音商標とは<経営戦略のための知財Vol.25>

特許業務法人 浅村特許事務所
会長・弁理士 金井 建

2022/5/13

M&A、経営戦略、融資判断などで知的財産の占める割合が高まる中、その経済的価値を把握することは企業にとって必須です。そこで、業務に最適な知的財産価値評価サービスを提供している浅村特許事務所の金井建先生が、経営に役立つ知財の活用法について解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.102(2022.4)に掲載されたものです。

知財におけるマーケティング戦略⑩


ブランド戦略 10
企業における商品やサービスの販売戦略は多様化しています。企業は、従来の文字や図形だけではなく、色彩や音等の「新しいタイプの商標」を用いるようになってきました。

そのため、新しいタイプの商標についても商標法の保護対象とし、2015年4月1日から商標登録出願ができるようになりました。新しいタイプの商標は、文字や図形以外の多様なブランドの発信手段として、企業のブランド戦略に大きな役割を果たすことが期待されています。

新しいタイプの商標は、5種類あります。「音商標」「動き商標」「位置商標」「色彩のみからなる商標」「ホログラム商標」です。

これらの商標を登録するためには、原則通り、商標に自他商品・役務の識別力があることが求められます。今回は音商標について、ご紹介します。

【音商標】
音商標とは、音楽、音声、自然音等からなる商標であり、聴覚で認識される商標のことをいいます。いままでで335件が商標登録され、新しいタイプの商標の中でも登録が多くなっています。

テレビコマーシャルやどこかで聞いたことがある音や音楽を耳にすることにより、どの商品やサービスであるか、どの会社であるか等がイメージできることを期待して、多くの企業から出願がされています。

ドラッグストアのマツモトキヨシのコマーシャルで“マツモトキヨシ”の音声が流れますが、この音声がそのまま、音商標として登録されています。下図のように、歌詞と音楽が一体となっている場合は、五線譜に言葉を付けて出願します。


余談ですが、氏名は商標として独占させることは適当ではないため、一般的に登録は認められません。今回の「マツモトキヨシ」の場合は、音商標を聞いた人はこの音から特定の人の氏名を連想することはないと判断され、登録が認められています(知財高裁 令和3年8月30日判決)。

言葉だけでの音商標登録も可能です。リポビタンDのCMで使用する「ファイトイッパーツ!」は声だけですので、下記のように文字で指定して出願します。



なお、商品が通常発する音、単音、自然音を認識させる音、楽曲としてのみ認識される音等の要素からなる「音商標」は、原則として自他商品・役務の識別力を有さず、登録が認められないことには注意が必要です。例えば、商品「炭酸飲料」について、「『シュワシュワ』という泡のはじける音」は、炭酸飲料が通常発する音のため商標登録をすることができません。

登録後送られる認証用メールをクリックすると、登録完了となります。

「税理士.ch」
メルマガ会員募集!!

会計人のための情報メディア「税理士.ch」。
事務所拡大・売上増の秘訣や、
事務所経営に役立つ選りすぐりの最新情報をお届けします。