AIが進化するほど、税理士が必要になる理由
~AI時代の社長・経理・税理士の連携体制の作り方~ <第2回>

AIが進化するほど、税理士が必要になる理由~AI時代の社長・経理・税理士の連携体制の作り方~

第2回 AIは有用だが万能とまではいかない、だからこそ専門家が必要になる

経営者の方々とお話ししていると、「もうAIで何でもできてしまいますよね」と、AIを万能視される方がいます。さらに、最近はAIエージェントという言葉も広まり、人間の社員と同じように業務をこなせると考える方も出てきています。ただ、現実にはそうなる面と、そうならない面があります。

1つは、バックオフィスのような事務系の作業でも、動き回る作業があるということです。経理社員といえども、出勤から退勤まで、ひたすら机に座ってパソコンの前に向かっているわけではありません。現場社員の席へ出向いての経理申請の促しや内容修正、未入金先への対応、さらには税理士の先生をお迎えするためのデスク清掃や資料準備など、多岐にわたるアナログ作業が現場を支えています。

このような「移動を伴う作業」というものが、AIを搭載したロボットでも可能かどうか、ロボット開発に携わっている友人に聞いたところ、AIの能力の問題というよりロボットのような縦長の形式に課題があるそうです。縦長のロボットは、シンプルに倒れるリスクがあります。何らかのアクシデントで衝撃を受けた際に、AIソフトが不具合を起こす可能性があり、その開発費等に多額の費用を要します。

そのため、見本として完成させることは可能でも、それが一般化するかはどうだろう、ということでした。仮にそうしたロボットが1体10万円で買い取りをできるなら、確かに人間より費用対効果がありそうですが、1体300万円で毎月数万円メンテナンス費用がかかるのであれば、「人間がさっさとやってしまったほうが早くて安い」ということになります。つまり、人間そのままをAIが代替するというのは、AIの技術というより、開発コストが見合うかが基準となるので当面は、「AIと人間との共存」が、現実的な住み分けとなる時代が続くのではないかと思います。

その上で、AIエージェントの進化を予測したとき、1つの現実的な着地点は「優秀なイエスマン」ではないかと思います。与えられた前提に素直に従い、その条件下で最適解を出す作業や努力をし続けるということです。一見万能に思えますが、真の課題はAI側ではなく、指示を出す「人間」の側にあります。人間が「正しい」指示を出せば、AIはそれに従い「正しく」作業や努力をし、最適解へと向かいます。しかし人間が「不正な」指示を出せば、AIはそれに従って粛々と作業や努力をし続けてしまうということです。

例えば、経営者が「今期はどうしても黒字決算にして銀行に決算書を提出したいから、税理士の先生にもばれないようにうまいこと仕訳をいじっちゃって」とAIに指示をしたら、AIはその指示通りに従って努力してしまいます。これがもし人間の部下なら「社長、何を考えているのですか?そんなことできるわけがないじゃないですか!」と拒否し、税理士の先生にも即座に相談することでしょう。しかしAIの場合、そうした人間同様の対処を期待するのは、現時点では困難です。この点においては、やはり会社内であれば経理部門・経理社員、社外であれば税理士などの「数字の専門家」の存在意義があります。

AIは処理や分析を劇的に高める可能性を秘めていますが、前提条件の妥当性までは保証しません。それはAIの責任や範疇ではなく、指示を出す人間の責任や範疇だからです。「どのような指示をAIに出したのか、それが恣意的か恣意的でないかに関わらず、正しい指示出しをしたのか」という検証を、税理士の先生方がチェックし、お墨付きを与える。これによって初めて、企業の数字の信頼性が担保される時代に、今後はなっていくことと思います。

次回は、AIを使いこなせる企業とそうでない企業の違いを見ていきます。


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前田康二郎

経営データ戦略アドバイザー・作家/流創株式会社代表取締役
学習院大学経済学部経営学科卒業。エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長兼IPO担当として株式上場を達成。その後、中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は、AI導入前の社内体制構築・経営データ整備支援など、多岐にわたりコンサルティング、研修、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)他多数。Podcast番組『THE VENTURE』 パーソナリティ。

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