新NISAとは?旧NISAとの違いや運用する上で気をつけたいポイントも説明

2014年から続いてきたNISA制度は2024年に制度内容が大幅リニューアルされました。リニューアルをきっかけに大規模なプロモーションが行われたため、投資はしていないものの新NISAの名前くらいは聞いたことがある、という人がかなり増加した印象です。

本記事では、新NISAの概要と旧NISAとの違い、メリットや注意すべきポイントを詳しくまとめています。

目次

新NISAとは

新NISAは2014年からスタートしたNISA制度の「家計の安定的な資産形成」の趣旨をさらに拡大した新しい少額投資非課税制度です。旧NISA制度を引き継ぐ形で2024年1月から新たにスタートしました。

NISAの枠内で買い付けた運用商品に利益が出た場合、約2割程度かかる税金が非課税になります。

新NISAでは投資期間の無期限延長など、より長期投資に最適な制度へ変更されています。住宅購入資金や教育資金、老後資金など多種多様な用途に利用できるようになりました。

新NISAと旧NISAの違い

新NISAと旧NISAの違うポイントを一覧表にまとめました。

新NISA旧NISA
つみたてNISAとの併用可能不可
年間投資上限枠成長投資枠:240万円つみたて投資枠:120万円120万円
生涯非課税投資枠1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)一般NISA:600万円つみたてNISA:800万円
売却時の枠の再利用可能不可
保有期間無制限一般NISA:5年間つみたてNISA:20年間

主な変更ポイントの詳細を説明します。

  • 非課税保有期間が無期限になった
  • NISA制度の口座開設期間が無期限になった
  • 非課税保有限度額の拡大と枠の再利用が可能
  • 年間投資上限額がアップ

非課税保有期間が無期限になった

旧NISAの保有期間は一般NISAで5年間、つみたてNISAで20年間でした。新NISAではつみたて投資枠、成長投資枠いずれも無期限です。

旧NISAの一般NISAでは5年の期間をロールオーバーすることで10年に延長できましたが、新NISAではその手間がなくなります。ロールオーバーをすることなく最初から長期視点での運用が可能になる、というわけです。

NISA制度の口座開設期間が無期限になった

旧NISAではつみたてNISAは2042年まで、一般NISAは2023年までと口座を開設できる期限が設けられていましたが、新NISAでは口座の開設期限が撤廃されました。

期限はなくなりましたので、いつでもNISA口座を開設できるようになります。

非課税保有限度額の拡大と枠の再利用が可能

投資期間に制限がある旧NISAの投資上限額は、それぞれ800万円と600万円の制限がありました。

つみたてNISA
年間投資額40万円×20年=800万円

一般NISA
年間投資額120万円×5年=600万円

つみたてNISAと一般NISAいずれかのを選んで運用した場合の上限額は600万円か800万円でしたが、新NISAの非課税保有限度額は1,800万円までアップしています。

また、旧NISAでは保有している商品を売却した場合、年内の売却枠の再利用はできませんでしたが、新NISAでは翌年移行に売却枠の再利用ができるようになっています。

年間投資上限額がアップ

新NISAの年間投資上限額は成長投資枠が240万円、つみたてNISA枠が120万円にアップしました。新NISAは成長投資枠とつみたて枠の併用ができるため、実質上限は360万円です。

つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能

旧NISAではつみたてNISAと一般NISAの併用ができませんでしたが、新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠の併用ができるようになりました。

毎月のつみたて投資のかたわらピンポイントにNISA枠を使ってIPOに参加する、という有効活用もできます。幅広い資産形成に使えるようになりました。

新NISAの成長投資枠とつみたて投資枠

新NISAによって新たに創設された成長投資枠とつみたて投資枠について、詳細を説明します。

成長投資枠とは

成長投資枠とは、上場株式やETF、REIT、投資信託など幅広い運用商品を買付できる枠です。長期投資に適した運用商品だけでなく、スポット的にキャピタルゲインを狙う時にも活用できます。

成長投資枠の年間投資枠は240万円、生涯の非課税保有限度額は1,200万円です。成長投資枠でもよりリスクの高い銘柄は買付が制限されています。

成長投資枠で買付できない銘柄は次のとおりです。

  • 整理・監理銘柄に指定された上場株式
  • 「信託期間が20年未満」「毎月分配型」「高レバレッジ型」いずれかに当てはまる投資信託
  • 一部のレバレッジ・インバース系のETF

