DMCA通知を利用した詐欺?<ネット時代に必要な企業防衛の極意vol.24>


弁護士法人戸田総合法律事務所 代表
中澤 佑一 先生

先日、「DMCA Copyright Infringement Notice」というタイトルのメールが事務所の代表アドレス宛に送られてきました。「DMCA」とはデジタルミレニアム著作権法というアメリカ合衆国の法律で、インターネット上で著作権侵害が発生した際の救済手続等が定められているものです。アメリカのウェブサーバーで運用されているウェブサイトに対して、著作権侵害を理由とする削除請求を行う場合など、わが国の弁護士もそれなりに活用しています。

さて、送られてきたメールを見ますと、送信者は米国の弁護士を名乗っており、私の事務所のウェブサイトに掲載されている画像が著作権を侵害しているとの内容で、掲載ページのURLとオリジナルの画像のURLが記載されていました。連絡の趣旨としては、損害賠償請求ではなく、クレジット表記として特定のウェブサイトへのリンクを設定するように求められています。

しかし、オリジナル画像のURLとして記載されているドメインと、クレジット表記として求められているウェブサイトのドメインが全く異なっており、内容を見ても同一ないし関係するとは思われない内容です。また、私の事務所のウェブサイトは私がすべて作成しており、使用している画像等も著作権侵害にならないように利用範囲等を確認しつつ利用しており、そもそも著作権侵害になるというのが考えにくいです。加えて、著作権紛争に備えて、出所を記録してもいますので、改めて対象の画像の利用範囲や著作権者を確認しても今回のメールとは無関係と思われました。

以上の観点から、新手の詐欺か何かだろうと判断して無視することにしたのですが、金銭を請求するでもなく、クレジット表記としてリンクを求めることにどのような意味があるのか少し気になりました。

そこで、メールのタイトルでGoogle検索を行ってみますと、同様のメールを受信したという方の記事が複数ヒットしました。日本だけではなくアメリカ国内でも同様のメールが出回っているようです。さらに調査したところ、このメールは特定のウェブサイトの検索エンジンでの表示順位を高めるために、当該ウェブサイトへのリンクを多数集めるためのものだということがわかりました。リンク設定だけであれば、こちらに不利益もないし、良くわからないから言われた通りやっておくかと思ってしまいそうなのですが、品質の低いウェブサイトへのリンク設定行為は、Googleの検索順位においてネガティブに評価される要素です。自社のウェブサイトの検索順位が低下してしまう危険性のある行為といえます。

今回のまとめとしてこの事例の教訓としては、ウェブサイトに利用する画像や素材については、利用範囲を確認してから利用すること、後の紛争に備えて出所や入手元を記録しておくこと、そして、怪しげなメールが来た場合には、タイトルや本文の内容で検索をしてみましょうということですね。

中澤 佑一

なかざわ・ゆういち/東京学芸大学環境教育課程文化財科学専攻卒業。 上智大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了。2010 年弁護士登録。2011 年戸田総合法律事務所設立。 埼玉弁護士会所属。著書に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル』(単著、中央経済社)、 『「ブラック企業」と呼ばせない! 労務管理・風評対策Q&A』(編著、中央経済社)など。

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