【令和8年度税制改正】貸付用不動産の評価方法の見直し及び不動産小口化商品の評価方法の見直しを解説
2026(令和8)年度税制改正大綱が令和7年12月19日に公表されました。資産課税の分野では、不動産の評価方法の見直しとして、貸付用不動産の評価方法の見直しが織り込まれました。
また合わせて不動産小口化商品の評価方法の見直しも行われています。本記事では、この2つの項目について、令和8年度の改正内容を踏まえて詳しく解説します。
目次
貸付用不動産の評価方法の見直し及び不動産小口化商品の評価方法の見直しの条文
2026(令和8)年度税制改正において、資産課税分野で行われた不動産の評価方法の見直しの条文は以下の2つです。(注記は省略)
国税(4)相続税等の財産評価の適正化
相続税法の時価主義の下、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との乖離(かいり)の実態を踏まえ、その取引実態等を考慮し、次の見直しを行う。
- 被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得または新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
- 不動産特定共同事業契約または信託受益権に係る金融商品取引契約のうち、一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産については、その取得の時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
以下の章からは、上記の条文を個別に詳しく解説します。
貸付用不動産の評価方法の見直し

令和8年度税制改正において、不動産の評価方法で見直しされた項目のひとつが貸付用不動産の評価方法です。
そもそも貸付用不動産とは?
貸付用不動産とは、貸家、賃貸アパート、賃貸マンション、賃貸ビル、そして下記で解説する不動産小口化商品などを総称した土地・建物等の不動産をいいます。
ただし不動産小口化商品に関しては、今回の改正では、取扱いが別建てとなっているので、下記であらためて分けて詳しく解説します。
評価方法の見直しに至った背景
今回、貸付用不動産の評価方法の見直しに至った背景について説明します。
現状、土地の相続税評価は路線化等により算定され、路線化等は一般的に市場価格より低く設定されています。さらに貸付用不動産は所有者の権利が制限されることから、貸付用不動産の相続税評価額を計算する際には、借家権割合及び借地権割合等を考慮した評価額の減額調整が行われるのが一般的です。
ところがこの評価額の乖離を利用して、相続開始前に貸付用不動産を購入して、相続税を意図的に減額しているとみられる事例が散見されていたため、国税庁は著しく不適当な費用化であると判断してこの評価を否定し、現行の評価方法での評価額が認められない事例が起こっていました。(財産評価基本通達総則6項を適用)
しかし納税者側としても現行の評価方法に則って貸付用不動産の評価額を出していたため、そのような恣意的な運用でなく、課税側、被課税側の両者が納得いく評価方法の改正が必要との声も上がっていました。
こうした背景を受けて、今回の改正で費用化の適正化と課税の公平を図ることを目的とした貸付用不動産の評価方法の見直しがなされたのです。
現行の貸付用不動産の相続税評価方法
現行の貸付用不動産の相続税評価方法を一覧表にすると以下のようになっています。
| 建物の相続税評価額 | 土地の相続税評価価額 | |
| 自己使用(自宅、別荘等) | (自用家屋の評価額)固定資産税評価額×1.0 | (自用地としての評価額)路線価方式または倍率方式※1 |
| 貸付用不動産(貸家、賃貸マンション等) | 自用家屋の評価額×(1-借家権割合※2×賃貸割合※3) | 自用地としての評価額×(1-借地権割合※4×借家権割合×賃貸割合) |
(※1)倍率方式…相続税・贈与税の土地評価で使用される代表的な評価方法のひとつで、国税庁が定める路線価が付されていない地域(地方部や郊外の住宅地・農地・山林等)で活用されています。算式は固定資産税評価額×国税庁が定めた倍率。
(※2)借家権割合…建物の借主がその建物を使う権利の割合のこと、現状全国一律30%。
(※3)賃貸割合…建物の延べ床面積のうち、賃貸に使用されている割合のこと。
(※4)借地権割合…土地を借りて使う割合がどれぐらいになるかその比率のこと、地域によって異なり国税庁によって定められています。(およそ30%~90%)
令和8年度税制改正の見直しによる貸付用不動産の相続税評価方法及び適用時期
令和8年度税制改正では、貸付用不動産の相続税評価方法が見直しされました。
具体的には、相続開始前や贈与前の5年以内に有償で取得または新築した一定の貸付用不動産に関して、取得時期に応じて評価方法を以下のように変更されます。
