タンス預金は申告されているのか<今月の気になる税務トピック Vol.42①>

『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.146(2025.12)に掲載されたものです。


白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生

奈良市に住む不動産会社役員の兄妹が、亡くなった母の現金10億円を自宅で保管し相続税を脱税したという報道があった(10月27日 毎日新聞「10億円自宅保管、遺産を脱税容疑 会社役員2人告発」ほか)。誰の判断で実行されたのだろうか。

被相続人は生前に現金での保管にこだわったらしいが、親子の間で脱税の流れも出来ていたのだろうか。定期預金に1億円を預けても昨年まで金利は数千円。この親子でなくても、相続税を逃れるために、銀行に預けるよりタンス預金にするほうが良いとの誘因になる。実際、タンス預金は50~60兆円という推計があるくらいだ。

相続税申告での預金総額は8兆円ほど、修正申告における預金の申告漏れは1,200億円ほど。ほとんどのタンス預金が指摘されないままだと思わざるを得ない。ゼロ金利という経済政策が、貨幣を循環させない、見えない資産を増殖させている。ようやく預金金利が上昇し始めたとはいえ、物価の上昇率には追い付いておらず預金の目減り状態は解消されない。まだまだタンス預金が動き出すことはないだろう。

白井 一馬

しらい・かずま/石川公認会計士事務所、 税理士法人ゆびすいを経て独立。『顧問税理士のための相続・事業承継スキーム発想のアイデア60』 『一般社団法人一般財団法人信託の活用と課税関係』『一般社団法人・信託活用ハンドブック』ほか 著書多数。

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