AIで破壊的イノベーションを 税理士の常識を打ち破る「法人経済圏」構想

ソルビス税理士法人 代表 境 裕介

創業間もないながら、AIによる革新的な効率化と、大手金融機関・BIG4出身という異色の専門性を武器に、税理士業界で急速に存在感を高めるソルビス税理士法人。特に、月額980円という「超低価格」を実現したAI税務顧問サービス「みんなの税務顧問」は、これまで税理士を雇えなかった層をターゲットとする斬新な戦略として注目を集めている。代表の境裕介氏に、同法人の強み、革新的なサービス「みんなの税務顧問」の仕組みと戦略、そしてその先に見据える壮大な「法人経済圏」構想について詳しく話を伺った。

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まず、ソルビス税理士法人の特徴や強みについてお聞かせください。

私たちの強みは3つあります。1つ目は、金融や財務支援です。コアメンバーである私、副代表の甲斐はBIG4の税理士法人出身であると同時に、金融機関での実務経験も持っています。私は三菱UFJ銀行で4年間の勤務経験がありますし、副代表の甲斐は野村證券のプライベートバンキング部門でトッププレイヤーでした。その他にもメガバンク出身のスタッフが在籍しています。BIG4出身者は税務の専門性は高いものの、一般的に金融実務の経験がないケースがほとんどです。反対に、金融機関出身者は金融実務には強いが、高度な税務知識に欠ける。この二つを兼ね備えたメンバーが揃っているというのが、大きな強みです。財務支援に強みを持つ税理士法人でも、ここまでメンバーが揃っている事務所はそうないでしょう。日本トップクラスの布陣だと自負しています。

2つ目の強みは、高度な税務知識です。BIG4出身だからこそ、難しい税務の論点についても、全員若いながらも相当な専門性を持っています。そして3つ目は、AI活用を推進するAI専属のメンバーがいることです。現在、「AI×税務・会計」の分野には既にパイオニアとして活躍されている方がいらっしゃいますが、私たちはそのトップランナーを目指して頑張っており、SNS等を通じて、この分野で日本一有名になることを目指しています。例えば先日、Xで「AIにレシートを読み取らせ、自動で仕訳をしてもらう動画」を投稿したのですが、これが40万インプレッションを記録しました。ライバルも強力ですが、インフルエンサーの方々とも提携しながら広く活動しており、確かな手応えを感じています。

サービス提供について大事にされていることを教えてください。

全てのお客様に対して必ず月一回以上は接点を持ち、最近の状況をお伺いしたり、税務会計に限らない幅広いご相談をお受けすることです。お客様の課題に対して丁寧に対応することで、顧客満足度が高いという点も、私たちの一つの特徴だと考えています。創業から一年が経ちましたが、とてもありがたいことに現時点での解約率はゼロです。廃業による契約終了はありましたが、それ以外での解約はありません。お客様との密なコミュニケーション、「ウェットな対応」を行っていることが数字として表れていると考えています。


銀行員の眼が見抜く「融資の作法」

金融機関出身という強みは、具体的にどう活きているのでしょうか?

サービスメニューに目を向ければ、他の事務所と比べて特段革新的な何かを提供しているわけではなく、通常の税務サービス、必要に応じた資金調達支援、補助金や保険といった一般的なサービスを提供しています。ただし、税理士は税務申告書や会計帳簿を作成するプロフェッショナルではありますが、ただ作成すれば良いというものではなく、銀行からの評価や対外的な見え方というものがあります。例えば、役員貸付金が残っていると銀行からの評価は下がってしまいますが、こういった点は、銀行出身でない税理士の先生方はあまりご存じでないことが多い。ですから私たちは、「銀行から見て融資しやすい財務諸表を作成していきましょう」というアドバイスを、顧問業務の範囲内で常に行っています。また、さらに踏み込んで「もっとこのようにされてはいかがでしょうか」と経営面での助言も積極的に行っており、事業そのものについても意見を述べさせていただいています。コンサルティングそのもの、と言っても良いかもしれません。冒頭でお話しした通り革新的なサービスを提供しているわけではありませんが、各サービスの深度を非常に深くしているというのが特徴だと思います。


人脈が拓いた、スタートアップの快進撃

設立から約1年ですが、どのようにして顧客を開拓されてきたのでしょうか?

