基本的な取引以外のケース等について解説<収益認識に関する会計基準 第4回>

佐藤経営税務会計事務所 代表税理士
佐藤 充宏

2021/7/17

第4回 収益認識に関する会計基準
~基本的な取引以外のケースについての事例~

前回は「収益認識に関する会計基準の適用指針」の設例のうち、基本的な取引についてご案内しましたが、今回は、基本的な取引以外のケース等について解説します 。

Ⅰ、基本的な取引以外のケース例
1、契約変更後の取引価格の変動

(1)前提条件
①製品Xの引き渡し時(X3年2月1日):
(イ)A社は、2つの別個の製品X及び製品Yを3,000千円(1個あたり1,500千円)で販売する契約をB社(顧客)と締結した。
(ロ)製品X及び製品Yの独立販売価格は同額である。

②X3年4月1日(製品Xの引き渡し後):
(イ)契約変更し、製品ZをA社がB社に引き渡す契約内容を追加。
(ロ)契約金額を1,300千円増額。
(ハ)独立販売価格については、製品X及び製品Yと製品Zは同額である。
(二)各製品の引き渡しは別個の履行義務である。
≪A社の仕訳≫
製品Xの引き渡し時(X3年2月1日):
(借方)売掛金 1,500千円(※1)   (貸方)売上高 1,500千円
(※1)3,000千円÷2=1,500千円

契約変更時(製品Xの引き渡し後のX3年4月1日):
なし

製品Yの引き渡し時:
(借方)売掛金 1,400千円(※2)   (貸方)売上高 1,400千円
(※2)(1,500千円+1,300千円)÷2=1,400千円

製品Zの引き渡し時:
(借方)売掛金 1,400千円      (貸方)売上高 1,400千円
金額の算定方法は製品Yの引き渡し時と同じ

ポイント

(a)製品Xの引き渡し後の契約変更については、製品Zの引き渡しという、別個の財又はサービスの追加により、契約範囲が拡大されています。
(b) 追加金額1,300千円は、製品Zの独立販売価格を表していません。

上記により、収益認識金額については、次のとおりとなります。

製品Xの引き渡し時(X3年2月1日):
製品Xの収益認識額は1,500千円。
この段階では、製品Y1,500千円は未認識。

契約変更時(X3年4月1日)に契約金額を1,300千円増額。

製品Y及び製品Zの引き渡し時:
未認識額1,500千円と増額分1,300千円の合計2,800千円を製品Y及び製品Zに配分(2,800千円÷2)し、製品Yと製品Zの収益認識額は、各1個あたり1,400千円。

*「収益認識に関する会計基準の適用指針」の設例3を参考*

2、他社ポイントの付与

(1)前提条件
①小売業を営むA社は、第三者であるB社が運営するポイントプログラムに参加している。
②プログラムの下では、A社は、購入額100千円につきB社ポイントが1ポイント付与される旨を伝達すると同時に、A社はB社に対してその旨を連絡し、B社はA社の顧客に対して B社ポイントを付与する。
その後、A社はB社に対し、1ポイントにつき1千円を支払う。
③A 社の顧客に対して付与されたB社ポイントは、A社に限らず、B社が運営するポイントプログラムに参加する企業においても利用できる。
また、それらの企業における商品の購入で獲得されたB社ポイントも、A社で利用できる。
④A社は、自社の店舗で商品を顧客に現金1,000千円で販売するとともに、顧客に対してB
社ポイントが1ポイント付与される旨を伝達すると同時に、A社はB社に対してポイント付与の旨を連絡した。

≪A社が1,000千円を販売した際の仕訳≫
商品の販売時(B社ポイントの付与時):
(借方)現金預金 1,000千円    (貸方) 売上高990千円
(貸方) 未払金 10千円

売上高計上額:
顧客に対する商品販売の履行義務に係る取引価格の算定において、第三者であるB社のために回収した金額(1,000千円のうちの1ポイントである10千円)を除外する(1,000千円マイナス10千円)。

未払金計上額:
B社に対する未払金(1,000千円のうちの1ポイントである10千円)を認識する。

B社に対するポイント相当額の支払時:
(借方)未払金  10千円  (貸方) 現金預金  10千円

*「収益認識に関する会計基準の適用指針」の設例29を参考*

Ⅱ、法人税法の改正について
今回は、収益認識に関する会計基準の解説ですが、この会計基準の創設に伴い、法人税法も改正されました。
詳細は、法人税改正法令等によりますが、収益認識に関する計上時期及び計上金額等について留意をし、適正な処理をするようにしましょう。

以上


収益認識に関する会計基準の解説はこちらで最後となります。
なお、全4回の内容については、分かりやすくご案内するために、平易に記載しているところもありますので、実際の事例の個別判断等については、社内で確認の上、専門家等へのご相談をお願い致します。

末筆ではございますが、解説させて頂いた内容を皆様の実務にお役立て頂けると幸甚です。
ありがとうございました。

出典元:
企業会計基準委員会:改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」等公表資料

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