| 貸付用不動産の取得時期 | 建物の相続税評価額 | 土地の相続税評価額 |
| 相続開始前・贈与前5年以内に取得(今回見直し分) | 通常の取引価格に相当する金額によって評価(原則、取得額を基に算定する)※1※2 | |
| 相続開始前・贈与前5年超に取得(現行通り) | 建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合) | 自用地としての評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合) |
※1取得価額…減価償却による減価を反映させるなどして、各不動産の実態に即した評価を行います。
※2取得価額…取得額を基に評価額を算定する際、原則として、取得時から課税時期までの間の価格変動などを加味して、取得価額の8割程度で評価することで、評価の安全性を担保するよう図られる予定です。
なお、この評価方法の見直しの適用時期については、2028(令和9)年1月1日以後に相続または贈与により取得する財産の評価に適用されます。
本改正による貸付用不動産への対応・注意点
本改正による貸付用不動産への対応・注意点について、以下2点に絞って解説します。
まず1点目として、本改正の但し書きに以下の表記があります。
「ただし、上記①の改正については、当該改正を通達に定める日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る。)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む。)には適用しない。」
これの意味するところは、すなわち、課税時期前5年を超えて所有している土地に、課税時期前5年以内に貸付用建物を新築した場合には、土地に関しては本改正の対象外となりますが、家屋については、「課税時期前5年以内に貸付用不動産として取得したもの」に該当するので、本改正の対象となるということです。
一方で「経過措置」として、通達発遺日の5年前から所有している土地の上に、本通達の発遺日前に新築した貸付用建物あるいは本通達の発遺日前に建築中の貸付用建物は本改正の対象外となる点に注意する必要があります。
ただし現時点では、通達発遺日(本改正を通達に定める日)がいつになるか決まっていないので、今後の動向に注視しておかねばなりません。
2点目の注意点は、税制大綱の発表段階では見直し項目の概要のみで、詳細が公表されていないという点です。
たとえば、貸付用不動産として発表されていても「具体的な範囲」までは公表されていないし、被相続人の範囲も具体的に示されていません。その他、通達の内容によって変動する可能性もある項目もいくつかあるので、通達発遺日を待って内容の詳細確認が必要になってきます。
不動産小口化商品の評価方法の見直し

令和8年度税制改正大綱では、貸付用不動産の評価方法の見直しとともに、不動産小口化商品の評価方法も見直しされました。
前述したように、大きなくくりでは不動産小口化商品も貸付用不動産の範疇に入りますが、今回の改正では評価方法の取扱いが貸付用不動産の評価方法よりさらに厳格化されたので、別枠として解説します。
そもそも不動産小口化商品とは?
不動産小口化商品とは、簡単にいえば、特定の不動産を1口100万円とか1,000万円に小口化、投資商品として事業者経由で販売している金融商品で、投資者(出資者)に対して賃料収入や売却益等を所有口数に応じて分配する商品です。
たとえば都市部の優良不動産を購入する場合、おおよそ購入額は数億円~数十億円以上と多額になるため、個人で買うには無理があります。
しかしそれを小口化した不動産小口化商品なら個人でも少額から購入が可能です。
現状、不動産小口化商品の種類は4種類ほどありますが、そのうち本改正と直接関係があるのは任意組合型と信託受益権型という2種類です。(改正条文では、不動産特定共同事業契約または信託受益権に係る金融商品取引契約と表記されています)
これらは時価評価でなく不動産評価となるので、土地は路線価評価、建物は固定資産税評価で行います。
評価方法の見直しに至った背景
上記の評価方法から、不動産小口化商品を購入した場合、現状では土地の路線価評価は時価の8割程度、建物の固定資産税評価は時価の6割程度に評価されており、さらにその物件が賃貸に出されていた場合には、借地権割合もよりますが、土地は貸家建付地として8割程度の評価、建物は貸家として7割程度の評価がなされます。
さらにこれを都市部に限定すると、都心部では路線価評価が時価の5割以下になるケースやそれ以下のケースが散見されます。
不動産小口化商品の対象は都心部の一等地物件が多く、実勢価格(時価)との乖離が大きくなりがちで、購入額に対して相続税評価額が10%~20%となる物件も多く存在していました。
