クレーム対応で会社の値打ちが決まる(小宮一慶先生 経営コラムVol.78)

本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.128(2024.6)に掲載されたものです。


株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶 先生

正直なところクレームは嫌なものです。しかし、「クレーム対応で会社の値打ちが決まる」と言われるように、クレームにどう対応するかがとても大切です。

そのためには、クレーム対応のルールをあらかじめ決めておかなければなりません。①クレームには即座に対応する、②直ちに上司に報告する、③お客さまに非があってもお客さまを非難しない、などです。

まず、即座に対応することです。お客さまは怒っておられる場合もありますが、クレームを無視するような態度をとると、2次クレームとなり決して許してもらえなくなります。即座に対応する、それも真摯に対応するとその場では叱られても、何とか許してもらえる、場合によっては関係が強化されることがあります。

次に、上司に報告することです。相手がクレーマーである場合もある一方、そのお客さまがとても大切なお客さまの場合もあるからです。クレームを起こした本人だけで対応しないことです。さらに、情報の共有も必要です。複数の社員が別々にかかわっているようなお客さまの場合は、クレームの共有は必ず行わなければなりません。

当社のお客さまでクレーム対応を「チャンス対応」と言い換えている会社もあります。クレームの中に会社改善の種を見出すとともに、クレーム対応をきちんとすることで、お客さまとの関係や評判の改善につとめられると考えているからです。

ちなみに、ある会社の調査だと、クレームを申し立てるお客さまは、不満を感じている人の4%だと言います。そのうち、真摯に対応してくれたと感じた人は、これまで以上に購買を増やしてくれたそうです。一方、不満を感じていてもクレームを申し立てなかったお客さまは、その後の購買を継続する確率が低くなります。

これに関連して、「クレームは必ず起こる」という考え方も必要です。「クレームゼロ運動」を行う会社がありますが、これは、クレームは悪という前提に立っているからです。「事故ゼロ、ミスゼロ」の取り組みをすることはもちろん大切なことです。これは、社内の問題だからです。しかしクレームを申し立てるのはお客さまですから、どんなに頑張ってもクレームは発生するという考え方が必要です。経営の格言に「クレームが発生することよりもクレームのないことを恐れたほうがいい」というものがあります。

最後に、ここまでクレーム「対応」と書いてきましたが、クレーム「処理」という人がいます。しかし、「処理」という言葉を不快に思うお客さまもいます。お客さまや人にかかわることは「対応」であって「処理」ではないからです。事務処理とは根本的に違うのです。

ある大手銀行の役員が「クレーム処理」という言葉を使っているのを聞いたことがありますが、やはりその銀行は業績も評判も悪いのが実情です。

小宮 一慶

こみや・かずよし/京都大学法学部卒業。 米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、 日本福祉サービス(現: セントケア)を経て独立。名古屋大学客員教授。 企業規模、業種を超えた「経営の原理原則」をもとに幅広く経営コンサルティング活動を 展開する一方で、年100回以上講演を行っている。 『稲盛和夫の遺した教訓』(致知出版社)など著書は150冊以上で、経済紙等にも連載を抱える。

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