“選ばれる専門家集団”をつくる
アテナ税理士法人が挑む、信頼を軸にした組織づくり Vol.1

アテナ税理士法人 代表社員・公認会計士・税理士 池田 祐香
会計業界をカッコよくという
想いで始まった挑戦
本日はよろしくお願いします。
まずは、アテナ税理士法人が誕生した経緯から教えてください。
池田:私は個人事務所として約11年活動してきました。ご紹介やホームページ経由で信頼いただけるお客様に支えられ、地道に実績を積んできたと思っています。その中で、いつか法人化したいという思いがありました。個人の頑張りに依存するのではなく、チームとして品質を安定させ、再現性ある支援ができる体制を整えたかったからです。
税務は正しく処理するだけでは終わりません。経営者が直面する選択は、税金・資金繰り・人・投資など複数の論点が絡みます。

だからこそ、数字を根拠に意思決定を支えられる体制が必要だと感じていました。
監査法人時代の同期だった杉田とSNSをきっかけに再びつながり、一緒にアテナとして挑戦しようという話になり、2024年5月1日にアテナ税理士法人を設立しました。
杉田先生は、どのような立場で関わっているのでしょうか。
杉田:私はアテナ税理士法人のパートナーとして関わっています。もともとは公認会計士として登録し、KPMGで勤務していましたが、海外に移るタイミングで、公認会計士登録はいったん区切りをつけ、現在の登録資格は税理士です。

池田から法人化の話を聞いた当時は、二度目の海外生活が始まるタイミングでもあり、また日本の仕事にここまで深く関わるとは思っていませんでした。
ただ、池田の「信頼を組織として積み上げたい」という考えに共感し、その実現のために私の経験が生かせるのであればぜひという想いで、パートナーとして関わることを決めました。
アテナでは、業務の標準化や運用整備、品質管理といった「土台づくり」を中心に担当しています。
社名に「アテナ」と付けた理由を教えてください。
池田:ギリシャ神話の知恵の女神アテナのイメージに重ね、知恵を授け、顧客に寄り添い、守る存在でありたいという想いを込めました。
税務は、正しさだけでなく「安心して相談できる」ことが本質的な価値になる場面が多い。アテナという名前は、その姿勢を象徴してくれていると思います。
また、法人としての旗印ができることで、スタッフにとっても「私たちが何を大切にしている組織なのか」が伝わりやすくなります。社名は文化づくりの起点でもあると感じています。
お二人には「会計業界をカッコよくしたい」という想いがあると伺いました。
きっかけは何だったのでしょうか。
池田:中学2年生の娘が「公認会計士を目指したい」と言ってくれたことが大きなきっかけでした。この仕事を、次世代に誇れる仕事として渡したい。そう思ったときに、私自身も発信や活動の幅を広げる覚悟が決まりました。
税務・会計の仕事は、経営者が誰にも言えない不安や迷いを抱えているときに、数字と言葉の両方で支える仕事です。だからこそ、誠実であること、約束を守ること、判断の根拠を丁寧に示すこと。そうした積み重ねが信頼になり、その信頼が経営者の前進を支えると考えています。
杉田:私も同じです。税務・会計は、正確に処理するだけではなく、経営者の意思決定の質とスピードを上げる役割を担えます。価値が見えにくいからこそ、私たち自身が誇りを持ち、言語化し、届けていきたいと思っています。
池田:そういう想いから、会計士協会での広報活動や、子ども向けの会計教育、学生向けの制度説明、女性会計人のキャリア支援などにも関わっています。「会計って面白い」「自分もやってみたい」と思える入口を、増やしていきたいですね。

信頼をつくるために、必ず守っていること
アテナ税理士法人が大切にしている「信頼」とは、どのようなものですか?
池田:私たちが考える信頼は、「任せて良かった」と思っていただける安心感の総和です。税務や会計は専門性が高い分、結果だけ見ても良し悪しが分かりづらい。だからこそ、安心感の設計が重要になります。
具体的には、大きく分けて次の3つを必ず守るようにしています。
1つ目は守秘と情報管理です。経営者が安心して本音を話せる前提がなければ、良い支援はできません。資料の取り扱い、共有方法、アクセス権限など、基本を徹底します。

