収益認識に関する会計基準<収益認識に関する会計基準 第3回>
佐藤経営税務会計事務所 代表税理士
佐藤 充宏
2021/7/17
第3回 収益認識に関する会計基準 ~基本的な取引についての事例~
前回ご案内した収益認識のための5つのステップに関して、イメージをより深めて頂けるように、今回は「収益認識に関する会計基準の適用指針」の設例を一部参考にしながら、基本的な取引について商品販売と保守サービスに関する契約を例にして数値を交えながら解説します。
1.設例
(1) 当期首に、A社はB社(顧客)と、標準的な商品Xの販売と2年間の保守サービスを提供する1つの契約を締結した。
(2) A 社は、当期首に商品XをB社に引き渡し、当期首から翌期末まで保守サービスを行う。
(3) 契約書に記載された対価の額は 12,000 千円である。
2.収益を認識するための5つのステップによる検討の解説
(1) ステップ1(計上単位):顧客との契約を識別する。
A社が顧客であるB社と契約を一つ締結をしたという事で、その契約が識別されます。
(2) ステップ2(計上単位):契約における履行義務を識別する。
履行義務を次の二つに識別し、各々を収益認識の単位とします。
①商品Xの販売
②保守サービスの提供
(3) ステップ3(計上金額) :取引価格を算定する。
商品Xの販売と保守サービスの提供の取引価格が12,000 千円に算定されました。
(4) ステップ4(計上金額):契約における履行義務毎に取引価格を配分す る。
次の二つの履行義務に取引価格を配分します。
①商品X:10,000千円
②保守サービス:2,000千円
(5) ステップ5(計上時期):履行義務を充足した時に又は充足するにつれ て収益を認識する。
収益認識のタイミングについては次の二つとなります。
①商品Xの販売
②保守サービスの提供(当期及び翌期の2年間にわたり収益を認識する)
(6)上記(1)から(5)の5つのステップを用いた結果の収益の認識額
①当期
(イ)商品Xの販売:10,000千円
(ロ)保守サービスの提供:1,000千円(2,000千円÷2年間のうちの当期分)
(ハ)合計:11,000千円
②翌期
保守サービスの提供:1,000千円(2,000千円÷2年間のうちの翌期分)
このように、5つのステップをあてはめる事により、収益を認識する事ができます。
ところで、このような収益認識をする場合には、売上に係る消費税等をどのように取り扱うのかという点に注意が必要です。
3.消費税等の取扱いについて
収益認識に関する会計基準(第47項一部抜粋)において、
取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(ただし、第三者のために回収する額を除く。)を いう。取引価格の算定にあたっては、契約条件や取引慣行等を考慮する。
とありますが、売上に係る消費税等については、第三者である国や都道府県に納付します。
そのため、この消費税等は第三者に支払うために顧客から回収する金額に該当するので、取引価格からは除きます。
よって、例えば、C社(消費税の課税事業者)がD社に対して、20,000千円の商品に消費税等2,000千円(20,000千円×10%)を加算した22,000千円を現金で販売(課税取引に該当)した場合には、C社では現金販売時に次のような仕訳例となります。
以上
次回は、今回の基本的な取引以外のケース等についてお知らせしますので、よろしくお願い致します。
出典元:
企業会計基準委員会:改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」等公表資料