家事代行で株式公開達成・年商20億円目前の“会計士CEO”加茂 雄一
さらなる成長を目指す業界特化型プラットフォームビジネスとは Vol.2

株式会社CaSy 代表取締役 加茂 雄一

株式会社CaSy 代表取締役 加茂 雄一

家事代行のIT化で問題解決に挑み、業界を大きく変えた株式会社CaSy。従業員約50人、キャスト約1万5,000 人で今期売上は18億円を見込む。さらに家事代行事業のクロスマッチングサービスMoNiCaののを提供を開始し、業界全体の課題解決に取り組んでいる。会計士としてIPO支援に関わったのちCaSyを設立し、上場も果たした代表取締役の加茂 雄一氏に、起業や上場までの経緯と事業の現状、今後の展望を聞いた。

徹底されたシステム化により、少数精鋭で売上18億円
株式会社CaSyの現在

現在の従業員数および売上を教えてください。

従業員は現在50人ほどです。正社員は35人ほどで、あとはパート・アルバイトの方になります。家事代行スタッフ、弊社では「キャスト」と呼んでいますが、キャストは業務委託で約1万5,000人います。売上は、今年は前期が15.5億円、今期の予想が18億円ほどです。

サービスの価格を抑えながら、
その少人数で、どのように18億円もの売り上げを出しているのでしょうか。

株式会社CaSy 代表取締役 加茂 雄一

あらゆることをシステム化し、少ない人員で内部オペレーションにあたるということに尽きます。そもそも私たちのサービスが、システム化による省人・省コストで他社と差別化していこうというコンセプトなので、企業運営も当然そうあるべきという感覚です。そのためにはシステムを開発するエンジニアの厚みが重要ですので、今も従業員の約1/3がエンジニアです。
他にはマーケティングチームとカスタマーサポートチーム、それから管理部門があります。家事の研修講師も数人所属しており、まず講師が熟練のキャストに教えて、次はそのキャストが新人キャストに教える、という流れで研修を効率化しています。
またキャスト専用のオンラインコミュニティを運営して、そこで質問が投稿できるようにしています。新人の質問にベテランが答えて、知見が積み重なっていくイメージですね。

キャストは現在約1万5,000人とのことですが、
登録にあたっての条件等はどうなっているのでしょうか。

登録自体は成人なら誰でもできますが、実際に案件を受けるには本人確認や反社・犯罪歴のチェック、面接を通過し、研修でのテストをクリアする必要があります。研修のボリュームは人によりますが、他社での家事代行経験者なら1日で完了する程度です。
キャストの年齢層は20代から80代まで幅広いですが、メインは子育ての落ち着いた40~60代ですね。

お客様とキャストのマッチングシステムや、キャストの評価体制について教えてください。

マッチングには、時間やエリアに加え、相性のパラメータも設定しています。高評価の出やすい組み合わせというものがあって、わかりやすい例を挙げると、小さなお子様のいるお客様には子育て経験のあるキャストがいい、とかですね。そういうデータが案件ごとにシステムに蓄積されて、どんどん確度も上がっていくわけです。キャストの評価は、お客様から1回のサービスごとに5点満点でつけていただいています。高評価が積み重なるとキャストの時間給も上がっていく仕組みで、キャストのモチベーションアップに役立っています。
なお、お客様の料金は一律ですが、気に入ったキャストがいれば次も選ぶことができ、その際には指名料が必要になってきます。この辺りの料金周りもすべてシステムで管理しています。

事業に新型コロナウィルス感染症流行の影響はありましたか。

プラスとマイナス両方の影響があって相殺されたという感じです。お客様は他人を家に入れたくないし、働き手も外に出たくない状況ではありましたが、一方でリモートワークの推進で自宅環境整備へのニーズが高まり、新たな顧客を獲得できました。留守中に家に他人を上げるのは不安だけど、リモートワーク中に来てもらうなら抵抗がない、というお客様の声もありました。

家事代行業界の働き手不足解消に挑む
MoNiCaの革新システム「クロスマッチング」

今年の2月に新規事業として、家事代行事業向けプラットフォーム「MoNiCa(モニカ)」をスタートされました。家事代行業界においても課題となっている働き手不足の解消を目指すサービスとのことですが、こちらについてお話いただけますか。
また、CaSy含め、今後の事業展開についてお聞かせください。

