会社案内のパンフレットの著作権は?<企業経営者へのアプローチに役立つ法律講座 第4回>

鳥飼総合法律事務所 弁護士
佐藤香織

2021/10/20

第4回 会社の“あるある”と著作権法【後編】


1 会社案内のパンフレットをホームページに載せたら?
 
 ある会社で、会社案内のパンフレットを新しく作ろうということになり、外注業者に製作を依頼しました。そして、この新しいパンフレットを、会社のホームページにも掲載しよう、ということになりました。
ところが、この会社は、外注業者から、「パンフレットの著作権は当社(外注業者)に帰属するので、ホームページに掲載するなら追加で料金を請求します」と言われてしまいました。
 
 さて、皆さんは、これをどう思いますか?
外注業者の言っていることはおかしいですか?それとも、当然ですか?
 
2 会社案内のパンフレットの著作権は?
 
 前回のコラムで、著作権法において、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であると説明しました。
会社案内のパンフレットを作った場合、それは、「著作物」に該当すると考えられます。
そして、著作物を創作する者が著作者となりますので、会社案内のパンフレットを創作する者である外注業者が、著作者となります。
 著作者の権利として、「著作権」があります。「著作権」には、前回のコラムで説明した複製権などのほかにも、「公衆送信権」という権利があり、著作者はこれを専有しています。公衆送信権とは、著作物を公衆向けに送信することに関する権利です(著作権法23条)。
 以上をまとめると、次のとおりです。
製作した会社案内のパンフレットは、著作物に該当します。その著作物の著作権は、発注をした会社ではなく、受注した外注業者に帰属します。そして、外注業者の著作物である会社案内のパンフレットを、会社が自社のホームページに転載することは、外注業者の著作権に触れるリスクのある行為であるということになります。
 
「パンフレットの製作代金は会社が外注業者に払ったのだから、著作権も会社のものだ」と安易に考えては危険です。

3 適法にホームぺージに掲載したいならどうする?

まずは、会社案内のパンフレットを会社のホームページに転載することについて、外注業者の許諾を得る方法があります。
ただ、このような事後的な対応ではなく、事前にリスク回避をしておけたらよいと思いませんか。
そこで、重要なのが、契約書です。
会社案内のパンフレットについて取引を始めるときに、外注業者と会社との間で契約書を作り、著作権を譲渡してもらうことを決めておくのです。
例えば、契約書に次のような文言を入れる方法があります。

「外注業者は、著作物〇〇について、著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)を会社に譲渡する」

 少し細かい話になりますが、上記で「(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)」とわざわざ書いてあるのは、著作権の譲渡契約では、譲渡の目的に著作権法第27条と28条に規定する権利(翻訳権、など)が含まれることを明記しておかない場合、これらの権利は譲渡者に留保された(すなわち、譲渡の対象ではなかった)ものと推定されてしまうからです(著作権法61条2項)。

 著作権に関係する取引について外注業者と会社が契約するときは、上記以外にも重要なポイントがたくさんあります。そして、非常に専門性が高いです。
 会社のリスク回避や適法な会社運営のためには、取引を始める前に、一度、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

登録後送られる認証用メールをクリックすると、登録完了となります。

「税理士.ch」
メルマガ会員募集!!

会計人のための情報メディア「税理士.ch」。
事務所拡大・売上増の秘訣や、
事務所経営に役立つ選りすぐりの最新情報をお届けします。