著作権法はどういう法律?<企業経営者へのアプローチに役立つ法律講座 第3回>
鳥飼総合法律事務所 弁護士
佐藤香織
2021/10/20
第3回 会社の“あるある”と著作権法【前編】
1 新聞や雑誌のコピーを社内で回覧したら?
第3回は、会社の中の“あるある”が実は「著作権法」違反?ということで、「著作権法」がテーマです。
次のような例を考えてみましょう。
皆さんは、会社の中で、新聞の記事や雑誌の記事のコピーが回覧されたり、閲覧されたり、という体験をされたことはありませんか。
会社の業務に関係するニュースを社員に知ってもらいたい、勉強になる、など様々なシチュエーションがありそうです。
でも、ちょっと待ってください。これは、「著作権法」という法律が問題となる行為なのです。
2 著作権法はどういう法律?
著作権法とは、著作物などに関して著作者の権利やその隣接する権利を定めた法律です。
この「著作物」や「著作者」については、著作権法2条1項で、次のように定義されています。
●「著作物」=思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの
●「著作者」=著作物を創作する者
つまり、あるものがこの「著作物」に当たれば、その著作物を創作する著作者は、権利を持つということになります。
著作者は、「著作者人格権」と「著作権」を持ちます。
「著作者人格権」には、例えば、自分の著作物を公表するかしないかなどを決める権利(公表権)や、自分の著作物を勝手に改変されない権利(同一性保持権)などがあります。
「著作権」には、例えば、複製権(著作物を印刷、録画などの方法で再製する権利、など)、翻訳権(著作物を翻訳、編曲などする権利、など)などがあります。
著作者以外の者が、勝手にこれらの著作者の権利を侵害してしまうと、著作権法違反になるのです。
ではまず、先ほどの例に出た新聞や雑誌の記事は、「著作物」にあたるでしょうか。
単なる事実の伝達のような記事を除いて、記事は記者やライターなどが自分で創作したものと考えるのが普通です。したがって、そのような記事は、「著作物」にあたります。
そして、その著作物をコピーする行為は、「複製」です。
複製権は、著作権法21条(下記)で、著作者が「専有」、つまり、著作者のみが持つ権利とされています。
(複製権)
第21条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
そして、著作物を複製するには、著作者の許諾が必要です(著作権法63条)。
そうすると、新聞や雑誌をコピーして会社内で回覧したり閲覧したりするのは、複製にあたりますので、著作者から複製の許諾をもらわなければ、著作者の複製権を侵害するという著作権法違反となってしまうのです。
これが原則です。
ただし、次のとおり、著作権法では、複製を認めている場合があります。
3 著作権法が複製を認める場合
まず、私的使用のための複製(著作権法30条)があります。
これは、自分自身や家族などの限られた範囲内でだけ利用するのであれば、著作物の複製ができます。
それから、学校その他の教育機関における複製(著作権法35条)があります。
これは、学校などの教育機関の先生や生徒は、授業の過程で利用するという目的であれば、著作物を複製することができます。
これら以外にも、複製が認められる場合が定められています。
しかし、新聞や雑誌の記事をコピーして会社内で回覧することは、これらの複製が認められる場合には該当しないのです。
さて、次回は、会社の“あるある”と著作権法【後半】です。