法定相続登記後に遺産分割協議が成立した場合の登記<所有者不明土地の解消に向けた実務ノウハウ Vol.25>

全国公共嘱託登記司法書士協会協議会
名誉会長・司法書士 山田 猛司

2022/5/4

所有者不明土地をめぐる施策が相次いで法制化されるのに伴い、登記をはじめとする実務の需要が爆発的に増加することが予想されます。そこで、この問題に精通している山田猛司先生が実務的な知識やノウハウについて解説します。 
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.102(2022.4)に掲載されたものです。

法定相続登記後に遺産分割協議が成立した場合の登記


法定相続分による相続登記がされた後に、遺産分割協議が成立した場合には、遺産分割協議の結果、持分が増える者を登記権利者、持分が減る者を登記義務者とする共同申請により所有権移転登記をする必要がある。

その場合に持分が増える登記権利者が自己の権利を保全するために登記を申請する場合には登記義務者の協力が必要であり、登記識別情報や印鑑証明書(3か月以内)を用意してもらう必要がある。

今般の不動産登記法の改正に関連して実務の取り扱いの変更が検討されている。その一つが法定相続分による相続登記をした後に遺産分割協議が整った場合には、登記権利者の単独申請による更正登記を申請することができることとされる予定である。

遺産分割の効果は相続開始の時に遡るので、現在の移転登記による方法を改め、遺産分割を登記原因とする更正登記を認めると共に、更正登記の申請人についても登記権利者の単独申請によることを認めることとしている。

これにより、遺産分割協議書(不利益となる者の印鑑証明書付)を登記原因証明情報として添付すれば登記義務者の登記識別情報や印鑑証明書(3か月以内)を添付せずに登記申請をすることができ、申請人の負担軽減となる。

ただし、相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないので(民899条の2)、更正の登記をする前に差押え債権者等の第三者が現れた場合には更正登記をすることはできないので、従来通りの持分移転登記をせざるを得ないものと解される。

なお、法定相続分による登記後相続放棄があった場合や特定財産承継遺言または相続人に対する遺贈に関する遺言書が発見された場合も、更正登記の対象とされている。

また、上記の遺言書による登記をした場合には、他の共同相続人に登記官が情報提供のため、その旨を通知することも検討されているようである。

ちなみに法定相続分の登記後に、法定相続分は同様の持分による遺産分割協議があった場合においては遺産共有から物権共有に共有の性質は変更するが、法定相続分と遺産分割協議の結果は同一であるのでその登記をすることはできず、その場合には、第三者からその違いは判別できないと思われる。

登録後送られる認証用メールをクリックすると、登録完了となります。

「税理士.ch」
メルマガ会員募集!!

会計人のための情報メディア「税理士.ch」。
事務所拡大・売上増の秘訣や、
事務所経営に役立つ選りすぐりの最新情報をお届けします。