【令和6年度】公認会計士試験とは?試験難易度、免除要件など
ビズアップ総研
税理士.ch 編集部
(2024/4/26)
会計士になるためには、公認会計士として日本公認会計士協会の登録を受ける必要があります。そのためには、公認会計士試験の合格者であること、実務補習を修了すること、3年以上の実務(業務補助等)を経験することが条件になります。
公認会計士は、医師・弁護士に並ぶ三大国家資格であり、試験科目が多い上に、一つ一つの科目の難易度もかなり高いものとなっています。
しかし、公認会計士試験には特有の受験システムや合格ラインがあり、これを理解した上で計画的に学習することができれば、働きながらでも合格するチャンスは十分にあります。
今回は、令和6年公認会計士試験の内容をもとに、公認会計士試験の概要・難易度・受験科目、短答式試験と論文式試験の違いや合格率などを解説します。
目次
公認会計士試験の特徴
公認会計士試験の特徴は、短答式試験と論文式試験の両方に合格する必要があることです。短答式試験に合格することで論文式試験にチャレンジできるようになります。
公認会計士試験の日程・スケジュール
短答式試験は年2回(例年12月、5月)実施されます。どちらかに合格することで、その年の論文式試験(例年8月)に挑戦できるようになります。
実施月 | 試験形態 | |
---|---|---|
短答式試験 | 例年12月・5月 | マークシートによる択一式問題 |
論文式試験 | 例年8月 | 記述式問題 |
短答式試験に合格すると2年間の試験免除になる
短答式試験に一度合格すると、その合格は2年間有効になります。
そのため、令和6年の短答式試験に合格すれば、令和6年の論文式試験に合格しなかったとしても、令和7年と令和8年の論文式試験に短答式試験なしで挑むことができます。
このことから、公認会計士試験では短答式試験の免除を受けながら論文式試験の合格を目指すことが王道であり、この比較的短い期間に集中して学習を進められるかどうかが合格のポイントになります。
公認会計士試験の受験科目と合格ライン
続いて、公認会計士試験の受験科目とその合格ラインを解説します。
試験科目 | 配点 | 主な出題内容 |
---|---|---|
財務会計論 | 200点 | 簿記、財務諸表論、その他の会計理論 |
管理会計論 | 100点 | 原価計算と管理会計 |
監査論 | 100点 | 法定監査を中心とした理論、制度及び実務 |
企業法 | 100点 | 会社法、商法、金融商品取引法など |
短答式試験の合格ラインは、総点数の70%を目安に審査会が相当と認めた得点比率になります。また、いわゆる足切りラインとして、満点の40%未満の得点であり、かつ、答案提出者のうち下位33%の得点となった科目があると、不合格になることがあるとされています。
論文式試験の受験科目と合格ライン
論文式試験の受験科目は以下の5科目です。
試験科目 | 配点 | 主な出題内容 |
---|---|---|
会計学 | 300点 | 財務会計論と管理会計論 |
監査論 | 100点 | 法定監査を中心とした理論、制度及び実務 |
企業法 | 100点 | 会社法、商法、金融商品取引法など |
租税法 | 100点 | 法人税法、所得税法、消費税法など |
選択科目(経営学・経済学・民法・統計学から1科目) | 100点 | 【経営学】経営管理と財務管理 【経済学】ミクロ経済学とマクロ経済学 【民法】総則、物件、債権とその関連法 【統計学】記述統計、確率、推測統計、相関・回帰分析 |
このうち会計学は、短答式試験の「財務会計論」と「管理会計論」の範囲が合わさったものになり、配点もかなり大きい科目になっています。論文式試験の合格ラインは、52%を目安に審査会が相当と認めた得点比率になります。ただし、論文式試験にも足切りラインがあり、1 科目につき、その得点比率が 40% に満たないものがあれば、不合格になることがあります。
短答式試験と論文式試験の合格ラインの違い
短答式試験の場合、合格ラインは70%を目安にすると決められていますが、これに対して、論文式試験はその回の受験者の得点比率(偏差値)の52%を目安に決められます。
得点比率の52%とは、受験者の半分より少し上のラインです。
そのため、短答式試験よりも論述式試験のほうが、例年の合格率はかなり高くなります。
このことから、公認会計士試験に合格するには、なるべく早く短答式試験を突破し、論文式試験の勉強時間をより多く確保することが重要になります。
公認会計士試験の難易度
公認会計士試験の難易度を知るために、合格率と平均的な勉強時間を見ていきましょう。
公認会計士試験の合格率
まず、短答式試験からの受験者を合わせた最終的な合格率は例年7%前後で推移しています。
一方で、論文式試験の受験者のみに占める最終合格者の割合は例年35%前後であり、前述のとおり高くなっています。
(参考)過去3年分の合格率
短答式試験(第Ⅰ回) | 短答式試験(第Ⅱ回) | 論文式試験 | 全体の合格率 | |
---|---|---|---|---|
令和5年 | 11% | 9% | 37% | 7.6% |
令和4年 | 12% | 8% | 36% | 7.7% |
令和3年 | ‐ | 22% | 34% | 9.6% |
https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/index.html
公認会計士試験の勉強時間
公認会計士試験の勉強時間の目安は、合計3,000時間です。
会計科目の比重が高いことから、これまでの会計の学習時間、例えば簿記の学習などの進度によって、必要な時間数は増えると考えられます。
社会人の合格率はどのくらい?