現在は、個人事業主から東証プライム上場企業まで、幅広い顧客を獲得しています。創業初期から大口顧客を獲得できた最大の要因は、強固な人脈とコネクションです。関西圏では、私が三菱UFJ銀行の営業本部時代に上場企業を担当していたパイプがありますし、東京圏では、副代表が野村證券のプライベートバンキング部門出身で、そこでのコネクションがあります。金融業界で築いた人的ネットワークを活かしながら、多方面に営業展開してきたことが良い結果につながっています。


月額980円─超低価格戦略への挑戦

ソルビスでは「みんなの税務顧問」という名称で税務サービスを提供されていますね。
これについて詳しく教えてください。

一般的な会計事務所が提供するサービスと大きくは変わりません。税務相談、記帳代行、申告書作成などの顧問サービスが含まれています。ただ、価格設定はかなり野心的で、顧問料のボトムは月額980円という超低価格に設定しています。記帳代行や申告などはオプションで別途報酬が発生するものの、これらを含めても年間10万円程度。一般的な事務所と比較しても圧倒的な低価格を実現しています。

月額980円ですか。
従来の税理士報酬が最低でも年間30万円程度だと考えると、まさに価格破壊ですね。
どうやってこの価格を実現しているのでしょうか?

税務相談や内部業務をAIで自動化・効率化し、コストを最小限に抑える設計にしています。お客様は指定されたGoogleドライブのフォルダに領収書・レシートの画像を保存するだけで、データや数字の入力は不要です。AI-OCRが画像を読み取り、自動で仕訳を行います。こうした自動化により、スタッフ1人当たりの担当者数は100社程度を目指しています。従来の会計事務所では30〜50社程度ですから、圧倒的な高効率化を実現し、低単価でも採算が合うように設計しています。将来的には最大200社程度まで増やしたいですね。

このサービスは、どのような層をターゲットにされているのでしょうか。

ターゲット層は、年商1,000万円以下の小規模事業者に限定しています。この層は日本全国で約140万社あると推計していますが、税理士の顧問報酬は高額ですから、なかなか税理士を雇うことができません。一方でこの層は、「どうせ顧問先になってくれない」と税理士側から敬遠されていた層でもあり、ある意味では未開拓の領域だといえます。従来、会計事務所にとって「採算が合わない」とみなされていた市場である一方、事業者にとって税務顧問は「手が届かない」サービスでした。このような構造的なミスマッチを、AIの力で解消するのが「みんなの税務顧問」というサービスです。顧客が経理業務に費やしていた時間を引き受け、本業に集中できる時間を提供することで、事業の成長をサポートしたい。安価で質の高いサービスを普及させ、日本の税務の「インフラ」を構築することを目指しています。税務顧問を、水道や電気のような社会インフラにする。これが最終的な目標です。



AIに任せることで品質面の不安はないのでしょうか?

仕訳に関しては、あるAIが作業したものを、別のAIにチェックさせることで精度を確保しています。AIによる二重三重チェックです。人間の眼が見落とすパターンも、異なるアルゴリズムであれば検知できる可能性があります。ただし、申告書など税額に直結する、絶対にミスが許されない部分は、現時点では人間の目によるチェックを必須としています。いずれは人の関与を完全になくしたいと考えていますが、現時点ではまだそのフェーズではありません。効率化を追求しながらも、リスク管理は決して妥協しないという方針です。


「スタッフガチャ」をAIで解消

AI活用で目指すのは、効率化だけではないということですね。

その通りです。例えば、担当するスタッフによってサービスの質が変わる、いわゆる「スタッフガチャ」をゼロにしたいですね。AIは標準化にも大きな力を発揮してくれるので、AIドリブンな仕組みをベースに置くことで、誰が担当しても質の高いサービスが提供できる状態を目指しています。どの会計事務所でもよく見られる課題ですが、優秀な担当者に当たれば満足度は高い一方で、経験の浅いスタッフの場合は不満が募ることがある。この属人性を、AIの力を借りて均質化します。これは「みんなの税務顧問」の根幹となっている考え方です。

このようにAI活用で効率化、均質化を進める一方で、やはり人間が与える「安心感」は不可欠だと考えています。そのため、全クライアントに対し週に一度、補助金情報などを自動送信し、接触頻度を高めています。「見守られている」という感覚を持っていただくことが重要です。AIと人間の役割分担について、その最適解を探り続けているところです。

AIの発展によって、税理士の仕事はどう変わっていくとお考えですか?