2つ目は、結論だけではなく判断の根拠を言語化して共有することです。税務は正解が一つではない場面もあります。選択肢ごとのメリット・デメリット、リスク、税務上の論点を整理し、意思決定を支えます。「こうした方がいい」ではなく、「なぜそう言えるのか」をセットで示す。これが信頼の土台だと思っています。
3つ目は、早い段階で論点を共有することです。決算や申告の直前に初めて論点が出ると、判断の選択肢が狭まってしまう。だからこそ、見落としが起きやすいポイントほど先に話題にし、余裕を持って準備できる状態をつくります。
杉田:加えて、属人化しないことも重要です。担当者が変わっても品質が揺らがないように、チェックリストやテンプレート、記録の残し方を整備しています。
「誰が担当でも一定品質」「判断に迷ったときの基準がある」「過去の経緯が追える」。この3つが揃うと、お客様の不安が減り、結果的に信頼が増します。
スピード感と正確性は、両立が難しいテーマでもあります。どう向き合っていますか?
池田:早い=雑には絶対にしたくありません。むしろ、スピードを上げるときほど、型が必要です。
例えば、回答が難しい論点ほど、結論を急いで断定せず、「確認が必要な点」「追加で必要な資料」「暫定の見立て」「判断の期限」を分けてお伝えします。途中経過でも情報を共有し、先に不安を取り除く。これが、結果的にスピードにもつながります。
杉田:品質側の立場としては、判断の前提を崩さない運用を徹底しています。資料の受領から作業、レビューまでの流れを見える化し、どこで誰が確認するかを明確にする。小さな積み重ねですが、こうした設計がミスの防止と対応速度の両方に効いてきます。
信頼を軸にした組織づくり:
役割分担と品質の土台
お二人の役割分担について教えてください。
杉田:池田は推進力が強く、顧客との関係づくりや提案、意思決定を前に進めるのが得意です。私はパートナーとして、業務の標準化、品質管理、運用ルールの整備など、組織としての再現性を高める側を担っています。
池田:私はスピードを優先して動ける一方で、伝達や設計が追いつかないときがある。杉田には、推進力を活かしながら全体像と優先順位を整え、品質がブレない形にしてもらっています。アテナが目指す信頼は、個人の頑張りだけでは守れません。組織として守れる形にすることが大切です。

品質を「仕組み」で担保するうえで、今まさに強化していることは何でしょうか。
杉田:一つは、業務の標準化です。どの案件で、何を確認し、どのタイミングで誰にエスカレーションするか。判断が必要な場面の「判断基準」を整理しています。
もう一つは、ナレッジの蓄積です。同じ論点が出たときに、ゼロから考え直すのではなく、過去の検討や結論、注意点をすぐ参照できる状態にする。これは、品質だけでなくスピードにも直結します。
池田:お客様にとっては、私たちの内部プロセスが見えないからこそ、「安心できるか」がすべてです。だから、こちらの都合で曖昧にせず、必要な論点は早めに共有し、判断材料をそろえていく。そこを丁寧にやり切ることが、結果として信頼につながると思っています。
杉田:仕組みづくりで意識しているのは、「忙しいときに崩れない運用」です。
人は忙しいほど例外対応が増え、判断が早くなり、確認が薄くなりがちです。だから、例外のときほど確認が増えるように、チェック項目やレビューのルートを設計しています。平時だけでなく、繁忙期でバタバタしている時期にも耐える仕組みが信頼を守ります。
組織の課題に向き合い、信頼を強くする
組織運営で大変だったこと、そこからの学びはありますか?
池田:直近で、入社間もないスタッフの突然の退職がありました。十分な引き継ぎができないままの出来事で、私自身も大きなショックを受けました。
ただ、その経験を通じて痛感したのは、価値観や期待役割を日々のコミュニケーションで丁寧に共有し続けることの重要性です。特に当時は、教育やフォローが手薄になっていた時期がありました。私たちが目指す姿を言葉にして、同じゴールをむかう状態をつくる。信頼は、顧客だけでなくチームの中でも同じように必要だと実感しました。「良かれと思って任せたこと」が、相手にとっては「放置」に見えてしまうこともある。そこは強く反省しました。
杉田:この業界は教育体制が課題になりやすいです。だからこそ、属人的に頑張るのではなく、仕組みで支える方向へ振り切る必要があります。誰が担当しても一定の品質が出る。判断が迷ったときに立ち戻れる基準がある。そうした土台が、顧客への信頼にも直結します。
業務の適正化と、信頼を育てる場づくり
その後、どのように体制を整えていったのでしょうか。
池田:顧問料や提供範囲、運用フローを見直し、無理のある部分を適正化しました。売上を維持しながら業務負荷を改善できたのは大きかったです。ただ、ここで終わりではなく、再発防止のために組織の土台づくりへ優先順位を置くことを決めました。守るべき品質がある以上、「受けられるから受ける」ではなく、「約束できる品質を守れるか」で判断する。その姿勢に立ち返った形です。
具体的に取り組んでいることはありますか?
池田:週次ミーティングを導入しました。困りごと、判断が必要な論点、改善提案を早い段階で共有し、抱え込まない運用にしています。社内で情報が滞ると、顧客対応も遅れます。だからこそ、チームとしての見通しを揃えることを大事にしています。
杉田:風通しを良くするための会議ではなく、プロとして最高のサービス提供をするための会議にしたいと思っています。基準の共有、判断の根拠、チェックポイントを整え、品質を安定させる。それが顧客からの安心に直結します。
池田:もう一つ意識しているのは、「見通しの先出し」です。
追加で発生しうる作業や必要資料、スケジュール感を、できるだけ早い段階でお伝えする。あとから想定外が出ると、不安や不信につながってしまうからです。約束できる範囲を明確にし、判断が必要な点は早めに一緒に決める。この積み重ねが、信頼の体験になると思っています。
顧客とのコミュニケーションで、特に意識していることはありますか?
池田:税務は専門用語が多いので、相手の理解度に合わせて言葉を変えることを意識しています。
「何が論点か」「何を決めれば前に進むか」をシンプルに整理し、必要な判断材料をそろえる。経営者の時間は限られているので、結論と理由を短く、でも根拠は薄くしない。ここは常に意識しています。
また、連絡の早さはスピードのためではなく、不安を増やさないためだと考えています。すぐに結論が出せない場合でも、確認中であること、いつ頃目安が立つか、追加で必要な情報は何かを先に共有する。途中経過を出すことで、安心感が生まれます。
杉田:情報共有の質も信頼に直結します。例えば、やり取りが担当者間で止まらないように、重要な論点や判断は記録に残し、チームで参照できる形にしておく。お客様にとって「担当が変わると話が戻る」という体験はストレスになります。属人化を減らすことで、そのストレスを減らしたいと思っています。
挑戦は続く:アカデミックと実務で磨く未来への種まき
ここまで「信頼」を軸にした体制づくりについて伺いました。
お二人は、今後どのような挑戦を続けていきたいと考えていますか?

