2026年1月から、下請法が取適法に改正されます<ネット時代に必要な企業防衛の極意 vol.43>
昨今のサイバー攻撃強化で改めて注目度が高まっているセキュリティ対策。2022年4月に施行された改正個人情報保護法でも、個人情報の利用や提供に関する規制が強化されています。一方で、ネット上の情報漏洩や誹謗中傷といった事例も近年、急増しています。当コラムでは、こうしたネット上のリスクや対応策について詳しく解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.147(2026.1)に掲載されたものです。
弁護士法人戸田総合法律事務所 代表
中澤 佑一 先生
大企業と中小企業の取引において、相対的に弱い立場にある中小企業を保護するための法律である下請法が、2026年1月1日より「中小受託取引適正化法(取適法)」に改正され、規制内容も強化されます。多くの企業にとって対応が必要になる法改正ですので、基本的な内容を押さえておきましょう。
改正の趣旨としては、近年の原材料費や労務費の高騰に対し、発注者・受注者間の対等な関係に基づいてサプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させるという「構造的な価格転嫁」の実現を図るというものです。この趣旨を明確化する意味で、従来の法律にあった「親事業者」と「下請事業者」という用語は、「委託事業者」と「中小受託事業者」と改められ、取引の対等性が強調されています。
具体的な改正事項としては、まず従来は資本金の額で適用対象となる企業を判断していたところ、従業員数による基準も追加されました。300人超の従業員を有する委託事業者が、「製造委託」「修理委託」「特定運送委託」と、プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理についての「情報成果物作成委託」「役務提供委託」を、従業員300人以下の企業に発注する場合、取適法の適用対象となります。また、従業員100人超の委託事業者が、プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理以外の「情報成果物作成委託」「役務提供委託」を、100人以下の企業に発注する場合に、同法の適用対象となります。
取引における具体的な改正事項として1つ目は、協議に応じずに一方的に代金を決定することが新たな禁止行為として法定されました。委託事業者は中小受託事業者から価格協議の求めがあった場合、
- ①協議に応じないこと
- ②必要な説明・情報を提供しないこと
- ③一方的に代金を決定すること
が禁止されます。
形式的な交渉ではなく、実質的な協議が必要で、協議に応じないことは、公正取引委員会の取締りの対象となります。委託事業者側には、価格交渉に応じた経緯を明確に記録し、管理してゆくことが今後必要です。
また、新たに法定された禁止事項の2つ目として、手形払い等の禁止があります。これは、中小受託事業者が確実に支払期日までに代金相当額を得ることができるよう、手形払いが禁止になりました。また、電子記録債権やファクタリングなど、支払期日までに中小受託事業者が手数料を差し引かない「満額」の現金を得ることが困難な支払手段も併せて禁止となります。未だ手形払いを行っている企業は、支払方法を現金(銀行振込)または手数料負担のない電子決済へ移行させる必要があります。
中澤 佑一
なかざわ・ゆういち/東京学芸大学環境教育課程文化財科学専攻卒業。 上智大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了。2010 年弁護士登録。2011 年戸田総合法律事務所設立。 埼玉弁護士会所属。著書に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル』(単著、中央経済社)、 『「ブラック企業」と呼ばせない! 労務管理・風評対策Q&A』(編著、中央経済社)など。
