税制適格ストックオプションに関わる優遇措置の拡大について<President’s Report vol.5>
株式会社ビズアップ総研 代表取締役
吉岡 高広
(2024/2/15)
皆さまこんにちは、株式会社ビズアップ総研の代表取締役 吉岡高広です。
いつも弊社サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。
今回はスタートアップの人材確保や従業員のモチベーション向上につながると言われる税制適格ストックオプションに関わる優遇措置の拡大についてお話したいと思います。
税制適格ストックオプションは、租税特別措置法第29条の2の要件を満たすことで、税制の優遇を受けられるストック・オプションのことです。株式売却時の譲渡課税のみが発生し、税制非適格ストックオプションと違い、権利行使(株式購入)時に給与課税が発生しないといった特長があります。
このように税制適格ストックオプションは、税制上のメリットが大きいのですが、年間で1,200万円に設定された権利行使限度額をはじめ、厳しい適格要件があることから、利用が広まりにくい課題がありました。
そうした中、政府は、2024年度税制改正で、スタートアップ企業の支援を目的として、税制適格ストックオプションに関する優遇措置の拡大を決めました。
決定方針のうち、魅力的な改正といわれるのが、1年あたりの権利行使額の限度額引き上げです。権利行使額、すなわち税優遇される形で購入できる株式の限度額は、これまで上場・未上場に問わず、1,200万円でしたが、税制改正により、現行の3倍となる最大3,600万円に引き上げられます。
これにより、取締役や執行役・使用人といった付与対象者は、1年あたりに行使できるストックオプションの数が増えるため、早期に権利行使をできます。例えば、3,600万円分のストックオプションが付与された場合、改正前は全て権利行使するために3年かかっていたところを1年で行使できるようになります。
また、権利行使額の限度額引き上げにより、従来より最大で2,400万円分多く、権利行使額に対する課税が株式売却時まで繰り延べられます。課税の繰り延べにより、給与課税の控除額も増えますので、税制上のメリットが大幅に増えるといえるでしょう。
このほか、2024年度税制改正では、権利行使により交付される株式の保管委託要件が緩和されます。具体的には、交付される株式が譲渡制限株式であり、かつ、当該株式を株式発行会社自身により管理するという要件を満たす場合に、証券会社への株式の保管委託が不要になります。こうした保管要件の緩和により、非上場会社でもストックオプション制度の設計がしやすくなると考えられています。
さらに、社外高度人材へのストックオプションの付与要件も緩和されます。
緩和内容の一部を紹介すると、国家資格・博士号の学位を持つ者、高度専門職の在留資格を持って在留している者については、実務経験の要件そのものが廃止されるほか、教授・准教授や上場企業の重要な使用人として1年以上の実務経験がある者などが社外高度人材の範囲に加わります。社外高度人材へのストックオプションの付与要件の緩和は、企業経営で、社外人材を重宝する企業にとって、大きなインセンティブとなるでしょう。
これらの制度改正を踏まえ、企業経営者の皆さまは、税制適格ストックオプションの制度設計をご検討してみてはいかがでしょうか。
当社のハイグレードセミナーや、e-JINZAIの動画コンテンツでも、税制に関する最新情報を取り上げて参りますので、ぜひご活用いただければと思います。
今後も変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。