池田:信頼を積み上げ続けるためには、現場の実務だけでなく、知識のアップデートと視野の拡張が欠かせないと感じています。
実務は目の前の課題を解決する力になりますが、経営環境は常に変わる。制度改正や経済の動き、働き方の変化など、前提が動く中で、経営者の意思決定を支える専門家として、私たちも学び続ける必要があります。その学びは、単に資格や知識のためではなく、顧客の意思決定に「根拠」と「見通し」を提供するためのものです。今後も、実務で得た感覚を言語化し、チームに蓄積し、より良い支援として還元していきたいと思います。
杉田:私は、全体の品質を安定させるための仕組みづくりを進めつつ、必要な情報を整理して、判断に迷ったときに立ち戻れる基準を増やしたいと思っています。池田本人は興味の赴くままに活動しているだけかもしれませんが、学びを止めない姿勢が、結果的にアテナの品質や信頼につながっていくと感じています。
また、実務面では他のスタッフからサポートを受けている部分もあり、その支えがあるからこそ、品質や仕組みづくりに集中できています。目の前の業務を回すだけでなく、「未来に向けた種まき」を続けていきたいです。
学びと実務が循環していくイメージですね。
池田:はい。学びは、現場で使えて初めて価値になります。
一方で、現場の経験は、言語化して共有して初めて「組織の力」になります。そこを丁寧に回していくことが、信頼の土台を強くすると思っています。
挑戦を可能にする柔軟性とキャリア継続
杉田先生は、働き方の変化についてどのように感じていますか?
杉田:以前は、働く場所や時間に制約があると、キャリアを続けること自体が難しくなる場面がありました。特にライフイベントを考えると、当時は「続けたくても続けられない」ことが現実としてありました。
最初の海外帯同は、30歳目前で出産を視野に入れていたため、仕事を諦めるしか選択肢が無いという感覚があったのは事実です。でも今は、どこにいても組織に関わりながら役割を果たし、キャリアを続けられる形が現実になってきました。ただし、柔軟な働き方は「自由」だけでは成り立ちません。自由度が高いほど、基準やプロセス、情報共有の設計が必要になります。場所が違っても品質が揺れないようにする。誰が見ても同じ判断ができるようにする。そのための運用整備が、結果的に顧客への安心にもつながると感じています。
池田:私も同感です。働き方が柔軟になること自体が目的ではなく、結果として「顧客に対する約束を守る」ことができるかが大切です。柔軟性は、仕組みと信頼の上に乗るもの。アテナとしては、働く側にとっても、顧客にとっても、安心して任せられる体制を整えていきたいです。
アテナが目指す「選ばれる専門家集団」とは
今後のアテナ税理士法人が目指す姿を教えてください。
池田:私たちが目指すのは、規模の拡大そのものではありません。一社一社と真摯に向き合い、経営者の意思決定を支え、「アテナだから任せたい」と言っていただける信頼を積み上げる専門家集団です。そのために、仕組みで品質を担保し、チームとして誇りを持って働ける組織をつくっていきます。信頼を守るために、守秘、根拠、見通し、再現性。この4つの柱を組織のDNAとして愚直に積み上げ続けたいと思います。
杉田:信頼は短期間でつくれるものではありません。小さな約束を守り、誠実に積み上げること。その積み重ねが顧客にもチームにも返ってくる循環を、組織として強くしていきたいと思います。
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