株価急落と今後の株式相場、為替相場(小宮一慶先生 経営コラムVol.81)

コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.131(2024.9)に掲載されたものです。


株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO 小宮 一慶 先生

8月5日に日経平均株価が4,451円という過去最大の下げ幅を記録し、そして、一転、6日には前日比で3,217円というこちらも過去最大の上げ幅を記録しました。きっかけは、2日(金)に発表された米国の雇用統計です。予想より悪い数字で、米国経済は予想より悪いと受け止められ、その日のニューヨークダウは一時900ドルを超える下落となりました。また、ドル・円レートも4か月半ぶりに146円台まで上昇しました。

しかし、私は、この乱高下は一時的な動きだと思っています。というのも今回の下げは、2008年のリーマンショックや2020年からのコロナショックのようなはっきりとした理由がないからです。リーマンショックの際には、「サブプライムローン」による異常な住宅バブルが起こっていましたし、コロナショックは世界的なパンデミックによる経済停滞が原因でした。

今回の株価下落、円高進行では、弱気筋が一気に株式やドルを売りました。機関投資家の中には、ある一定以上株価が下がると自動的に持ち株を売るプログラム売買を行うところがあり、それも下げを加速しました。

私は株式市場を分析する際には、PER(株価収益率)を参考としています。PERは株価を一株当たりの純利益で割ったものです。

今回の乱高下の直前では、日経平均採用銘柄全体で17倍程度でした。コロナ前はだいたい14倍ほどでしたから、コロナ前よりは上昇していましたが、コロナ明けの景気回復を考えれば、それほど過熱した水準ではありませんでした。それが、日経平均が大幅下落した5日の終値で13倍台まで落ち込み、6日には14倍台に戻しました。これでようやくコロナ前の水準です。

ドル・円の相場も大きく動きました。一時160円程度まで売られた円ですが、今回の乱高下の際には、一時141円まで円が買われ、その後はこの原稿を書いている時点(9日)では147円程度まで戻しています。これには、日米金利差による円キャリー取引とその巻き戻しが大きく影響していると言われています。日本では政策金利が0.25%まで引き上げられましたが、現状2%強のインフレはなかなかしつこく、年末までにもう一度利上げがある可能性があります。

一方、米国は景気拡大に懸念のあることから9月の中央銀行の会合(FOMC)で0.25ないしは0.5%の利下げが行われる確率は高いと考えます。株式、為替相場ともに次第に落ち着いていくと考えますが、しばらくは相場が大きく振れる可能性もあることに注意が必要です。

小宮 一慶

こみや・かずよし/京都大学法学部卒業。 米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、 日本福祉サービス(現: セントケア)を経て独立。名古屋大学客員教授。 企業規模、業種を超えた「経営の原理原則」をもとに幅広く経営コンサルティング活動を 展開する一方で、年100回以上講演を行っている。 『稲盛和夫の遺した教訓』(致知出版社)など著書は150冊以上で、経済紙等にも連載を抱える。

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