以上のような理由から、不動産小口化商品を買うと圧縮率が8割にもなって、現金でそのまま相続するより節税効果が極めて高いことから、また小口投資で金額の調整も容易なことから、相続対策として人気の高い商品となっていました。
さらに土地に関しては、小規模宅地等の特例と組み合わせることで上記評価額からさらに50%の減額も可能ですし、商品購入後に生前贈与と組み合わせることでさらに大きな節税効果を得ていた方もいたのです。
しかし今回の税制改正で、任意組合型と信託受益権型の不動産小口化商品については、その取得時期に関わらず(←これも重要な改正点のひとつ)、相続開始時、または贈与時における通常の取引価格に相当する金額によって評価することとなりました。
現行の不動産小口化商品の評価方法
現行の不動産小口化商品の評価方法は以下の通りです。
【改正前の相続税評価額】
- 土地…路線価評価
- 建物…固定資産税評価額
令和8年度税制改正の見直しによる不動産小口化商品の評価方法及び適用時期
一方、税制改正での見直しによる不動産小口化商品の評価方法は以下の通りです。
【改正後の相続税評価額】
- 土地…通常の取引価格(※1)に相当する金額
- 建物…通常の取引価格(※1)に相当する金額
(※1) 上記の課税時期における通常の取引価額に相当する金額については、課税上の弊害がない限り、以下の3つの価格等を参酌(※2)して求めた金額で評価します。
(※2) 参酌とは、他と比べ合わせて参考にすること。
- 出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等
- 事業者等が把握している適正な売買実例価額
- 定期報告書等に記載された不動産の価格
ただし上記1、2、3に該当するものがないと認められる場合には、貸付用不動産の評価方法に準じて取得価額をベースに80%で評価します。
なお不動産小口化商品の評価方法の見直しの適用時期は、上記の貸付用不動産の適用時期と同じ、令和9年1月1日以後となります。
そのため今後、不動産小口化商品に関しては、物件の取得・購入時期に関係なく、通常の取引価格に相当する金額で評価されることから、令和9年1月1日以後については、節税効果は全くなくなるということを押さえておく必要があります。
本改正による不動産小口化商品への対応・注意点
本改正による不動産小口化商品への対応・注意点は以下の通りです。
不動産小口化商品のうち、任意組合型または信託受益権型を購入している方については、相続開始のタイミングで評価方法が異なる点に注意が必要です。
| 相続開始のタイミング | 相続税評価額 |
| 相続開始が令和8年12月31日まで | 従来の評価方法を適用(節税効果あり) |
| 相続開始が令和9年1月1日以降 | 改正後の評価方法を適用(節税効果なし) |
すなわち、特に対策せず令和9年を迎えてしまうと、不動産小口化商品による節税効果はなくなってしまうということになります。
そこで事前の対策として、令和8年12月31日までにこの商品を生前贈与する方法が考えられます。また生前贈与に使える方法として、暦年課税と相続時精算課税制度の2つがありますが、どちらを活用した方がより節税できるかは様々な要件が絡んでくるので、どちらが良いと一概にはいえません。
令和8年12月31日までに生前贈与するつもりなら、必ず税理士等の専門家に事前相談してから実行することをおすすめします。
ただしいくら上記期日までは節税が可能だとしても、節税ありきで億円単位の節税行為を短期間に行ってしまうと、税務当局による否認リスクもありますので、商品を購入したり贈与したりする場合には、金額やタイミングも含み、慎重に事前の検討が必要です。
まとめ
2026(令和8)年度税制改正大綱における、貸付用不動産の評価方法の見直し及び不動産小口化商品の評価方法の見直しについて詳しく解説しました。
本改正の適用時期は令和9年1月1日以降です。
これにより、令和8年度中の贈与を検討中の方中心に、特に年末に向けて駆け込み需要が発生することが予想されます。そのため、後になればなるほど処理件数が増えて、対処する税理士等も多忙で手続きが間に合わなくなるリスクもあります。
それだけに対策したい方は、迅速に貸付用不動産あるいは不動産小口化商品の贈与シミュレーション等に着手して、時間切れとならないよう、専門家にも早めに相談しておくことが肝心です。
オンライン研修・eラーニング
e-JINZAIで
社員スキルUP!
- e-JINZAI for account(会計事務所向け)
- e-JINZAI for business(一般企業・団体向け)
- 今ならe-JINZAIを2週間無料でお試しいただけます!
税理士.ch 編集部
税理士チャンネルでは、業界のプロフェッショナルによる連載から
最新の税制まで、税理士・会計士のためのお役立ち情報を多数掲載しています。
運営会社:株式会社ビズアップ総研
公式HP:https://www.bmc-net.jp/