あくまでも資産形成を目的としているため、短期投資が目的のハイリスクな運用商品は対象銘柄から除外されています。

つみたて投資枠とは

つみたて投資枠は一定の投資信託にのみ投資できる枠のことです。以前のつみたてNISAの制度の基本的な内容はそのまま引き継ぎつつ、投資上限額を増額しました。

投資対象となる運用商品は、長期・積立・分散投資に適しているとして金融庁が定める要件を満たす公募株式投資信託と、上場株式投資信託(ETF)に限定されており、自由に選べません。

金融庁の銘柄選定基準は次のとおりです。

  • 主な投資の対象資産が株式
  • 販売手数料ゼロ(ETFの場合は販売手数料1.25%以下)
  • 信託報酬が一定水準以下
  • 信託契約期間が無期限または20年以上
  • 毎月分配型ではない
  • デリバティブ取引による運用を行っていない

年間投資上限額は120万円、月にならすと毎月10万円のつみたて投資ができます。

新NISAのメリット

新NISA制度への移行によって新たに得られるようになったメリットを2つ紹介します。

  • 老後資金を準備する手段が拡充された
  • 非課税枠の再利用ができる

老後資金を準備する手段が拡充された

新NISAのスタートによって、NISA制度を本格的に長期運用に活用できるようになりました。

つみたてNISAの運用期間20年、一般NISAの5年はいずれも新NISAの制度によって無制限になります。旧NISAでもロールオーバーを用いて暫定的な長期運用を実現できましたが、新NISAの制度によって本格的に長期運用ができるようになりました。

また、無制限解禁とともに非課税保有限度額は1,800万円にまで拡充されています。概算ではありますが、35歳から65歳までの30年間に渡って毎月5万円、合計1,800万円を投資した場合、利回り3%を確保できたと想定すると65歳時点の投資資産総額は2,914万円です。

新NISAの運用期間無制限と投資上限額のアップによって、本格的に長期運用への活用の道が見えたと言えるのではないでしょうか。

非課税枠の再利用ができる

新NISAでは売却によって空いた非課税枠を翌年以降再び利用できる制度が追加されました。

旧NISAでは一度使った非課税枠の再利用は認められなかったため、使い勝手の悪さが目立っていました。再利用できない非課税枠のことを考えて売却を渋った人もいるかもしれません。

新NISAによる新制度では、非課税保有枠の限度額である1,800万円の範囲内で取り崩した枠の再利用ができるようになりました。例えば新NISAで200万円投資して150万円を現金化した場合、残りの投資枠は以下のようになります。

1,800万円-200万円+150万円=1,750万円

非課税枠の再利用によって、ライフプランに合わせた資産運用ができるようになります。

新NISAを利用するに当たって気をつけたいポイント

新NISAを利用するにあたって認識しておきたい注意ポイントを2つ紹介します。

  • 損益通算と繰越控除ができない
  • 短期運用には向いていない

損益通算と繰越控除ができない

旧NISAと同様に新NISAでも損益通算と繰越控除はできません。

損益通算は複数の口座で発生した損失と利益を相殺できる仕組みです。課税口座Aの投資信託で20万円の利益を得て課税口座Bの投資信託で30万円のマイナスが出た場合に、損益通算によって損益をマイナス10万円にできます。

このマイナス10万円は繰越控除によって、翌年以降の利益と相殺することも可能です。

節税に便利な損益通算と繰越控除ですが、NISA口座の場合、利益も損失もないと見なされる口座のため、制度上の建て付け上、損益通算も繰越控除もできないということになっています。

短期運用には向いていない

NISA口座での運用はキャピタルゲインを獲得するような短期運用には適していません。タイミングで利益を確保するための運用商品は、NISA口座では運用できない決まりになっています。

運用資金の性質も大切です。NISA口座で資産運用を検討するときは、少なくとも10年以上は手をつけそうもないお金を投入するようにしましょう。投資信託や株の値動きは投資の期間が長ければ長いほど影響が少なくなっていきます。

長期運用によるつみたてと分散投資によって、より資産運用の成果は出やすくなるでしょう。

まとめ

新NISA制度への移行にて変更された注目ポイントは、つみたて枠と成長投資枠の併用です。併用が可能となったため、つみたてで長期分散投資を実践しながら、別枠でピンポイントな株式投資ができるようになっています。

また、非課税枠の再利用によって余すところなく枠が使えるようになっている点も見逃せないポイントです。損益通算や繰越控除などの税制優遇が受けられないデメリットはあるものの、新NISAは長期資産形成には欠かせない制度です。

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