公認会計士と米国公認会計士(USCPA)の違いとは?活躍できる場所やそれぞれの年収も紹介
会計士の資格といえば公認会計士が真っ先に思いつきますが、会計士を志す人の中にはUSCPAという資格を聞いたことがある、または気になっている人もいるのではないでしょうか。
USCPAは米国公認会計士のことで、アメリカのみならず世界の各国で会計士として活躍できる資格です。グローバルな会計士になりたい人にとっては必須資格です。
一方で、公認会計士には日本だけの独占業務に携わることができる強みもあります。本記事では、公認会計士とUSCPAの違いを説明しつつ、キャリア形成に役立つ情報を紹介しています。
会計士の道を志す人は、ぜひ記事内容をご確認ください。
目次
- 公認会計士とUSCPA(米国公認会計士)はどう違う?
- 公認会計士とUSCPA(米国公認会計士)の試験の形式と合格率など
- 公認会計士とUSCPA(米国公認会計士)のそれぞれの進むべきキャリア
- 公認会計士とUSCPA(米国公認会計士)の年収の違い
- まとめ
公認会計士とUSCPA(米国公認会計士)はどう違う?
会計士のキャリアを積み重ねていく上で最初に認識しておきたいのが、公認会計士とUSCPAの違いです。
それぞれの強みやt特徴について、詳細を説明します。
公認会計士
公認会計士は、会計・監査・財務に関連する高度な専門知識をもつ専門家です。企業の財務諸表の監査や税務のアドバイス、経営コンサルティング、財務計画の策定など幅広い業務に携わっています。
公認会計士の道は一つしかありません。公認会計士試験に合格するのみです。令和5年の公認会計士試験の合格率は7.6%となっており、日本の国家資格の中でもダントツの難しさとなっています。
試験に合格した後は、実務補習所で講義と考査を受けて必要な単位を取得しつつ、3年以上の実務経験をへて、日本公認会計士協会の終了考査を受験します。合格すると晴れて公認会計士を名乗ることができます。
USCPA
USCPAは「U. S. Certified Public Accountant」の略称です。日本では「米国公認会計士」とも呼ばれます。アメリカの資格ですが、日本を始めとする世界各国で受験できます。
USCPAも公認会計士と同じく会計士の資格の一つですが、別物と考えておいた方が良いでしょう。USCPAと公認会計士の違いは「日本での独占業務があるか否か」です。
公認会計士は国内の監査報告書に監査責任者としてサインできますが、USCPAはできません。
日本で監査責任者になることはできませんが、監査補助者として監査法人で働くUSCPA有資格者は多く存在します。USCPAの資格はグローバルな活躍を目指している人におすすめの資格です。英語力を証明するための資格としても意味があります。
公認会計士がおすすめできる人
当面の間は日本のみで会計業務に携わるという人は、公認会計士の資格取得を目指しましょう。日本国内ではUSCPAよりも公認会計士の方が評価が高いです。
公認会計士には独占業務があるので国内の監査法人にてパートナーとなった場合、USCPAの資格だけでは監査報告書にサインができません。
その他、国内の経理やコンサルティングなどの職種においても一般的な認知度は公認会計士の方が上です。
公認会計士は税理士登録もできる資格なので、国内で独立を考えている人にとっては公認会計士の方が活躍しやすい側面があります。
USCPA(米国公認会計士)がおすすめできる人
海外で会計士として働きたい人にはUSCPAがおすすめです。公認会計士の資格だけではアメリカの監査法人でサインすることはできません。
アメリカで独立を目指す場合でも、公認会計士の資格だけでは無理です。アメリカでの会計業務では、USCPAの資格は必須と言っても良いでしょう。
その他に、USCPAの資格があればアメリカ以外のMRA参加国でも会計の業務ができるメリットがあります。グローバルな会計士として活躍したい人には欠かせない資格です。
公認会計士とUSCPA(米国公認会計士)の試験の形式と合格率など
公認会計士とUSCPAの試験の形式や合格率などを一覧表にまとめました。
項目 | 公認会計士 | USCPA |
試験形式 | 短答式試験論文式試験 | 4択問題総合問題 |
合格率 | 10%前後 | 約57.7% |
試験の日程 | 毎年1回のみ | 年中毎日受験できる |
勉強時間の目安 | 2,500時間〜3,500時間 | 1,200時間〜1,500時間 |
出題形式と合格率
公認会計士の出題形式は一問一答の短答形式と理論の論述問題の2つのカテゴリに分けられています。
USCPAの出題形式は4択から一つの答えを選ぶ問題と、資料から数値を入力する、語句を穴埋めするなどの総合問題です。
