“リーダーシップ型”の岩永悠と“ボトムアップ型”の出川裕基
会計業界の最強バディが進める多拠点化の先にあるものは Vol.2

アイユーコンサルティンググループ 代表取締役社長・税理士 岩永 悠
アイユーコンサルティンググループ 代表取締役副社長・税理士 出川 裕基

相続・事業承継に特化した税理士法人アイユーコンサルティングを母体に、全国11か所に拠点を構えるアイユーコンサルティンググループ。この組織をまとめているのが、岩永悠先生と出川裕基先生だ。共同代表制をとっている事務所はそれほど多くない中、互いの得意分野が全く異なっているからこそ、共同代表制にはメリットしか感じないと語る二人。今年7月には山口事務所を開設し、年内には広島事務所の拡張も控えているという。さらに2025年以降は東京(都内2拠点目)、千葉、名古屋、鹿児島、熊本、長崎での拠点開設を計画。ますます多拠点化を進める先にはどのような展望が広がっているのか。岩永先生と出川先生に話を聞いた。

急拡大、急成長を支える創業以来の幹部たち
税理士業務にとらわれない事業展開

創業11年で売上15億と伺いましたが、ここまで事務所が急成長を遂げた一番の要因はどの点にあると思われますか。

岩永:色々ありますが、一番の要因は人に恵まれたことだと思います。私も出川も山田&パートナーズの出身ですが、現在の幹部層はすべて前職や前々職の部下や後輩です。ボードメンバーで辞めた者は2人しかおらず、優秀な幹部たちが一枚岩で残ってともに成長してくれているのが一番の強みです。

出川:ターニングポイントとなったのは、創業4~5年目に、地銀大手との提携がスタートしたことです。少なくとも売上1.5億円が確定しているということは大きかったですね。この提携でルートとやり方が確立できたので、教育もしやすくなり、質を担保しつつ安定したサービスの提供ができるようになりました。急拡大する事務所は絶対といっていいほど質が落ちるものですが、当社では人が辞めずに残ってくれたので、毎年毎年社員の能力がアップしていくことで、急成長しながらも質を落とさずに業務を進めることができました。

岩永:あとは、ライバルが少ない九州(福岡)での創業というのも急激に成長できた要因の一つだと思います。創業当初、九州地区で相続・事業承継のライバルになり得たのは大手税理士法人ぐらいでした。大規模な事務所と戦えた経験は、その後の関東進出にも活きていると感じています。
東京をはじめ他のエリアでもそうですが、私たち二人が税理士の中では、かなり営業に強かったのも大きな要因だと思います。餅は餅屋と提携先の企業に伝えているとおり、不動産や保険には手を出さず、純粋に税務業務のみに専念してきたことも、提携先とうまくやってきたポイントですね。

ここまでの成長は税務がメインでしたが、さらなる成長を見越して、新たに税務に限らず事業展開を考えていることがあれば教えてください。

出川:創業20年目となる2033年までに「売上35億円、300名体制」を目指していますが、現在の既存事業の面展開だけでは達成することはできないと考えています。今後10年、20年と成長を遂げていくためには、新しい事業やサービスを創る必要があります。相続・事業承継が安定した基盤となっているうちに、どんどん新しい領域にチャレンジしていきたいですね。

岩永:その一例でいうと、将来的に九州で地場のファンドを立ち上げたいと考えています。事業承継で後継者が不在の企業や、将来的な組織運営に不安を抱える企業に対し、一度当社で企業を買うことでイニシアチブを譲ってもらい、組織を整えて価値を向上させたうえで上場を目指すファンドです。

また、中小企業支援を軸に裾野を広げたサービスでいうと、広報代行サービスも挙げられます。広報専任者がいない中小企業を主なターゲットに展開しており、すでにサービス提供していますが、タイミングをみて強化していきたいと考えています。

出川:他にも、IPOの支援のための監査法人を設立していますし、中小企業に対しては財務支援を行っているため、そこをフックにSEM(検索エンジンマーケティング)や人材サービスの会社も作れるかもしれません。また、MVVC(ミッション・ビジョン・バリュー・カルチャー)を作ったり、幹部合宿やマネジメント研修といったサービスの外部への販売も考えられますね。いずれにしろ、税務にとらわれずに、むしろそこから飛び出して、中小企業をサポートするという観点から、事業を拡大していきたいと考えています。

