バイトテロのリスクを知る(知って得する法律相談所 第23回)

弁護士法人アドバンス 代表弁護士・税理士
五十部 紀英

2022/2/10

0. 軽はずみな行為で大きな責任に!バイトテロのリスクを知る

インターネットやSNSの普及により、日頃の生活がますます便利になってきています。
これらを使わない日はないと言っても過言ではないでしょう。
 
便利なツールではありますが、その一方で、間違った使い方が横行し、社会問題化している事例が多数発生しています。
その1つにあるのが「バイトテロ」です。
 
バイトテロをした従業員は、雇用契約を解除される、学生である場合は停学や退学処分になることもあるようです。
それにとどまらず、企業から損害賠償請求を受けることや刑事責任に問われる可能性もあります。
 
そこで、今回のコラムでは、バイトテロを行った従業員の法的責任と企業が取り組むべきことを中心に、弁護士が解説します。

01.そもそもバイトテロとは

バイトテロとは、従業員が職場や備品を不適切に扱い、この様子を写真や動画で撮影し、ネット上にアップする一連の行為をいいます。
 
具体的には、販売している食べ物を口に入れて戻す、食材を床に擦りつけて調理する、ゴミ箱に入れた食材を調理するなどの行為が散見されます。
 
また、「バイトテロ」と言われていますが、これは動画をネットにアップしている従業員にアルバイト従業員が多かったことから、作られた名称です。
そのため、どのような雇用形態の従業員が行っても、バイトテロと同様の責任が問われることになります。

02.バイトテロが発覚したらどうなる?法的責任について解説

バイトテロは、SNS上に写真や動画をアップすることから、拡散する速度が非常に速いという特徴があります。
 
発覚して、社会問題化するのも時間の問題であり、誰が見ても問題行動であるため、何かしらの責任が問われる可能性があります。
実際に、民事責任や刑事責任に問われた事例も数多く存在しています。
 
ここでは、バイトテロにおける法的責任について解説していきます。

2-1 民事上の責任
バイトテロを行った従業員は、企業から雇用契約を解除される可能性が高いです。
それにとどまらず、企業が被った損害に応じて、賠償を請求されることもあります。
 
アルバイト従業員であっても、企業と雇用契約を締結して就業することがほとんどでしょう。
そして、仕事に従事するにあたり、職務に専念することや誠実に職務を遂行することが就業規則に明記されていると思います。
 
バイトテロは、これらの職務に専念する義務に反したとして、債務不履行にもとづく損害賠償請求をされる場合があります(民法第415条)。
 
また、バイトテロ行為によって、企業側が何らかの損害を被った場合には、その損害を賠償するよう請求される可能性があります(民法第709条)。
 
 
2-2 刑事上の責任
バイトテロを行った場合、下記の罪に問われる可能性もあります。
 
(1)威力業務妨害罪(刑法第234条)
他人や企業の業務を何らかの形で妨害した場合に適用されます。
 
直接的な暴力行為のみでなく、迷惑電話やSNSへの動画投稿も「威力」に該当します。
写真や動画投稿によってブランドイメージの低下や風評被害などを受け、通常の経済活動が滞った際には、業務を妨害したことになりえます。
 
この罪に問われた場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられる可能性があります。
 
(2)器物損壊罪(同法第261条)
他人や企業が所有する物を壊した場合に問われます。
 
バイトテロでは、従業員がお店の皿を全部割る、身体に接触させて交換を余儀なくされたなどの事例が発生しています。
 
この罪に問われた場合、3年以下の懲役または30万円以下の罰金や科料が課せられる可能性があります。
 
(3)名誉棄損罪(同法第230条)
公然と、事実を適示して他人(企業)の名誉を棄損した場合に適用されます。
 
この点、バイトテロの場合、不適切な動画をネット上にアップすることにより、不特定多数の人が知れる状況にあり、公然性があるとされ、事実も適示されていると判断されるでしょう。
この動画により、ブランド力が低下し、風評被害を受けることから企業の名誉が損なわれたと考えられます。
 
この罪に問われた場合、3年以下の懲役もしくは禁固、または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

03.バイトテロが発生した時には早急な対応が重要

企業は、バイトテロが発生した時、その従業員に対して損害賠償請求をすることがほとんどです。
ただし、仮に金銭的な賠償を受けることができたとしても、企業のイメージや信頼回復には時間がかかります。
 
そのため、実際に発生している被害を把握した上で、ホームページに謝罪文を掲載するなど、消費者や他の企業に対して具体的な再発防止策を早急に公表することが大切です。
 
また、バイトテロ行為が真実かどうか本人に確認する際や従業員の解雇、刑事告訴する際には、バイトテロ行為の証拠が必要になるため、早急に収集しておくことが大切です。

04.バイトテロを未然に防ぐためには

企業はどのようにすれば、事前に対処できる可能性が高まるのでしょうか。
バイトテロ対策として、有力と考えられる方法をいくつか解説します。
 
4-1 SNS利用の注意喚起を行う(研修の実施)
雇用している従業員に対して、スマートフォンの使い方など、定期的に研修を行うことが有力です。
 
普段から注意喚起を行えば、未然に防止できる可能性が高まるでしょう。
 
また、バイトテロは一定の年月が過ぎてから再発している傾向にあります。
この原因は、問題が多発して注意喚起を受けた世代から、これからアルバイトを行う世代に入れ替わる時に再発していると考えられています。
 
そのため、定期的に研修を行うことが大切です。
 
4-2 スマートフォン利用基準やバイトテロへの対処方法を明確に
たとえば、職務中に職場にスマートフォンを持ち込まないなどのルールを明確にしておくことも大切です。
 
また、万が一バイトテロが発生した際には一定の法的処理を行う場合があることを明確にしておくことも1つの方法でしょう。
 
4-3 自社に関するネット情報の管理を行う
自社に関するネット上の情報を管理しておくことも有力です。
自社にそのような部署がない場合には、外部に委託するなどして専門性を高めることにより、バイトテロのような投稿を事前に発見し削除できる可能性が高まり、有力な対策だと考えられます。

05.まとめ

バイトテロを行った場合の法的責任について、ご理解いただけたと思います。
 
バイトテロは、安易に行われてしまいますが、それに伴う責任や被害が甚大なものになりかねません。
軽はずみな行為は決して行わないように心がけましょう。
 
バイトテロ対策として、従業員に対して懲戒処分をするにはどのような手続きが必要か、また、バイトテロをして実際に訴えられているなどのお悩みがございましたら、ぜひ弁護士までご相談ください。

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