出題形式だけを見ると公認会計士の方が難しいように見えますが、英語圏でない日本人にはUSCPAの方が難しく感じるかもしれません。
合格率を見ると公認会計士の方がかなり低くなっていますが、USCPAには前提資格が必要です。USCPAの合格率の高さは、ある程度のレベルの人が受験している影響も考えられます。
試験のスケジュール
公認会計士の試験は短答式問題が年に2回、論述式問題は年に1回のみです。論述式問題の有効期間は2年間に設定されます。基本的に公認会計士の試験に落ちると翌年新たに受験しなければいけません。
USCPAは土日含め毎日受験可能です。科目ごとに日時を予約して受験します。
科目合格の期限は18ヶ月です。最初に合格した科目の有効期限内に残りの3科目も合格する必要があります。
目安となる勉強時間
合格のために必要とされる勉強時間の目安はどちらも膨大です。公認会計士の勉強時間目安は2,500時間〜3,500時間とされており、1日5時間勉強したとしても500日は必要です。
USCPAも1,200~1,500時間、1日5時間の勉強で240日以上かかります。
生半可な覚悟では合格を勝ち取るのは難しいでしょう。
公認会計士とUSCPA(米国公認会計士)のそれぞれの進むべきキャリア
公認会計士は日本での独占業務の強みを活かして、各事業所や監査法人の中心となって活躍できます。国内の会計業務をこなしつつ、スキルを磨いていくのが王道のキャリアの積み重ねです。
財務や会計のエキスパートとして着実にキャリアを積み重ねていけば、年を追うごとに年収も上がっていくでしょう。USCPAの主な活動場所は海外勤務です。 特に日本企業と取引が多い会社または日系企業で求められるケースが多くあります。
特に日本企業と取引が多い会社や日系企業では、数多いUSCPA有資格者の中でも日本語に精通しているUSCPAという肩書きで差別化ができます。就職面接の際の大きなアピールポイントとなるでしょう。
また、IFRS(国際財務報告基準)に精通しているのもUSCPA有資格者の強みです。日本国内でIFRSに対応できる人材は多くの企業にて求められます。
公認会計士とUSCPA(米国公認会計士)の年収の違い
公認会計士とUSCPAの間に年収の差はどの程度存在するのでしょうか。それぞれのキャリアに応じた年収を調べてみました。
公認会計士
公認会計士の代表的なキャリアとして、監査法人とコンサル会社、事業会社の平均年収を紹介します。
大手監査法人の年収モデルケースを一覧表にしてみました。
役職 | 年収 |
スタッフ | 600万円 |
シニアスタッフ | 800万円 |
マネージャー | 1,000万円 |
シニアマネージャー | 1,200万円 |
パートナー | 1,500万円 |
キャリアを積み重ねてシニアマネージャーやパートナーへ到達すると年収1,000万円超えも十分に可能です。コンサル会社で公認会計士として活躍する場合の平均年収は700万円〜1,000万円と言われています。
企業の規模次第では平均年収700万円〜1,000万円も夢ではありません。公認会計士が事業会社で働く場合、配属される部署は経理・財務部門や経営企画室となるケースが多いです。
事業会社の年収は会社によって大きく異なります。役職がついた場合やベンチャー企業のCFOにまで上りつめた場合は年収1,000万円も視野に入ってきます。
USCPA
USCPAのキャリアの特徴は外資系企業やコンサル会社、事業会社での活躍です。大手監査法人で仕事をする場合、公認会計士の資格がベースとなるため年収に大きな違いはありません。
外資系企業へ転職すると経理部門への配属が濃厚です。初任給は400万円程度ですが、マネージャークラスにまで昇進できれば年収1,000万円超えも見えてきます。
コンサル会社での仕事は海外案件における企業経営の改善や財務戦略の策定などが挙げられます。
企業の規模によって差がありますが、年収はおおよそ500万円〜800万円です。
事業会社での活躍の場は限定的です。外資系企業と同じく経理部門に配属されることが予想されます。年収アップに結びつく可能性は低く、資格手当がつく程度のメリットしかありません。
まとめ
公認会計士は日本での独占業務、USCPAはIFRS(国際財務報告基準)への対応に強みがあります。日本で会計士としてのキャリアを積み重ねたい場合は、公認会計士をベースに考えた方が良いでしょう。
日本では公認会計士の方が評価が高いです。一方で海外向けの会計業務ではUSCPAの資格が強みを発揮します。どちらの資格所有者でも年収に大きな差はありません 活躍したい場所によって資格取得を考えると良いでしょう。
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