税理士の業務自体は、AIによって代替される部分がかなり多いと考えています。そういう意味では、業務がなくなると周囲が指摘しているのは、ある意味事実かもしれません。ただ、税理士の業務がなくなったとしても、税理士としての仕事がなくなるわけではないと思っています。どれだけAIに代替されたとしても、やはり税理士という専門家の意見を求めたい、専門家がついているという安心感を求める方々は、世の中に多くいらっしゃいます。どれだけAIで対応できるようになっても、特に日本人は資格や学歴といった肩書きを非常に重視する傾向があります。ですから、あくまで「税理士が判断を後押ししている」「AIの判断が正しいと税理士が保証している」という、そういう安心感を与える存在として、知識を売るのではなく、安心感を売る存在になっていくのではないかと個人的には考えています。税理士という存在自体はまだまだ存続しますし、その安心感を与えるための非言語能力を、今後ますます磨いていく必要があると考えています。コミュニケーションや共感、信頼構築。これらはAIには困難な、人間ならではの領域です。


15年前から温めた構想

今後のソルビス税理士法人の展望について教えてください。

事業の二本柱は、「みんなの税務顧問」と「高付加価値サービス」です。「みんなの税務顧問」では、AIによる徹底的な自動化を実現。低コストかつ均質なサービスを大量に提供します。完全な慈善活動にはならないように、業務の効率化を徹底し、従業員の数を増やすことなく、少ない人数で大きな収益を確保したいと考えています。将来的には、現在の年商1,000万円以下という制限を外していくことも考えています。一方の高付加価値サービスでは、優秀なプロフェッショナル人材を積極的に採用し、大企業向けの高度な財務・経営コンサルティングに特化し、事業の質を担保します。この2本柱をしっかりと立たせることにより、数値目標としては「5年で売上10億円」を目指しています。

その目標に向けて、今後どのような取り組みを考えていらっしゃいますか?

サービスをもっともっと強化しなければなりません。申告書作成で終わる「受動的」なサービスから脱却し、「能動的」なサービスへと進化させたいと思っています。その一つとして、既存の会計データをAIが分析し、クライアントの事業に最適化された「パーソナライズされた提案レポート」を自動作成・送信する仕組みを構築します。資金繰りシミュレーション、銀行格付けの予測、節税のご提案──例えば役員報酬シミュレーション、減価償却のアドバイスなどです。これらは従来、高額な顧問料を支払う顧客にのみ提供されてきたサービスですが、それをAIで自動化し、すべての顧客に提供します。お客様が気づいていない課題を、AIが先回りして提案する。そのような関係性を構築したいと考えています。そして、最終的には、中小企業の「あらゆる経済活動」を総合的に支援できる「法人経済圏」を構築したいと考えています。個人向けの「楽天経済圏」の法人版をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。経済圏を構成する要素は、税理士、コンサルティング、社労士、不動産、M&Aなど、企業課題を取り巻くものだけでなく、飲食・バーといったビジネス交流の場も含まれます。法人の経済活動を考えた場合、接待や夜の食事会で親睦を深め、そこからビジネスが生まれるケースは非常に多くありますので、その場を提供することも極めて重要だと考えています。同じ法人経済圏内で事業を行っている仲間であれば、優遇価格で利用できるようにする。そのような優遇を提供することで、経済圏内の企業同士のビジネス創出と成長を促進したいと考えています。

この構想は、いつ頃から考えていらっしゃったのですか?

もう15年近く、銀行時代からです。銀行員時代もお客様にさまざまなご提案をしてきたのですが、その際に「まず税理士に相談してみます」とおっしゃる方が相当数いらっしゃいました。税理士というのは、お客様から信頼される本当に強いポジションで、しかも、銀行の営業担当者が喉から手が出るほど欲しい財務情報を保有している。日本のあらゆる職業の中で、信頼と情報をどちらも持っているのは税理士だけなのです。であれば、税理士を起点にして様々なことを展開すれば、何でもできるのではないでしょうか。

最後に、ソルビスとして世の中にどのような価値を提供していきたいとお考えですか?

我々が提供したい価値は、お客様、法人・個人を問わず、潜在的でまだ顕在化していないものも含めて、あらゆる課題を解決することです。幅広い領域から、税務だけでなく、先ほど申し上げた法人経済圏の話にもつながりますが、あらゆる課題を解決し、お客様の事業の成長を支援する。これを提供できることが、我々が果たすべき価値提供だと考えています。そのために現在、ソルビスや法人経済圏、みんなの税務顧問といった様々な取り組みを行っています。我々が最も重視しているのは、価値を提供し、課題を解決し、成長をサポートすることです。

業界にイノベーションを起こそうとする境先生の想いや意気込みを感じることができました、
これからの活動にもぜひ注目させていただきます。
本日は誠にありがとうございました。


プロフィール
ソルビス税理士法人 代表 境 裕介

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