富裕層の海外進出をサポート
顧問部隊の強化も

お話を聞いていると、士業の枠を超えた多角経営を意欲的に進めていこうとされていることがわかります。

岩永:国内だけでなく、海外事業も始動予定です。資産税がらみですが、富裕層・準富裕層の海外進出のサポートを手がけたいと考えています。最近、日本の経済の縮小を見越して、自分の子供を海外に行かせたいという富裕層が多いのです。早ければ中学から、大学では確実に海外に行くという世界で、経営者自ら海外移住をしたいというお話をよく聞きます。
我々は、そういう希望をヒアリングしたうえで、海外移住をコーディネートしたいと考えています。現地視察を経て、来年のサービス化に向けて準備を進めているところです。

新卒枠で入社した英語に堪能なスタッフがいるので、彼にアセアン内の国で海外勤務してもらおうと考えています。海外進出のサポートということは、現地でのお手伝いという形で、顧問契約を結ぶこともできますし、富裕層が国内で不動産を持ったまま外国へ行く場合、いろいろな税務処理が発生しますから、アップセルも見込めると考えています。

出川:海外進出を検討している富裕層がターゲットですが、現在の顧客にそういった層はいないため、スタートアップ支援に力を入れていくことを考えています。M&AやIPOによって財を成した方々を海外へ送り出すルート構築のニーズもあると思いますので、顧問の裾野も広げていかなければと考えているところです。

岩永:現在の顧問先はグループ全体で700社ほど。顧問先の売上のボリュームも、ほとんどの会計事務所は1億円未満が多いですが、弊社は数億円から数十億円くらいがボリュームゾーンとなっています。赤字経営の会社もほとんどありません。今まで東京では基本的に顧問を取らずにやってきたのですが、この海外進出のサポートのこともあり、舵を切り替えて、顧問業務として、法人設立のスタートアップ支援をしたいと考えています。

顧問業務の今後の展開について、詳しく教えてください。

出川:顧問先に対しては、オンラインで解決できる案件もかなり増えているので、優秀なパートスタッフたちでオンラインでの顧問業務が完結する仕組みを現在作っているところです。ただ、税理士が対応しないとなると顧問料が安くなってしまうため、今後は税務業務以外の付加価値の高いサービスも新たに提供していきたいと考えています。具体的には、売上1億円までは節税の必要がないと考えているため、1億円を稼ぐために、弊社が営業の研修を行ったり、顧問先同士のマッチングをしたり、もしくは上場企業の社長に向けてピッチをするといったサービスを顧問料の中でできるように、現在構想を練っているところです。

岩永:結局のところ、我々は税理士ではあるのですが、日本を豊かにするために中小企業をどう発展させていくかというところに主軸があれば、正直どんなサービスでも手掛けたいと考えていて、良いと思ったものはこれからもどんどん展開していきたいと考えています。

プロフィール
アイユーコンサルティンググループ 代表取締役社長・税理士 岩永 悠

西南学院大学経済学部卒業。京都大学経営管理大学院 上級経営会計専門家(EMBA)プログラム修了。2007年に九州の中堅税理士法人に入社。26歳で税理士登録後、国内大手税理士法人の福岡事務所設立に参画。13年岩永悠税理士事務所として独立、15年税理士法人アイユーコンサルティングに改組し法人化。19年よりグループ化に着手し、現在7法人1事務所体制でグループを運営している。 創業者としてグループ経営に携わる一方で、自身も組織再編を活用した高度な事業承継、相続対策を提案・実行。提案型コンサルタントとして大型案件を中心に実務を行いながら、セミナー活動や団体活動を中心に業界発展のために力を注いでいる。

アイユーコンサルティンググループ 代表取締役副社長・税理士 出川 裕基

法政大学経済学部卒業。2009年に国内大手税理士法人の東京本社に入社。同所では最年少マネージャー職を担い、相続税申告、事業承継、組織再編及び地主の相続対策など数百件以上の資産税案件を手掛けてきた。M&Aや上場会社顧問、医療・公益案件にも携わり、専門領域は多分野に及ぶ。 17年よりアイユーコンサルティンググループに参画し、共同代表となる。グループビジョンのもと、会計事務所の枠に捉われない新規事業創造・グループ展開を進めている。現在は大型の事業承継・相続案件を中心に実務を行いながら、金融機関や全国の専門家に向けての講演・執筆活動を通じて、業界活性化のために尽力している。

  

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