税理士資格を取得して1年目にすべきことは?キャリアプランと今できることを紹介
税理士になるには試験に合格して2年間の実務経験を積むという難関をクリアしなければいけません。税理士資格を取得した後は、より良い仕事ができる税理士を目指して日々の自己研鑽が必要です。
本記事では、税理士資格を取得した後の具体的なキャリアプランや1年目から始めたいスキルアップの内容を紹介しています。税理士のキャリアプランを思い描きたい方は、ぜひ記事内容をご確認ください。
目次
- 税理士の資格を取得した後のキャリアプラン
- 税理士事務所で働く
- 事業会社で働く
- 税務署の職員になる
- 資格取得前にできる関連業務
- 税理士1年目と2年目以降の年収の推移
- 将来を見据えた税理士のスキルアップ
- 差別化のための独自スキルを磨く
税理士の資格を取得した後のキャリアプラン
税理士資格取得の道のりはいくつかありますが、税理士試験の合格と2年以上の実務経験を積むルートがもっとも一般的です。学歴や職歴によっては試験の一部、または全てが免除されるルートもあります。
税理士資格を取得した後に登録しなければ、税理士を名乗ることはできません。税理士資格を取得した後の働き方やキャリアプランは大きく分けると、税理士事務所や会計事務所での勤務、独立開業、事業会社での勤務の3通りです。
税理士資格取得後のキャリアプランについて、詳細を説明します。
税理士事務所で働く
税理士事務所や会計事務所で勤務して、クライアントの依頼に対応する仕事です。一般的な税理士のキャリアプランと言っても良いでしょう。
勤務税理士の他には、独立開業するルートも考えられます。
開業税理士になる
独立開業のルートです。税理士資格は税務申告など独占業務に対応できるため、開業は資格を活かす最良の方法ともいえます。試験の合格と2年間の実務経験の間に、独立開業への足がかりを作りながら合格後のキャリアプランに備えます。
税理士資格取得後の開業を目指すには、会計事務所で実務経験を積むルートがもっとも良い選択肢です。試験勉強では学ぶことができない会計ソフトの使い方や顧問先への対応の方法などを学ぶことができます。
開業税理士は全ての裁量権を自分で持つことになるため自由な働き方が選べる上に大きく稼ぐこともできますが、その分責任の大きさは勤務税理士の比ではありません。
勤務税理士になる
個人の税理士事務所や税理士法人に雇用されて働くルートです。無資格の時に税理士事務所に勤務していて、資格取得後にそのまま勤務税理士として残るパターンも多いです。
経験を積みながら他の税理士事務所に転職して年収アップを狙うキャリアプランもあります。税理士資格取得直後から高い年収を確保できるようになり、安定している点が勤務税理士の大きなメリットです。
一方でパートナーという立場の社員税理士となった場合の無限責任や、責任に応じた業務負担の増加など、デメリットもあります。
事業会社で働く
事業会社とはいわゆる一般的な民間企業のことを言います。社内の税務関連の仕事に携わるため、クラアントと直接折衝する機会は少ないです。
税理士が事業会社で働く場合は、経理や財務を担当する場合と、金融機関やコンサルティング会社でM&A案件や事業承継に携わります。
一般事業会社の経理や財務
事業会社で税理士として働く場合は、開業税理士の扱いになります。税理士資格を持っている時点で高く評価されますが、その他にも会計科目や法人税法、消費税法の知識において経理や財務の部門でも高い評価が期待できます。
税務申告も担当できる社内税理士として重宝されるでしょう。
業務負担の大きさなど懸念される点はありますが、高水準な給与以外にも手厚い福利厚生が用意されているため、十分なライフワークバランスを確保できます。
金融機関やコンサルティング会社
金融機関やコンサルティング会社では主に、M&Aや事業承継の案件に携わることが多いです。
金融機関やコンサルティング会社での勤務は、通常の税理士のキャリアとは少しルートが違う点が特徴です。金融機関やコンサルティング会社での勤務は、税理士に必要な2年間の実務経験には含まれていません。税務申告などの実務経験は積めないため、開業前の税理士が事務所の特徴を出すために一定期間、経験を積むために勤務することが多いようです。
企業コンサルティングや相続、事業承継まで請け負う事務所を開業したい場合には、良い選択肢となります。
税務署の職員になる
税務署に一定期間勤務すると、「国税従事者の免除制度」によって税理士試験の科目が一部免除されます。
税理士試験に合格してそのまま税務署で働くのも選択肢の一つです。大きく稼ぐことは難しいですが、公務員として国税を守る任務に携わることができるため、やりがいを感じることはできるでしょう。
資格取得前にできる関連業務
税理士の独占業務は次の3つです。
- 税務代理
- 税務書類の作成
- 税務相談
税理士の資格は難易度が高いため、税理士事務所へ就職した時点で税理士資格を持っている人は少ないです。
したがって、最初は無資格でもできる仕事からスタートします。
