開業届の他にすることは?個人事業主が開業する際の注意点

開業届の他にすることは?個人事業主が開業する際の注意点

個人事業主の開業というと、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書(通称:開業届)」を提出することが主な手続きと思われがちです。

そして、開業届は、特に難しいものではないため、個人事業主の方が自分で提出することも多いです。税理士でも個人事業主の開業届の作成をメインの仕事にする方は少ないでしょう。

しかし、個人事業主の開業では、税務や会計面から様々な事項を考慮する必要があり、税理士や会計士の関与が必要になることもあります。

この記事では、個人事業主の開業の流れ、個人事業主の開業で必要な手続き、個人事業主の税務・会計のポイントの3つについておさらいします。

目次

個人事業主の開業の流れ

個人事業は、会社設立と違い、思い立ったら今日からでも始めることができます。手軽に始められるだけに、無計画に始めてしまう方も少なくありません。

税理士や会計士としては、そうした方々に、個人事業の開業にも手順があることを示すことが求められます。

事業計画書を作成する

事業計画書とは、どのような事業を行うのか、誰に対してどのような商品やサービスを提供するのか、資金をどのように調達するのか、その事業による収益をどの程度見込んでいるのか? といったことを具体的にまとめたものです。

事業計画書を作成する意義は3つあります。

  • 事業内容を明確にする。
  • 事業として成り立つのかどうか検討する。
  • 融資を受けられるようにする。

思いつきで事業を始めようとしている方の中には、いざ、事業計画書を書くと具体性が乏しいことも少なくありません。

この時点で事業計画書をしっかり作成できるかどうかが、個人事業成功の第一歩と言えます。

資金調達を行う

事業計画書ができたら具体的な資金調達を開始します。資金調達の方法としては、主に次の4つの方法があります。

  • 個人事業主自身が用意する
  • 日本政策金融公庫から借り入れする
  • 銀行など民間の金融機関から借り入れする
  • 補助金や助成金を取得する

事業規模が小さい場合は個人事業主が貯めてきた預貯金などから出資することも可能ですが、事業の拡大を急ぐなら、金融機関などから借り入れることがレバレッジ効果が生じやすいと言えます。

ただ個人事業主の方が、いきなり民間の金融機関から融資を受けることは難しいのが実情なので、まずは、日本政策金融公庫からの借り入れを目指すのが現実的な選択肢になります。

そして、日本政策金融公庫から借り入れする際には、詳細な事業計画書を用意することがポイントになります。税理士や会計士はこの作成をサポートする形で関与できます。

事務所や設備や備品、商品や原料等を用意する

事業に必要な事務所や設備や備品、商品や原料等を用意します。個人事業主でも事務所の賃貸借契約を結ぶことができます。不動産会社に確認し、必要な書類を揃えます。

設備や備品は、できるだけ初期費用を抑えることがポイントですが、必要なものはためらわずに購入するよう助言します。商品や原料等をどれだけ購入するのかは、用意した資金の額や今後の事業の見通しなどにより異なります。

税理士や会計士としては、事業計画書をもとに最初に購入すべき分量を具体的にアドバイスできるようにすることが大切です。

開業届や必要な許認可を取得する

個人事業を開始したら、開業の日から1か月以内に個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)を提出します。

また、所得税の青色申告の承認を受けようとする場合は、所得税の青色申告承認申請書を提出します。こちらは、原則として開業の日から2か月以内の提出が求められています。

その他、個人事業でも営業許認可が必要な事業があります。そうした営業許認可については、別途、行政書士等の専門家のサポートを受けるなどして取得を目指します。

社会保険と年金の切り替え

会社員をやめて個人事業主として完全に独立する場合は、社会保険と年金の切り替えが必要になります。健康保険については、国民健康保険か、今までの保険の任意継続のどちらかです。