MoNiCaでは、私たちの強みであるITの技術を活かし、家事代行事業者間でユーザーとスタッフをマッチングさせる「クロスマッチング」の仕組みを構築しています。例えば、CaSyに依頼のあったお客様の近所にスタッフが見つからなくても、同業の家事代行業者では、近所に手の空いているスタッフがいるかもしれないですよね。逆に、他の家事代行業者への依頼がスタッフ不足で断られたけど、CaSyにぴったりのキャストが控えているかもしれない。つまり、ミスマッチをなくし、家事代行を「利用したい時に利用できる」ようにする、需給の最適化がMoNiCaの目的です。スタート以後、マッチングの実績も、参加企業も順調に増えています。

株式会社CaSy 代表取締役 加茂 雄一

CaSyについては、いずれは世界展開を考えていますが、まずは日本での家事代行サービスを当たり前にしていきたいですね。需要が増えているとはいえ、まだ家事代行サービスの利用人口は2%ほど。マーケットを広げる余地はあると思っています。
また、事業の横展開として、サービスラインナップの拡充を考えています。ベビーシッターやペットシッター、訪問介護サービスなど、現在の強みであるITを活用しつつ、M&Aも視野にいれて検討をしています。

経営者として最も大切にしているのは「人を大事にする」こと
人を救うことが志であり、人生の意味

会計士経営者として、会社経営で最も大切にしていることは何ですか。

人を大事にすることですね。会計業界は数字を重視するあまり、組織や人の心への配慮が相対的に弱いところがあります。しかしそれでは、一般の事業会社の経営はうまくいきません。よりマネジメントに注力し、組織や従業員を大切にする意識を持つことが重要です。会計士としての数字に対する強みに加え、人の心もわかるようになれば、鬼に金棒だと思います。
私の経営哲学は、「波紋のように、中心から広がっていく」というものです。会社が社員を大切にすることで、社員がキャストを、キャストがお客様を大切にするし、お客様の利用が増えれば結果として株主への還元にもつながります。だからこそ、まずは自分がその波紋を作り出し、周りに良い影響を与えられるように心がけています。

士業を離れて、一般の事業会社を経営する魅力についてお聞かせください。

やはり世界が広がり、様々なことを学べることだと思います。人を大事にする意識もそうですし、会計士の頃はよくわかっていなかったCPA(Cost Per Action)やユニットエコノミクスといったマーケティングに関する指標も、実際に利用して身近になりましたね。
一方で、監査法人時代に様々な会社の事例を見てきたことが予習になったといいますか、実務に役立っているので、一度士業を経たのも良かったと思います。会計士事務所にいたからこそ、経営者の方々の志に触れる機会もあったわけですしね。
今はCaSyを伸ばすのが第一ですが、もし監査法人に戻って、一般事業で得た知見を活用できるとすれば、と考えることもあります。実体験のある今なら、当時とは全く違うレベルでIPO支援ができるので、それも面白いだろうなと。もちろん、セカンドライフとしてありうるかもしれない、というレベルの話ですけれどね。

最後に、会計士や税理士で一般事業への展開を考えている先生方、会計士や税理士を目指している方にメッセージをお願いします。

株式会社CaSy 代表取締役 加茂 雄一

「世界が広がる」、という話につながるのですが、私は会計業界から外に出てみて良かったと思っています。自分が今やっていることが、こういう人を幸せにしている、救っていると胸を張れる仕事ができているという自負があります。もちろん、監査法人での人助けも良いと思います。ただ、そこに満足できなくて、違うことがしたいと思ったら、躊躇せずチャレンジしてみてほしい。私にとっては、人を救うことが志で、人生の意味です。それぞれが、志を持って自分なりの居場所を見つけられたらいいなと思います。

貴重なお話、ありがとうございました。

プロフィール
株式会社CaSy 代表取締役 加茂 雄一

早稲田大学商学部卒業後、公認会計士として中央青山監査法人、 太陽ASG有限責任監査法人に勤務。100社以上のベンチャー企業と関わり、株式公開などを手掛ける。妻の妊娠をきっかけに家事代行サービスを利用した経験から、「共働き子育て層がより気軽に使える家事代行サービスが必要」と感じ、家事代行を中心とした暮らしのマッチングプラットフォームを運営する、株式会社CaSyを設立、代表取締役へ就任。2022年2月22日に東京証券取引所グロース市場(当時のマザーズ市場)上場。独自のマッチングアルゴリズムの構築、ダイナミックプライシングの導入、様々なサービスとのAPI連携を行い、家事代行業界のDX化をけん引。

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