菅首相退陣に考えるリーダーシップのあり方(小宮一慶先生 経営コラム Vol.22)

株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO 
小宮 一慶

2021/10/18

本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol96.(2021.10)に掲載されたものです。

菅首相退陣に考えるリーダーシップのあり方


菅義偉首相が退陣ということになりました。私は、この顛末を見ていて、リーダーシップのあり方について、原理原則から見て、感じることが多くありました。

お辞めになる方に対して厳しいことを言うのは少し気が引けますが、リーダーシップを考えるという点では勉強になることも少なくありません。

ひとつは「策を弄しすぎた」ということです。岸田氏の政策に後出しじゃんけんで自民党の役員交代をしようとしたことも、その余勢をかって、衆院解散を先に行うことも考えたと言われています。さすがに党内からの反発は強く、策が尽きて結局退陣に追い込まれたという流れです。自分の地位を守るために「策を弄する」というのは、リーダーのやるべきことではありません。そこには義はありません。

松下幸之助さんは『道をひらく』の中で、「善意の策も悪意の策も、策は所詮策にすぎない。悪意の策は、もちろんいけないけれども、しかしたとえ善意に基づく策であっても、それが策を弄し、策に堕するかぎりは、悪意の策と同じくまた決して好ましい姿とは言えないであろう。つまり、何ごとにおいても策なしというのがいいのである。無策の策といってしまえば平凡だけれども、策なしということの真意を正しく体得して、はからいを超え、思いを超えて、それを自然の姿でふるまいにあらわすには、それだけのいわば悟りと修練がいるのではなかろうか」と記しておられます。

次は政策の優先順位の問題です。菅首相は、携帯料金の値下げや二酸化炭素削減などで、かなりのリーダーシップを発揮したと思います。国民生活や地球温暖化を考えれば勇断だったと思っているのは私だけではないと思います。

しかし、国民の最大の関心事の新型コロナウイルスが蔓延する中、その対策は後手々々に回ったことは否めません。優先順位は何かということを十分に把握し、もっと早く、かつより積極的に対応を行わなければならなかったのです。これは企業経営でも同じです。すべてのことができるわけではありませんから優先順位と資源の重点配分が大切なのです。また、菅首相の発言からは、熱意が感じられないという意見を多く聞きました。スタッフが用意した原稿を棒読みしていることが多かったからです。

コミュニケーションは「意味と意識」の両方が必要です。「〇〇をしてください」というのは意味ですが、同じことでも好きな人に言われたらやりたいけれども、嫌な人に言われたらやりたくないと思います。これは意味の問題ではなく、意識の問題だからです。話し方や伝え方にもっと熱意があっても良かったのではないでしょうか。

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