11月からフリーランス保護新法が施行されます<ネット時代に必要な企業防衛の極意vol.28>
昨今のサイバー攻撃強化で改めて注目度が高まっているセキュリティ対策。2022年4月に施行された改正個人情報保護法でも、個人情報の利用や提供に関する規制が強化されています。一方で、ネット上の情報漏洩や誹謗中傷といった事例も近年、急増しています。当コラムでは、こうしたネット上のリスクや対応策について詳しく解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.132(2024.10)に掲載されたものです。
弁護士法人戸田総合法律事務所 代表
中澤 佑一 先生
2023年4月に国会で成立したフリーランス保護新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が、いよいよ11月1日から施行されます。フリーランス保護新法は、対象となる取引について、発注者である事業者に対して、給付の内容やその他の事項の明示などの義務を課すことで、フリーランスが業務に安定的に従事することができる環境を整備する法律です。フリーランスとの取引がある企業では、施行日に向けて対象となる契約の洗い出しや場合によっては契約書式の修正等も必要になってきます。施行日までに確認をしておきましょう。
まず、保護の対象となるフリーランスについて、一般的には、特定の企業や組織などに所属せず活動する個人を意味しますが、フリーランス保護新法では被用者の有無を基準とした定義が採用されています。すなわち、フリーランス保護新法2条では、この法律の対象となるフリーランスを①個人であって従業員を使用しないもの、②法人であって代表者以外に役員がなく従業員も使用しないもの、の2種類と定義されました。秘書や事務員を雇っている個人事業主などは、この法律の対象外ということになります。
対象となる取引は、事業者がその事業のために発注する、物品の製造(加工を含む)または情報成果物の作成、役務の提供の委託です。
発注者側は、給付の内容、報酬の額、支払期日の他、公正取引委員会規則が定める事項を明示する義務があり、報酬に関しては給付を受領した日から60日以内のできる限り速やかな支払いをする義務があります。加えてフリーランス側に帰責性の無い事由による受領拒絶や報酬減額、やり直し、相場に比べて著しく低い報酬を定めることなどが禁止され、セクハラ、マタハラ、パワハラ等を防止するためにフリーランスからの相談に応じ、適切に対応するための措置を採ることが求められています。さらに、政令で定める所定の期間を超える継続的業務委託の解除や契約不更新は原則として30日前までにその予告をすることが義務付けられました。また、解除や契約不更新の理由の説明を求められた場合には、遅滞なくこれを開示しなければなりません。
ハラスメント対応や不当な減額等の禁止は、フェアな取引をしている事業者であれば法律の有無に関わらず行ってきたところかと思います。実務上、問題になる場面が多そうなのは、給付の内容の明示や支払期日、契約解除の場面ではないでしょうか。口頭での受発注で何となく行っている場合には危険性があります。文書での受発注を行い、支払期日も発注書に明示するようにしていきましょう。契約解除や不更新についても30日内と法定されましたので、取引基本契約書の解除や契約更新に関する定めを確認し、必要に応じて修正をしてください。
中澤 佑一
なかざわ・ゆういち/東京学芸大学環境教育課程文化財科学専攻卒業。 上智大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了。2010 年弁護士登録。2011 年戸田総合法律事務所設立。 埼玉弁護士会所属。著書に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル』(単著、中央経済社)、 『「ブラック企業」と呼ばせない! 労務管理・風評対策Q&A』(編著、中央経済社)など。