【インボイス制度】税理士・会計士に期待されるコンサルタント業務
ビズアップ総研
税理士.ch 編集部
(2024/4/24)
2023年10月からインボイス制度がスタートし、適格請求書発行事業者と取引した場合は、インボイス(適格請求書)の発行と保存が義務付けられました。
また、電子帳簿保存法は、電子的に取引した際の書類をすべて電子保存しなければならない制度ですが、2023年12月31日で宥恕措置が終了し、2024年1月1日より完全に対応しなければならなくなりました。
つまり、2024年1月1日以降は、インボイス制度と電子帳簿保存法の双方への対応が求められます。対応に苦慮している企業も多いため、会計事務所、税理士事務所としては、経理コンサルタント業務を切り口に既存顧客との関係強化、新規顧客の獲得につなげるべきです。
インボイス制度とは
インボイス制度とは、適格請求書(インボイス)を用いて、事業者が本来納めるべき消費税を納税するための制度です。
売り手側が買い手側の事業者に対して、インボイスを発行することで正確な適用税率や消費税額を伝えることができ、買い手側は仕入税額控除を受けることができます。
インボイスには次の項目の記載が義務付けられています。
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
インボイスの交付方法や保存方法については特に決まりはなく、書面と電磁的記録(電子データ)のどちらでも良いことになっています。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、税務関係の帳簿、決算関係書類、取引関係書類を電磁的記録(電子データ)で保存することを可能とするとともに、電磁的記録(電子データ)で授受した取引情報を保存することを義務付けた法律です。
電磁的記録(電子データ)を保存する際は、改ざん防止のための措置(真実性の確保)を講じるとともに、「日付・金額・取引先」で検索できるシステムを導入し、ディスプレイやプリンタ等を備えること(可視性の確保)が求められています。
これらの電磁的記録(電子データ)も、法人なら原則7年間(最長10年間)、個人事業主なら原則5年間(最長7年間)保存することが義務付けられます。
インボイス制度と電子帳簿保存法の関係
インボイス制度では、インボイスの発行と保存のいずれも電磁的記録(電子データ)で行うことができます。
そして、電磁的記録(電子データ)でインボイスのやり取りが行われた場合は、電子帳簿保存法に則った方法で保存することが義務付けられます。
企業の経理担当者から、電子帳簿保存法への対応方法が理解しにくく、真実性の確保と可視性の確保とは具体的に何をすればよいのか、と言った相談が会計事務所や税理士事務所に寄せられていると思います。
電子帳簿保存法への対応方法
電子帳簿保存法に対応するためには、真実性の確保と可視性の確保の要件を満たさなければなりません。
真実性の確保とは
改ざん防止のために以下のような措置を講じることが求められます。
- 取引先から送付される取引情報にタイムスタンプを付与してもらう。
- 取引情報の受領後、速やかにタイムスタンプを付与すると同時に、保存の実行者、監視者に関する情報を確認できる環境を整備する。
- 訂正や削除を確認できるシステム、又は訂正や削除ができないシステムで取引情報の受領と保存を実施する。
- 訂正や削除の防止に関する事務処理規程を定めて、適切に運用する。
可視性の確保とは
検索機能の確保と見読性の確保、さらに、電磁的記録(電子データ)を保存するシステムの概要を記載した関連書類を備え付けなければなりません。
具体的には、以下のような条件で検索できるシステムが必要です。
- 「取引年月日」「取引先」「取引金額」の3項目
- 「取引年月日」または「取引金額」の範囲指定
- 複数の記録項目の組み合わせ
経理コンサルタント業務による営業チャンス
取引先から受け取る電磁的記録(電子データ)によるインボイスなどを電子帳簿保存法に対応する形で保存するためには、会計ソフトと連動するクラウドツールを導入するのが最適です。
しかし、こうしたサービスの導入や運用方法が分からず、困っている企業も少なくありません。そこで、会計事務所や税理士事務所が取り組むべきなのが、経理体制の見直し、スマート化、経理代行(またはアドバイザリー)などのサービスを提供する経理コンサルタント業務です。
インボイス制度と電子帳簿保存法への対応の有無で顧問切り替えも生じる
今まで顧問契約を結んでいた会計事務所や税理士事務所にインボイス制度や電子帳簿保存法について相談したものの、満足な回答が得られなかったり、対応してもらえなかったことがきっかけで、別の事務所に相談し、そのまま、顧問切り替えに至るケースも少なくありません。
経理コンサルタント業務を切り口に、既存顧客との関係を強化するとともに、新規顧客獲得に向けて取り組むべきです。
経理コンサルタント業務で提供すべきサービス
経理コンサルタント業務は、単に、インボイス制度と電子帳簿保存法に対応するための経理体制を整備するだけではありません。決算をステークホルダーに開示するための制度会計、経営判断に活用するための管理会計の導入や運用のサポートも行うべきです。
特に、管理会計は、チェック機能が機能していなかったり、非効率な運用になっていることも多いため、クラウドツールの導入を機に改善できる余地があります。
まとめ
2024年からインボイス制度と電子帳簿保存法の双方への対応が求められるため、困っている企業も少なくありません。会計事務所や税理士事務所は、経理コンサルタント業務を切り口に、既存顧客との関係強化、新規顧客獲得に動きましょう。
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