SDGsに関する新規事業創造<中小中堅企業のためのSDGs実践編Vol.2>

金沢工業大学 地方創生研究所 SDGs推進センター長
情報フロンティア学部 経営情報学科 准教授
平本 督太郎

2021/7/18

このコラムでは、SDGsビジネスの第一人者である平本督太郎先生が、国際社会の共通目標である「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」について中小・中堅企業の【実践編】として戦略策定の考え方や事例をわかりやすくご説明します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.93(2020.7)に掲載されたものです。

「社会変化で機会を掴む」ための企業戦略で新規事業を創造する①


今回は、SDGsに関する企業戦略の4つの種類の内、「社会変化で機会を掴む」ための企業戦略について説明していきます。社会ニーズの変化という外部環境の変化をきっかけとし、機会を創出していくためにSDGsに率先して取り組む企業は、大きく「①新規事業創造」、「②既存事業の拡張」、のどちらかのアプローチで機会創出に取り組みます。このうち、まずは「①新規事業創造」に注目します。

SDGsに関する新規事業創造というと、新しい製品・サービスを作れば、すぐに利益創出に結びつくと誤解をされる人がいらっしゃいます。しかし、実際には、SDGsに関する新規事業は、そのように成果を上げることはありません。SDGsに関する新規事業は、殆どの場合が直線的成長ではなく、指数関数的成長を遂げるからです。

直線的成長とは投入したリソースとほぼ比例した成長を指します。他方で、指数関数的成長では初めはなかなか成長せず直線的成長と比べると失敗したかのように見えます。しかし、勢いに乗ると急激に成長していき、一気に直線的成長を追い抜きます。(下図参照)



指数関数的成長については、その急成長の部分が注目されるのですが、私はそれよりも注目すべき点はなかなか成長しない初期段階の部分だと思っています。なぜならば、社会変革には農業と同じで最初に田起こしをして新しい空気を溶け込ませていくことが必要だからです。花火型では社会は変わらず、農業型でないと社会は変わらない。これがSDGsの前身であるMDGsの15年間で世界が学んだ大事な事柄の一つです。社会課題に直面している人々の意識・行動がしっかりと変容すれば、その後は勝手に社会変革が進んでいきます。しかし、人々の意識や行動はそう簡単には変わりません。人間は生存確率を上げるために過去の成功体験を繰り返すようにできているからです。そのため、人々の意識や行動が変容していくために時間を掛けて田起こしをするのです。

具体例で説明しましょう。例えば、以前紹介したSDGsビジネスアワードで大賞を受賞した大阪のフロムファーイーストの阪口社長は、これまでに数多くのSDGsに関する新規事業の創造に成功している経営者です。阪口社長は、色々な地域に足を運び、その地域に眠っている潜在価値の高い素材等を発掘しています。これらは大量生産・大量消費社会において評価がされてこなかった素材です。規格外であったり、大量に入手できなかったり、時にはそれは精米時に出る米ぬかのような廃棄物として扱われている素材の場合もあります。こうした素材が多くの場合、近年変化してきた社会ニーズに合致し、SDGsに貢献する新たな美容商材の原料となるのです。しかし、阪口社長はその素材を発掘した後、自分ですぐに製品にするかというとそうではありません。この時点で強引に製品にしようとすると労力もコストもかかり、しかも独りよがりの取り組みになりやすいので社会変革力が弱くなって
しまうのです。

それでは、阪口社長はどうするのでしょうか? 次回、その続きをお伝えします。

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