納付書の事前送付の取りやめ<税理士事務所 四方山話vol.01>

本コラムでは、日常の業務を通じて遭遇するお客様の反応や現場での出来事など身近なトピックに焦点を当てます。セミナーや研修で講師を務める経験豊富な江﨑光行先生がこれらの話題をわかりやすくそして実用的なアドバイスを交えて解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.129(2024.7)に掲載されたものです。


江﨑光行税理士事務所 所長・税理士
江﨑 光行 先生

当コラムを担当致します江﨑税理士事務所の江﨑光行と申します。宜しくお願いします。このコラムでは、疑問に感じたこと、お客様の反応や現場での出来事を共有することを念頭に筆を進めていこうと思います。初回のテーマは「納付書の事前送付の取りやめ」です。

「えっ? 納付書、税務署から届いてないけど。」 

先日、予定納税の納付の確認の電話をした際、お客様からこんなお返事がありました。税務署が令和6年5月以降送付分から、一定の方に対し、納付書の事前の送付を取りやめたためです。

国税庁によれば、「キャッシュレス納付の利用拡大に取り組んでいるところ、社会全体の効率化と行政コスト抑制の観点を踏まえて、納付書の事前の送付を取りやめる」とのこと。納付書を送付しない対象者はe-Taxにより申告書を提出している法人、e-Taxで「予定納税額の通知書」の通知を希望された個人で、源泉所得税の徴収高計算書や、消費税の中間申告書兼納付書は当分の間、送付されます。

当事務所では、昨年5月に国税庁サイトに掲載された時点で事前に認識し、お客様へ周知を進めてきましたが、上述したお客様は、お忘れになっていたようです。

法人のお客様への案内として、考えられるのは2つです。(個人の場合は振替納税を案内します。)

1つは納付書を使用しない手続きの採用です。ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)、インターネットバンキング等による納付、クレジットカード納付、スマホアプリ納付、コンビニ納付(QRコード)が挙げられます。

2つ目は、納付書を税務署から取り寄せて記載してお客様へ送付すること。国税庁の言う「社会全体の効率化と行政コスト抑制」を、江﨑事務所が一身に背負う方法です。この方法は手間ですからできれば避けたいところです。

当事務所では、基本的には1つ目の納付書を使用しない手続きをご案内することを軸に据えることにしました。しかし、予想以上にハードルがありました。

ダイレクト納付は電子申告をした後に、お客様の口座から引き落としにより納付ができますが、事前に申請が必要で利用可能になるまでに、数日かかります。

インターネットバンキングを利用する方法では、電子申告時に納付番号、確認番号、納付区分が発行され、その情報をインターネットバンキングにログインして入力することで納付が完了します。しかし、パソコンに慣れていない方には困難です。さらに、インターネットバンキングは法人口座の場合、月額使用料がかかってしまうケースがあり、導入に消極的なお客様もいらっしゃいました。

何よりも一番のハードルは、納税のために、事前申請やネットバンキング導入などの新しい仕組みを導入することに対して、お客様の動機付けが難しいということです。新しい仕組みを導入するにあたって様々な説明書を読み込むのはしんどい作業です。年配のお客様もいらっしゃいますので、そのご苦労は推して知るべしです。

結果として現状では、体制が整っている事業会社、パソコンや情報に精通している経営者の方は切り替えができました。一方で、高齢のお客様や小規模な会社様は、納付書での対応となっています。

電子申告を行うと同時に、引き落とし希望口座の登録も完了する。そのような仕組みができればもっとスムーズになるのではないかと感じます。

仮に、 源泉所得税徴収高計算書や、消費税中間申告書兼納付書についても送付されなくなれば、ほとんどのお客様が影響を受けることとなります。引き続き地道に案内を続けていく必要があります。

納税方法のコーディネートも税理士の仕事…なんでしたっけ?つい、後ろ向きな考えが頭をよぎってしまいます。

江﨑 光行

えざき・みつゆき/江﨑光行税理士事務所 所長・税理士
大原簿記学校税理士講座講師、税理士法人古田土会計、川鍋直則税理士事務所を経て独立。 現在は、月次決算書、経営計画書の作成指導経験を踏まえ、 ビズアップ総研アシスタント養成講座などでセミナー講師を務める。

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