上場支援クラウド型サービスで新境地
Uniforceの会計士社長、砂田和也に学ぶ「士業の企業化」成功の方程式 Vol.1
Uniforce株式会社 代表取締役CEO 砂田 和也
決算開示やIPO準備に関するクラウド型サービスとコンサルティングを主力事業とし、新境地を開拓し続けるUniforce株式会社。今回は、士業が提供する決算開示やIPO準備関連のサービスとの違いや、士業での経験や専門性は企業化後にどのように発揮されているのか、経営者としてのこれまでの歩みや心構えなども含め、代表取締役CEOである砂田和也氏に話を伺った。
Uniforce株式会社設立の経緯
独立前のあずさ監査法人時代もIPO支援の部署で働かれていたそうですが、
そこから現在の会社設立までの経緯はどのようなものだったのでしょうか。
あずさを辞めて独立した後、まず公認会計士事務所を立ち上げました。その事務所でCFOのような業務や、外部CFO・会計コンサル・制度会計などといった諸々のコンサルティングを請け負う中で、お客様に「全部できるよね、会計士だからね」という一言をもらうことがあったのです。
それをきっかけに、20社ほどのスタートアップ企業をクライアントとして税理士法人wimgを立ち上げました。
すると、スポット案件の多かった会計士事務所に比べ、税理士法人は顧問料が毎月もらえますし、収益も継続的に上がっていくようになり…もしかしたらこちらのほうが伸びるかもしれない、と思い注力していきました。
税理士法人wimgとは別に、2020年には一般事業会社として
start-up studio(現Uniforce株式会社)を設立されました。
これにはどのような経緯があったのでしょうか。
当時、法人のお客様は約300社、個人のお客様は約500人にまで増え、自分のキャパシティの限界を感じていました。その一方で、国内の全企業約360万社のうちの1%にすら関われていない歯がゆさも感じていている自分がいたのです。会計士として独立したのだから、国民経済の健全な発展に寄与したい、その願いが実現に向かっていないように思えました。ならば方針を変えて、様々な企業に幅広く使ってもらえるクラウドサービスにチャレンジしようと思ったのがUniforce立ち上げのきっかけです。
あとは、自分がIT企業を作りあげて、すべての企業にガバナンスの基盤構築を強力に支援できるサービスを提供したい思いもありました。大きな目標ですが、せっかくチャレンジするならそれくらいやらないと自分の願いを実現することはできないという感覚でした。
Uniforce株式会社が提供するものとは
Uniforce株式会社では、決算開示とIPO準備に関して
クラウド型サービスとコンサルティングサービスを提供していますが、
現状ではどちらが主力事業なのでしょうか。
両者の交わるところを主力にしたいと考えています。決算開示とIPO準備に関するクラウドサービスは多くのお客様にご利用いただいており、主軸ではあるのですが、やはり同時にコンサルティングサービスも提供しているのが私たちの強みです。
クラウド上でソフトウェアを提供するSaaS(Software as a Service)というと、サブスクリプションで安定的に継続して利益を得るビジネスモデルが浮かぶと思います。しかし、私たちはそれだけではなく、BPO(Business Process Outsourcing)とSaaSを融合したBPaaS(Business Process as a Service)を体現しています。
弊社の掲げるミッション「ガバナンスグロース」は、企業のフェーズに合わせて持続的な成長の基盤となるコーポレートガバナンスを構築し、企業価値の向上に貢献しようというもの。会社の規模が小さくてもやらねばならないこと、大きく成長するに応じてやるべきことなどを、一つひとつクラウド化・可視化して着実にこなしていける機能的なサービスを提供しています。
今のところ、クラウド型サービスとコンサルティングサービスのどちらも利益をあげています。クラウドサービスなどのITサービスは、立ち上げ時期は利益が出にくいものですが、弊社ではコンサルティングとのセット販売により、利益率がきちんと確保できるビジネスモデルを構築できていると思います。
初期段階ではクラウドサービスのみを利用するお客様が多いのでしょうか。
クラウドだけ、コンサルだけ、また併用というパターンもあります。コンサルのみの利用から入ったお客様が、フェーズの変化に応じてクラウドも導入したり、クラウドの使い勝手の良さを知って併用するようにされたりと、様々なパターンがあります。
販売チャネルはWebや電話での問い合わせもあれば、イベントなど大きな会場でお話する中で契約につながる場合もあります。
IPO準備のクラウドサービスでは、4つのプランを提供されています。プランごとの内容や料金の違いはどのようなものなのでしょうか。
料金は、弊社の公認会計士やコンサルティングメンバーがどこまでサポートに入るかによって違っています。
一番安い「スタータープラン」は、4半期に1回、1時間ほどの面談があります。一つ上の「スタンダードプラン」では1か月に1回で、短期間でより密度の高いコミュニケーションが取れます。これが月5万円と10万円の差です。
さらに上の「アドバンストプラン」では、コンサルティングのメンバーがプロジェクトマネージャーなどとして実務に従事するところまでがセットになります。これらのコンサルティングと、クラウドサービスの料金を合わせて価格を決定しています。
4つのプランの違いは、顧客企業の成長段階といいますが、
上場実現までに想定される時間に対応している形なのでしょうか。
イメージはその通りです。弊社の会計士やコンサルタントが継続的にご支援させていただく「伴奏支援プラン」をご利用いただくお客様が一番多いですが、月20万円では高いというお客様には10万円のプランを使っていただくこともあります。
また、税理士の方からお客様をご紹介いただく際に、「コンサルは私たちが入るから、コンサルなしのプランを利用したい」との要望に応えて5万円のプランを案内することもあります。コンサルはCS業務的に税理士や会計士に依頼されているお客様もいますので、そういったニーズにも柔軟に対応できるようなプラン分けをしています。
スタータープランから利用を開始した顧客企業が成長し、
より上位のプランに切り替えるパターンもやはり多いのでしょうか。
事業のスピード感は早いスタートアップ企業ですが、ガバナンス構築の時期は企業によってバラバラなので、一概には言えません。
また、ステップアップしている企業はもちろん多数ありますが、スターターで入った企業すべてが数カ月後にはアドバンストに上がる、というのは、現在のスタートアップの経済圏では正直難しいと思います。ただし弊社の売上は昨年比3倍強から4倍弱に成長していますので、手応えは感じています。取引社数も前期ですでに3桁超に増加しています。
年によってIPO件数の増減はありますが、IPO支援については、
業界全体が上げ潮なのか、あるいは御社が特に急激な成長を遂げているのでしょうか。
弊社のサービスはIPO専用ではないので、正直あまりIPO市場に注目していません。年に100社ほどしか上場しないので限度もありますよね。ただ市況として、スタートアップは年間数千社ほど増えている事実はあります。それだけあれば3年でそれなりに成長する会社も多いということでしょう。
プロフィール |
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Uniforce株式会社 代表取締役CEO 砂田 和也
大学商学部在学中の2012年に公認会計士試験に合格し、翌年にあずさ監査法人に入所。この時、IPO支援の専門部署で働いた経験が後の会社設立につながった。公認会計士登録した2016年に起業し、翌2017年には税理士登録して税理士法人wimgを設立。2020年8月に株式会社start-up studio(現・Uniforce株式会社)を設立した。 |