今話題の「年収103万円の壁」の見直しについて<President’s Report vol.25>

株式会社ビズアップ総研 代表取締役
吉岡 高広

いつも弊社サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。
今回は、今話題の「年収103万円の壁」の見直しについてお話したいと思います。

そもそも年収103万円の壁とは、住民税に加えて、所得税が課税されるラインです。103万円までは、基礎控除48万円+給与所得控除55万円を差し引くと課税所得額が0円となり、所得税が発生しません。

しかし、現行制度では、103万円を超えると所得税が税制上発生する構造となっています。
また、103万円を超えると、扶養者である配偶者に適用される控除が「配偶者特別控除」に切り替わります。
年収103万円の壁を巡って、引き上げを訴えるのが、2024年10月の衆院選で28議席を獲得した国民民主党です。

国民民主党は衆院選公約に基づき、所得税がかかり始める「課税最低限」を103万円から178万円に引き上げるよう主張しています。国民民主党の政策パンフレットによれば、同党が年収103万円の壁の引き上げを訴えるのは、賃金上昇に伴う名目所得の増加によってより高い所得税率が適用され、賃金上昇率以上に所得税の負担が増える「ブランケット・クリープ」に対応するためとのこと。
言い換えると、同党は、賃金が上昇するなかで国民の給与の手取りを増やすためには、年収103万円の壁の引き上げが必要だと訴えているのです。

しかし、一方では手取り増のメリットは限定的との見方もあります。配偶者の勤務先によっては、年収103万円の壁を引き上げても、社会保険に関わる「年収106万円の壁」や「130万円の壁」によって、扶養から外れ社会保険料が発生することで、手取りが大幅に減るという問題が残されています。
現行制度では、社会保障側の見直しがないと、年収の壁問題の抜本的な解決が難しいというわけです。

年収103万円の壁引き上げの効果を縮減させるといわれる年収の壁は、社会保障関係だけではありません。配偶者特別控除に関係する「150万円の壁」や「201万円の壁」もあります。

このように税制度は複雑です。国民民主党が政策として訴える「年収103万円の壁」の引き上げのみに着目すると、本質的な政策的論点を見落とす可能性があります。

私たち自身が豊かな生活をつかみ取るには、ホットな話題だけでなく、全体を俯瞰しながら政策の動向に注視する必要があるでしょう。

当社では今後も、会計・税務のコンテンツや最新情報を提供して参りますので、
是非、ご活用いただければと思います。

今後も変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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