公認会計士・監査審査会によると、令和5年公認会計士試験の最終合格者の職業別の比率は、「学生」の区分が約56.2%、次いで「無職」の区分が18.7%という結果でした。一方で、社会人の合格者については、「会社員」が7.6%、「会計事務所所員」が5.2%、「公務員」が1.1%でした。会社員は業種などがわからないため何ともいえませんが、特定の業種としては会計事務所所員の合格率が高いといえます。
公認会計士試験の免除について
公認会計士試験の受験科目については前述のとおりですが、科目の一部または全部が免除される制度があります。この免除制度は、「公認会計士試験の結果による免除」と「資格等による免除」に分かれます。
公認会計士試験の結果による免除とは
公認会計士試験の受験科目については前述のとおりですが、この科目の一部または全部が免除される制度があります。この免除制度は、「公認会計士試験の結果による免除」と「資格等による免除」に分かれます。
・短答式試験の場合
短答式試験は、前述のとおり一度合格すれば、その後2年間は試験なしで論文式試験を受験することができます。
例えば、令和6年の短答式試験に合格すれば、令和6年だけでなく、令和7年と令和8年の試験(最大3回の論文式試験)も受けることができます。
・論文式試験の場合
論文式試験に合格しなかった場合でも、成績優秀な科目があれば、その後2年間の論文式試験においてその科目の免除(一部科目免除)が受けられます。
例えば、令和6年の論文式試験の結果で会計学の科目免除に、令和7年の結果で企業法の科目免除になった場合、次のような受験が可能となります。
令和6年 | 令和7年 | 令和8年 | 令和9年 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
短答式試験 | 合格 | 免除 | 免除 | 合格 | |||||
論文式試験 | 会計学 | 不合格 | 科目免除に該当 | 不合格 | 科目免除 | 不合格 | 科目免除 | 不合格 | |
監査論 | |||||||||
企業法 | 科目免除に該当 | 科目免除 | 科目免除 | ||||||
租税法 | |||||||||
選択科目 |
https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/qanda/index.html#menjo
論文式試験における一部科目免除の基準点は具体的には公表されていませんが、その回の公認会計士試験における合格者の平均得点比率を基準として、審査会が相当と認めた得点比率以上であることが必要になります。
資格等による免除
資格・学位・職歴などによって、短答式試験の全部または一部科目や、論文式試験の一部科目の免除を申請することができます。
資格要件 | ||
---|---|---|
短答式試験 | 論文式試験 | |
商学教授・准教授/商学博士の学位の取得者 | 全部 | 会計学、経営学 |
法律学教授・准教授/法律学博士の学位の取得者 | 全部 | 企業法、民法 |
経済学教授・准教授/経済学博士の学位の取得者 | ‐ | 経済学 |
司法修習生となる資格を得た方/司法試験合格者 | 全部 | 企業法、民法 |
旧司法試験第 2 次試験合格者 | 全部 | その受験科目 |
税理士有資格者 | 財務会計論 | 租税法 |
税理士試験の簿記論及び財務諸表論の合格者 | 財務会計論 | ‐ |
会計専門職大学院修了者(見込者) | 財務会計論、管理会計論、監査論 | ‐ |
上場会社等で会計関連事務に7年以上従事した者 | 財務会計論 | ‐ |
不動産鑑定士試験合格者、旧試験2次試験合格者 | ‐ | 経営学または民法 |
企業会計基準の設定等の事務に従事した、審査会による認定者 | ‐ | 会計学 |
監査基準の設定等の事務に従事した、審査会による認定者 | ‐ | 監査論 |
旧公認会計士試験第 2 次試験合格者のうち論文式試験の免除科目者 | ‐ | その免除科目 |
高等試験本試験合格者 | 全部 | その受験科目 |
https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/2024shiken.html
「資格等による免除」を利用したい場合は、審査会に対して免除申請を行い、「免除通知書」の交付を受ける必要があります。この「免除通知書」を願書に添付することによって科目免除が認められるため、願書の提出期限に間に合うよう「免除通知書」を手配しなければなりません。免除申請については、審査会のWebサイトからオンラインで行う方法と、書面を郵送する方法があります。
免除制度を利用する際の注意点
免除された試験科目がある場合の合格ラインは、受験した科目の合計得点の比率によって合否が判定されます。つまり、一部科目の免除を利用すると、免除科目を除いた他の科目の合計得点によって合否が判定されることになります。
通常、免除される科目は、他人よりも得意な科目であると考えられますので、特に52%の得点比率が合格ラインとなる論述式試験においては、得意科目をあえて受験し、得点比率を引き上げる戦略が有効になる場合もあるといえます。
まとめ
公認会計士試験の概要・難易度・受験科目、短答式試験と論文式試験の違いや合格率などを解説しました。難易度が高く、合格には多くの勉強が必要な公認会計士試験ですが、合格後はやりがいのある仕事や高額な年収、独立開業の可能性など多くのメリットが待っています。これらのメリットをモチベーションに試験に臨むことが、将来のキャリアに大きなプラスとなるでしょう。
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