リーダーには根本的、多面的、長期的な視点が必要(小宮一慶先生 経営コラム Vol.18)
株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶
2021/7/18
本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.92(2021.6)に掲載されたものです。
リーダーは根本的、多面的、長期的に物事を見るべき
コロナで厳しい時を過ごしていますが、こういうときほど、経営や人生の本質を考えるべき時かもしれません。安岡正篤先生のものの見方がとても参考になると思います。安岡先生は40年ほど前に亡くなられた有名な東洋哲学者です。今でも、安岡先生の思想を勉強する会が全国にあります。
その安岡先生が、リーダーには「根本的、多面的、長期的」な視点が必要というふうに指摘されています。
まず、根本的な視点とは、本質的に物事を見ているかどうかということです。企業経営をしていると、日々多くのことが起こります。そして、対処療法的にそれに対応することも必要です。例えば、私は17名のコンサルティング会社を経営していますが、お客さまにお送りする資料をスタッフが数を間違って発送したなど、毎日さまざまなことが起こります。もちろん、その「対応」を行わなければなりません。お客さまに足りない資料をすぐにお届けする、上司が謝罪するなどです。
しかし、そのようなことが頻発する場合には、もっと深いところに原因がある可能性があります。例えば、事務処理量が多すぎてミスが続発しているなどです。
そのような場合に、「ミスに気をつけるように」と注意したところで、一時的にミスは減るでしょうが、すぐに元に戻ります。事務量を正確に把握し、ムダな作業を減少させ、それでも難しい場合は人員を増加させるという解決策もあります。対処療法的に対応することはいかにも仕事をやっているような気になりますが、それでは、組織の実力は上がりません。根本的な原因を見つけてその解決策を工夫することが大切です。
次に、多面的な視点も大切です。どうしても人は、自分に都合の良い視点から物事を見がちです。そうしたときに、別の視点から見ると、また違ったものの見方ができることも少なくありません。
松下幸之助さんは、「見方を変える」ということについて、「何ごともゆきづまれば、まず、自分のものの見方を変えることである。案外、人は無意識の中にも一つの見方に執して、他の見方のあることを忘れがちである。」(『道をひらく』)とおっしゃっています。視野を広くすることが、物事がうまくいく大きなポイントだと思います。
最後に長期的です。ピーター・ドラッカーは、短期と長期のバランスを取ることが重要と述べていますが、短期的に物事を解決しながら、長期的展望を持ち、根本的に問題を解決することで長期的に組織を強くしていくことが大切です。その際には、もちろん、多面的に物事を見て、解決策の工夫をすることも必要です。