【2026年最新】経済安全保障推進法改正とは?企業に与える影響は?
経済安全保障推進法の改正が、いま静かに、しかし確実に議論の俎上に載っています。
安全保障という言葉は、かつては防衛や外交の領域に限られていました。しかし半導体や医薬品、通信インフラ、エネルギー供給といった分野が国家の存立と直結する現在、その射程は経済全体に及びます。
2022年に成立した経済安全保障推進法は、その象徴的な立法でしたが、2026年2月の国会審議や各種報道をみると、さらなる制度強化が検討段階に入っています。
「日本を強く豊かに」という趣旨は分かりますが、果たして多くの企業にとってこれは吉なのでしょうか。それとも凶なのでしょうか。
この記事では、そもそも経済安全保障とは何かを整理したうえで、現行制度の枠組みと今回検討されている改正の方向性を確認します。そのうえで、税務・会計の実務者として顧問先や社内の経営層にどのように説明し、どの論点を先回りして整理すべきかを考えてみたいと思います。
目次
経済安全保障とは何か――日本が抱えるリスクと対策

経済安全保障とは、国家の安全と経済活動を切り離さず、重要物資や重要技術、基幹インフラを安定的に確保するための政策体系です。市場任せでは脆弱となる部分を、法制度と財政措置で補完しようとする考え方といえるでしょう。
日本が抱える経済上のリスク
日本はエネルギーや食料の多くを輸入に依存し、半導体やレアメタルの供給も海外に頼っています。感染症拡大や地政学的緊張によって物流が滞った経験は記憶に新しいところです。
さらに、通信機器や電力設備などの基幹インフラに海外製品が組み込まれている現実もあります。万一、特定国との関係悪化やサイバー攻撃が発生した場合、その影響は単一企業の損益を超え、国家全体の機能に波及しかねません。
顧問先や経営者から「調達先を分散すべきか」「国内生産は採算に合うのか」と問われたとき、単純なコスト比較では答えられない局面が増えています。ここに経済安全保障の視点が入り込んできます。
経済の安全を保障する施策とは
経済安全保障推進法は、重要物資の安定供給確保、基幹インフラ役務の安定提供、先端的重要技術の開発支援、特許出願の非公開制度という4本柱で構成されています。国が指定した分野に対し、補助金や税制措置を講じることでリスクを平準化する仕組みです。
これまで行われてきた石油危機後の国家備蓄制度や、近年の半導体産業支援と比較すると、安全保障上の観点から投資や技術の流れを管理しようとする点に特徴があります。
税務・会計の実務者としては、補助金収入の益金算入時期や圧縮記帳の適用可否、研究開発税制との関係など、制度の裏側にある財務論点を押さえておく必要があると思われます。
現行の経済安全保障推進法の内容
現行の経済安全保障推進法(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律:令和4年法律第43号)は2022年5月に成立し、段階的に施行されてきました。2023年以降、重要物資の指定や基幹インフラの事前審査制度が本格運用に入っています。
重要物資・重要インフラの安定供給と安定稼働
半導体、蓄電池、抗菌薬原料などが重要物資に指定され、供給確保計画を策定した事業者には補助金が交付されます。半導体製造拠点の国内整備には数千億円規模の予算措置が講じられました。
また、電力、ガス、水道、通信、金融といった基幹インフラ事業者は、重要設備の導入時に事前審査を受ける必要があります。導入予定機器の供給元や仕様が安全保障上問題ないかを確認するためです。審査完了前に設備の導入を進めてしまった場合、もし不備が見つかれば、減価償却開始時期や資金繰り計画にも影響が及ぶことが考えられます。
先端的な重要技術の開発支援と特許出願の非公開
量子、AI、宇宙、バイオなどの分野では、国が研究資金を支援し、成果の管理を行う枠組みが整備されています。さらに、安全保障上機微な技術については特許出願を非公開とする制度が導入されました。
研究開発費の税額控除や補助金との関係は、実務上見落とせない論点です。とりわけ、補助金で賄われた研究開発費が税額控除の対象となるのか、また非公開特許として管理される技術を無形固定資産としてどのように評価し、償却していくのかといった点は、会計処理と税務処理の両面から整理が必要になります。制度趣旨を踏まえつつ、処理の整合性を確保しておきたいところです。
経済安全保障推進法、改正の中身とは
報道や、衆議院内閣委員会で配布された資料によれば、政府は制度の対象拡大と実効性強化を柱とする改正案を検討しています。
基幹インフラのセキュリティ強化