年金は厚生年金から国民年金に切り替えます。

個人事業主の開業で必要な手続き

個人事業主の開業では、既に紹介したとおり、開業届を始めとして様々な手続きが必要になります。主な手続きは、税務関係、社会保険関係、営業許認可関係に分けられます。

税務関係

税務関係では、主に次のような届出が必要になります。いずれも必要に応じての提出になるため、個人事業主の業態に合わせて、必要な手続きを案内しましょう。

  • 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)
  • 所得税の青色申告承認申請書
  • 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書  
  • 所得税の棚卸資産の評価方法の届出書
  • 所得税の減価償却資産の償却方法の届出書
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書  
  • 預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書
  • 国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書
  • 消費税課税事業者選択届出書
  • 適格請求書発行事業者の登録申請書
  • 消費税簡易課税制度選択届出書

参考:開業する場合 | 国税庁
参考:A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出 | 国税庁

社会保険関係

社会保険関係の手続きは、個人事業主が会社員などをやめて、完全に独立する場合に必要になります。また、従業員を採用した場合にも手続きが必要です。

まず、個人事業主の場合、従業員が5人以上となった場合に原則として、健康保険と厚生年金保険の適用対象になります。また、従業員数にかかわらず従業員を雇用した場合は、労働保険や雇用保険の適用対象となり、届出が必要になります。

個人事業主本人の手続き

  • 健康保険被保険者資格取得届
  • 国民年金被保険者資格取得届

従業員を雇用した場合

  • 労働保険保険関係成立届
  • 労働保険概算保険料申告書
  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届

従業員が5人以上となった場合

  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届出
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
  • 健康保険被扶養者(異動)届

参考:健康保険・厚生年金保険の適用関係届書 | 日本年金機構
参考:労働保険制度 | 厚生労働省
参考:帳票一覧 | ハローワークインターネットサービス

営業許認可関係

営業許認可関係については、業種ごとに異なるため、個人事業主の方が開業しようと考えている事業ごとに必要な営業許認可を案内する必要があります。

営業許認可は、様々な要件を満たさないと取得できないことも多いので早めの対応が必要です。

個人事業主開業時の税務・会計のポイント

個人事業主は、財務基盤が乏しいことが多く、費用を最小限に抑えて、利益を最大化することが成功の秘訣です。そのためには、まず、開業時にかかる経済的な負担を減らすことがポイントになります。

具体的には、どうすべきか、確認しましょう。

補助金や助成金を取得する

個人事業主の資金調達方法は、個人事業主自身が用意するほか、日本政策金融公庫から借り入れが主なものになります。

ただ、個人事業主の手元資金はなるべく残しておくべきですし、借り入れも返済しなければならないため、会社のような多額の資金の借り入れはリスクも大きいです。

そこでもう一つ検討すべきなのが、補助金や助成金を取得することです。補助金や助成金は、返済する必要がないため、開業当初は大変便利な資金調達方法になります。

一定の利用要件を満たす必要があるなど、取得のハードルが高いこともありますが、個人事業主の方が要件を満たせるようでしたら案内するべきです。

青色申告特別控除を利用する

青色申告特別控除を利用することで、所得金額から最大で65万円まで控除することができます。所得税がかかると、健康保険や事業税などの負担も重くなってしまうため、できる限り節税できるようにしたいものです。

なお、青色申告のためには、複式簿記による記帳や電子帳簿保存が必要になるなど、いくつかの要件をクリアしなければなりません。

開業したばかりの個人事業主にとっては、負担が大きいこともあるため、税理士や会計士の方がサポートすべきこともあります。

インボイス制度に対応すべきかどうかの検討

新規開業した個人事業主の場合、消費税については原則として免税事業者になります。

ただ、取引先に法人が多い場合はインボイスへの対応が求められ、適格請求書発行事業者の登録が必要になることもあります。この場合、登録を受けた日から消費税の課税事業者となるため消費税の納税が必要になります。

個人事業主の状況に応じて、登録すべきかどうか適切なアドバイスをしましょう。また、個人事業主の方がインボイス登録した場合は、売上税額の20%のみ納税すればよいという2割特例を利用できることもあります。

参考:D1-64 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)| 国税庁
参考:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要 | 国税庁

まとめ

個人事業主の開業の流れ、個人事業主の開業で必要な手続き、個人事業主の税務・会計のポイントについて確認しました。個人事業主の方は、自分の事業に集中していて、税務や会計までは頭が回らないこともあります。

このような場合は、税理士や会計士の方がサポートすることが大切です。顧問先の個人事業主にアドバイスする際の参考にしてください。

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