民法上の成年の取り扱い(知って得する法律相談所 第7回)

弁護士法人アドバンス 代表弁護士・税理士
五十部 紀英

2021/7/16

法律と年齢を巡るアレコレ~未成年でもお酒が飲めるようになる!?

2016年に、選挙権年齢が20歳から18歳へと引き下げられたことは記憶に新しいことでしょう。また、2022年4月には改正民法も施行され、成年として扱われる年齢に変更が生じます。そこで今回は、法律と年齢を巡る豆知識をいくつか紹介したいと思います。

1.民法上の成年の取り扱い

来年4月から、現行20歳とされる成人年齢が、18歳に引き下げられます。つまり、今まで婚姻をした場合を除き、親の同意がないと認められなかった一定の法律行為(日常生活の例でいえば、携帯電話の契約や、ローンの借入など)が、親の同意がなくても単独で行えるようになります。
つまり、18歳が成年となることにより、親権も18歳で終了しますから、親権を持つ者(多くの場合は両親)の同意が不要になり、進路など様々な場面で自分自身の判 断のみで決めることができるようになります。
なお、成人と似たような表現として成年という言葉がありますが、法律上、成人と成年の明確な違いや使い分けはありません。しかし、成人=成年と一概にはいえま せん。
たとえば、来年4月からは18歳から【成年】となりますが、【成人】式を18歳にするのか、20歳にするのかについては各自治体の運用に任せるとされています。
また、現行法では、未成年でも、男性であれば18歳、女性であれば16歳の場合も親の同意を得られれば、結婚することができました。しかし、法改正により18歳から 成年となり、さらに、男女差別であると指摘されていた婚姻年齢も18歳に統一されます。そのため、来年4月の改正以降は、「未成年の結婚」という状態がなくなります。
一方で、民法の改正があっても、養子縁組を行い、養親となることができるのは20歳のままであることに注意が必要です。

「現行法」
民法
第4条  年齢二十歳をもって、成年とする。
第731条 男は、十八歳に、女は、十六歳にならなければ、婚姻をすることができない。
第792条  成年に達した者は、養子をすることができる。

「改正法」2022年4月から
第4条  年齢十八歳をもって、成年とする。
第731条 婚姻は、十八歳にならなければ、することができない。
第792条 二十歳に達した者は、養子をすることができる。

2.その他の法律・制度改正

また民法の改正に併せて、様々な法律や制度改正が行われ、18歳からできるようになるものもあります。少しだけ紹介しましょう。

2-1資格制限

司法書士、公認会計士、行政書士などの国家資格も、試験に合格すれば、18歳から登録することが可能になります。ただ、これらの資格試験に合格するためには、大 学卒業あるいはそれ以上の学力や知識が必要とされているため、いきなり登録者が急増することはなさそうです。

2-2許認可業務

古物業や運転代行業、出会い系サイトの運営など、業務を行うには、行政庁(都道府県や市区町村など)の許可が必要な業種が数多くあります。これらの許可が得ら れない欠格要件として「未成年であること」が明示されている業種の多くについても、「18歳未満であること」と改正され、年齢が引き下げられます。

2-3パスポート関連

今まで10年間有効なパスポートを取得するためには、20歳以上とされてきましたが、民法に併せて旅券法も改正され、18歳から10年パスポートが有効になります。成 人年齢の引き下げにより、一番得する方が多いのは、旅券法の改正ではないでしょうか。

3.20歳以上であることが求められるもの

しかし一方で、養子縁組以外にも、20歳にならないと認められないものもあります。

3-1.飲酒、タバコ

意外と勘違いをしていることが多く見受けられるのは、アルコール飲料の飲酒やたばこの喫煙が可能になる年齢です。
「18歳から大人になる」というキーワードが一人歩きしたせいか、飲酒や喫煙も18歳から可能になると勘違いしている人が多く見受けられます。
しかし、飲酒や喫煙の制限は、民法ではなく、別の法律である「未成年者飲酒禁止法」「未成年者喫煙禁止法」により、定められています。そして、その法律では「 未成年」ではなく、「20歳未満の者」に対する飲酒や喫煙を禁止しています。
民法改正後も、この「20歳未満の者」という文言は継続されます。つまり、これからも飲酒や喫煙については、20歳になってから可能になります。

3-2.公営ギャンブル

また、競馬や自転車競技、小型自動車競技、モータボート競走の公営ギャンブルについても、20歳以上でなければ、投票券を購入したり、譲り受けたりすることでき ない要件は維持されます。

3-3.中型、大型自動車免許の取得

中型免許は20歳から、大型免許の取得要件は21歳以上とそれぞれ規定されています。民法改正後も、引き下げられることはありません。

3-4.国民年金の強制加入義務

いわゆる国民年金の強制加入年齢は、現行の制度である「20歳以上」が維持される予定です。

4.まとめ

成人年齢が18歳に引き下げされる改正民法(民法の一部を改正する法律)は、2022年4月1日から施行されることとなっています。
従って、2022年4月1日の時点で、18歳以上20歳未満の方は、その日に成年に達することになります。
成人年齢の引き下げにより、今の制度より、より多くのことが親の同意を得ずに行うことができるとされ、様々な期待が寄せられています。
しかし、一方で、今までは親の同意が得ないと有効とされてこなかった契約について、18歳になれば、単独でできるようになるということは、悪質業者や詐欺のター ゲットになりやすいとされています。
つまり、制度が変わり、自分が成年になったことを知らない18歳、19歳の人が、今までの感覚で「親の同意がないから大丈夫、いざとなったら取り消せるだろう」と いう安易な気持ちで契約を締結してしまうと、いつの間にか契約が有効になってしまっているリスクがあります。

制度が変わり、どのような行為が許されるようになるのか、あるいは現状のままなのか、といったことは学校教育を中心に、ちゃんとした理解・教育をすることが必 須といえそうです。

上記内容は2020/10/1現在の法律に基づいています。

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