内閣官房が示した検討資料では、審査対象設備の範囲拡大や、運用段階での報告義務の強化が論点とされています。加えて、サイバーセキュリティ対策については、侵入検知体制の整備、外部委託先管理、ログ保存期間の明確化などを法令上の義務として具体的に規定する方向が示唆されています。
これが実現すれば、企業によっては情報システムへの追加投資を迫られることになるかもしれません。クラウド利用料を費用処理するのか、システム開発費を資産計上するのかといった会計処理の判断も、より慎重さが求められる場面が増えるのではないでしょうか。
サプライチェーンの強靭化
経済産業省の検討会資料では、特定国依存度の高い物資について、調達多元化や国内生産拠点整備を後押しする支援策が示されています。設備投資補助や税制優遇の拡充が検討対象とされています。単年度の損益計算書だけでは見えない中長期リスクをどう織り込むか。税務・会計の実務者として、政策前提の変化を財務モデルにどう反映させるかが問われます。
特定海外事業への支援(新制度)
報道によれば、友好国との戦略的事業に対し、政府が出資や債務保証を行う制度が検討されています。これは、重要鉱物の確保や半導体分野での共同投資を想定したものとされています。
こうした制度を利用する場合で、海外子会社の設立や持分取得を伴う場合、外国で生じた所得を日本でどのように課税するかという国際課税や、海外子会社との取引価格が適正かどうかに応じて課税関係を調整する移転価格税制の論点が浮上します。
実務者にとっては、グループ内取引の価格設定や利益配分をどのように説明できるかが重要になるでしょう。
データ保護・管理の強化
個人情報のみならず、産業データの国外移転に関する管理強化も議論されています。関係省庁の有識者会議では、重要データの管理体制に関するガイドライン整備が示唆されています。海外クラウドの利用やグローバルなデータ共有を行う企業にとっては、内部規程の見直しやシステム改修が必要になる場面も出てくるのではないでしょうか。
官民連携の強化
官民連携の強化として政府が想定している具体例の一つは、重要物資の需給情報を官民で共有する協議体の設置です。企業が保有する在庫や生産能力の情報を一定範囲で共有し、緊急時に迅速な対応を図る仕組みです。
もう一つは、先端技術分野での国家プロジェクト型共同研究への企業参画です。国費を投入しつつ、企業が研究成果を事業化できる枠組みが想定されています。
これらは単なる補助金制度にとどまらず、企業が政策形成やリスク管理の一端を担う構造を持ちます。ビジネス拡大につながると同時に国家的な重い責任が伴うとも言えます。情報提供の範囲や守秘義務の整理は、多くの企業担当者にとって現実的な課題となるでしょう。
税理士・会計士実務への影響

経済安全保障は理念の問題だけではなく、それに関係する企業の財務数値や内部統制の在り方に直結します。
企業財務への影響
国内回帰のために新工場を建設する場合、補助金受領により一時的にキャッシュは潤いますが、減価償却費や固定費の増加が将来損益を圧迫する可能性があります。圧縮記帳を選択すれば帳簿価額は下がりますが、将来の減価償却費も変わります。中長期的戦略にかかわる話になるため慎重な選択を迫られるでしょう。
また、サイバー対策投資は即時費用化されるケースが多く、短期的な利益を押し下げることが想定されます。その一方で、安全保障対応を進めている企業は、金融機関や取引先からリスク管理体制を評価される場面も増えるでしょう。財務諸表の数字だけでなく、その背景にある政策対応をどう説明するかが、実務上の鍵になるのではないでしょうか。
投資とビジネスチャンスをどう見るか
半導体、蓄電池、セキュリティ分野は政策支援が続くと見込まれます。研究開発税制や設備投資減税を活用すれば、実効税率の低減も期待できます。ただし、財政制約や国際情勢の変化により支援内容が修正される可能性もあります。
多くの企業に共通して言える準備は、自社のサプライチェーンと技術・データ管理体制を可視化しておくことではないでしょうか。どの国にどの程度依存しているのか、重要データはどこで管理されているのかを把握していなければ、政策変更に迅速に対応することは難しいでしょう。「あ、それクラウドに保存されてます。」では済まなくなるかもしれません。
まとめ
経済安全保障推進法の改正は、企業にとって負担増にも機会拡大にもなり得ます。どの側面が強く出るかは、業種や立場によって異なるでしょう。
税務・会計の実務者として、制度の方向性を先読みし、数字と制度を結び付けて考える姿勢が求められているのではないでしょうか。顧問先や社内の経営層とともに、自社のリスクと機会を改めて点検してみる。その対話のきっかけとして、この法改正を位置付けてみるのもいいでしょう。
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