無資格の間に携わる仕事は、主にクライアントから預かった領収書などのデータ入力や書類の整理が挙げられます。その他には、書類のやり取りでクライアントの会社に出向いたり、必要な手続きのために税務署へ行くなどの雑用も多いです。
経験を積むにしたがって、無資格でも任される仕事は多くなってきます。独占業務に関連する雑用は税理士資格を取得した後にも生かされる経験です。
税理士1年目と2年目以降の年収の推移
厚生労働省による令和5年賃金構造基本統計調査にまとめられた、経験年数ごとの税理士の年収を一覧表にまとめてみました。
経験年数 | 男性 | 女性 |
1年未満 | 402.6万円 | 325.8万円 |
1年〜4年目 | 531.1万円 | 429.2万円 |
5年〜9年目 | 670.2万円 | 644.5万円 |
10年〜14年目 | 844.2万円 | 658万円 |
10年以上 | 848.1万円 | 549.1万円 |
1年未満では平均的な年収に落ち着いているものの、資格取得後の1年目以降では男女ともに大きく年収が増加しています。2年目以降も順調にキャリアを積み重ねていけば、経験10年を超える頃には年収1,000万円も見えてきます。
将来を見据えた税理士のスキルアップ
税理士は税務に関する専門家です。自分の強みとなるものをしっかり持って高めていけばクライアントの課題や要望を解決しやすくなります。
将来を見据えた自己研鑽は税理士1年目の時点から始めておきましょう。他の税理士との差別化に欠かせないスキルアップの方法を2つ紹介します。
専門性を高める
クライアントの要望に確実に応えた上で、期待を超える仕事を成し遂げるには専門性をより高める必要があります。
磨きをかけたい専門性とは、次の3点です。
法人と個人税務
幅広いクライアントからの要望にそつなく応えるには、個人と法人の税務に精通していなければいけません。
法人と個人では性質が異なり、それぞれ別の知見が必要です。個人のクライアントには個人事業主や企業オーナー、不動産所有者が多く、確定申告の他に事業承継や相続、贈与などの相談が多いです。
法人クライアントの場合、事務作業のような会計代行や監査、経営に関するコンサルティングなど幅広い業務に携わります。建設業や宗教法人、NPO法人など業界特有の会計基準に詳しくなれるとより専門性の高い税理士を目指すことも可能です。
国際税務
経済のグローバル化が進むにつれて中小企業や個人事業主でも海外取引を行うケースが増えつつあります。国際税務に精通している税理士の需要は高まるばかりです。
海外取引で生じる所得について、どの国の税法で課税されるのかは大きな問題でしょう。
国家間の税金の取り決めはよく変更されるので、常に最新の情報で対処できる税理士はとても頼りになる存在です。
資産税務
少子高齢化の影響もあって、事業承継や相続分野の需要は高まるばかりです。事業承継や相続を専門に扱う税理士事務所も増えつつあります。
税理士としての市場価値を高めるには、切り開いておきたい分野の一つです。事業承継や相続の生前対策として資産運用やM&Aなどの知識やノウハウが求められることがあります。税理士だけでは対応が難しいこともあり、他の士業との連携が必要になるケースもあります。
差別化のための独自スキルを磨く
専門性を深めるためや他の税理士との差別化のために独自のスキルを磨くことも必要です。税理士としてあると強みになるスキルを3つ紹介します。
語学スキル
国際税務の案件に携わるケースはもちろんのこと、外国人の起業家や個人事業主の相談を受け付ける際に語学力があると仕事の幅が広がります。
外国人の個人事業主は特に飲食店に多いです。「外国人の方の相談も受け付けます」と宣伝するだけでもより多くの仕事を獲得できるでしょう。
ITスキル
税務申告はデジタル化が必要とされている分野です。e-Tax・eLTAXなどの電子申告システムによって申告や計算の手間は以前よりも大幅に軽減されるようになりました。
まだまだアナログな部分は多く、生産性の改善は依然必要とされています。ITスキルは日々の業務だけでなく、クライアントへ向けた提案でも効果的です。
デジタル化への対応に苦慮しているクライアントに向けたコンサルティングもできるようになります。
マネジメントスキル
税理士の仕事はチームワークが必要とされることがあります。大きな案件では1人で全てを対応できません。
チームで仕事をする時は、チームメンバーへ的確に指示を出す人が必要です。うまく段取りをつけて指示を出せるスキルがあれば転職後でも欠かせない人材として活躍できます。
まとめ
税理士資格を取得した後は、勤務税理士として働くこともできますし、そのまま開業税理士になることもできます。
それぞれに必要なスキルは異なるものの、求められる基本的な税理士のスキルは変わりません。特にデジタル化待ったなしの日本では、ITスキルは税理士にとって欠かせないものとなるでしょう。
税金の処理が世の中から無くなることはありませんが、処理方法は時代とともに変わっていきます。時代の変遷に対応できる税理士を目指すためにも、日々の勉強の積み重ねを欠かさないようにしましょう。
税理士.ch 編集部
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