります。IDやパスワードが知られてしまうと簡単にアカウントを乗っ取られるのは、クラウド型の大きなデメリットです。

その他、サイバー攻撃による情報漏洩の可能性もあります。クラウド型会計ソフトのセキュリティは高くなりつつありますが、それでもリスクがあることは把握しておく必要があります。

まとめ

会計ソフトは、事務所での主な用途や事業規模、顧客層に合わせて選びます。業務に欠かせない機能が備わっているかしっかりチェックしましょう。

インストール型は買い切り型のためランニングコストがかからず、コストを抑えられますが、税制が改正された場合はソフトを丸ごと更新する必要があります。端末一つにつき、１アカウントまでしか利用できない点も気になるポイントです。クラウド型はインターネット環境があればどこでも利用できる上に、常に最新の状態で利用できるメリットがあります。

ランニングコストがかかる点とセキュリティに不安が残る点はデメリットです。それぞれに一長一短ありますので、会計ソフトを選ぶときは、税理士事務所の事業内容を基準としてぴったり合うものを選ぶと良いでしょう。