【実務担当者向け】年末調整の控除項目一覧とチェックリスト

【実務担当者向け】年末調整の控除項目一覧とチェックリスト

複雑な控除項目の中でも、実務上のミスが許されないのが、所得控除と税額控除の処理です。改正が多いため、毎年の情報アップデートも必要です。

従業員から提出された申告書や証明書を処理する時に、控除の要件や、所得に対する適用の可否を一つひとつ確認していては、繁忙期を乗り切ることはできません。

この記事では、現在の年末調整で適用される控除項目を網羅した一覧と、確認すべき重要チェックポイントをまとめています。

控除項目や適用条件など、改めて確認したい方は記事内容をご確認ください。

目次

年末調整における控除の全体像

年末調整で実施される控除の計算やその全体像について、2つのポイントにて説明します。

  • 控除の分類と役割
  • 年末調整で処理する範囲

控除の分類と役割

年末調整で扱う控除には、大きく分けて2つの種類があります。

所得控除

所得控除は、家族構成、病気、保険加入など、納税者の個人的な事情を考慮し、課税所得を減らすために設けられたものです。課税所得が減ることで、適用される税率をかける前の金額が小さくなります。

具体的な所得控除には、基礎控除や配偶者控除、生命保険控除などが挙げられます。

税額控除

すでに計算された税金の額(所得税額)から、直接金額を差し引くためのものです。税額控除は、税金そのものをダイレクトに減らすことから、節税効果がとても高いです。

税額控除の代表的なものとして、住宅ローン控除が挙げられます。

年末調整で処理する範囲

年末調整は、主に以下の控除項目を処理し、従業員が納めすぎた所得税を精算する手続きです。扱う所得控除と税額控除を一覧表にまとめました。

所得控除基礎控除、配偶者控除・特別控除、扶養控除、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、寡婦控除・ひとり親控除、勤労学生控除
税額控除2年目以降の住宅借入金等特別控除

年末調整では、医療費控除や雑損控除、ふるさと納税などの寄付金控除は処理できません。控除を受けるには、従業員が自分で確定申告を行う必要があります。

所得控除の一覧表とチェックポイント

年末調整で扱う主な所得控除と実務上のチェックポイントについて、一覧表にまとめました。

スクロールしてご覧ください→
控除名概要控除額提出書類実務上のチェックポイント
基礎控除全員に適用される控除所得に応じて48万円まで給与支払書で計算されるため不要従業員本人の合計所得金額をチェック。2,400万円超で控除額が減少
配偶者控除 /
配偶者特別控除
配偶者の所得に応じた控除細かな所得段階に応じた額「基礎控除申告書」と一体となっている申告書配偶者の合計所得金額(133万円以下)と従業員本人の合計所得金額を確実にチェック
扶養控除16歳以上の扶養親族がいる場合の控除一般:38万円
特定:63万円
申告書12/31時点の年齢と所得要件(48万円以下)をチェック。住民票記載との照合も行う
生命保険料控除生命保険介護医療保険個人年金保険料新旧制度の合計で最大12万円の控除生命保険料控除証明書新制度(2012年以降)と旧制度の区別と、それぞれの適用限度額に注意
地震保険料控除地震等損害保険契約の保険料最大5万円地震保険料控除証明書旧長期損害保険との併用や上限額に注意
社会保険料控除従業員本人および生計を一にする親族が支払った金額支払った全額申告書(国民年金・国民健康保険は証明書も必要)国民年金保険料の証明書が添付されているか確認
小規模企業共済等掛金控除iDeCoの掛金支払った掛金の全額払込証明書掛金の年間総額を証明書で確認
寡婦控除 /
ひとり親控除
未婚・離婚・死別による単身者の控除寡婦:27万円
ひとり親:35万円
申告書「事実婚」でないことの確認扶養親族の有無のチェック所得制限(500万円以下)の要件の確認

住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の概要とチェックポイントを解説

年末調整で扱う主な税額控除は、住宅ローン控除です。住宅取得者の金銭的な負担を軽減し、持ち家を促進するために設けられました。複雑で確認事項が多いため、間違いのないように気をつけましょう。

控除額は、年末のローン残高を基に計算された一定割合が、所得税から直接控除されます。期間は最大10年~13年です。

初年度だけは本人による確定申告が必要ですが、2年目以降は、税務署から送付される控除証明書と申告書を提出してもらうことで、会社で年末調整ができるようになります。

頻繁に制度改正されるため、入居年に応じた最新の控除率や期間の確認が必要です。

【経理担当者向け】実務効率化のための書類回収チェックリスト

何かとわかりにくい提出必須の必要書類を、一目でわかるように一覧表にまとめました。

年末調整の手続きをスムーズに進める際に、活用してみてください。

区分書類名チェックポイント
全員必ず提出する書類給与所得者の扶養控除等(異動)申告書記載内容の変更と署名の確認
配偶者など扶養家族がある人給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書3枚綴りの申告書。本人・配偶者それぞれの所得見積額が正しく記載されているか
保険料関係の申告がある人※すべて原本が必要生命保険料控除証明書「新・旧制度」の区分、保険会社の名称、支払金額の確認
地震保険料控除証明書支払金額と契約内容の確認
国民年金保険料等証明書支払済みの国民年金の金額が正しく記載されているか
住宅ローン関連住宅借入金等特別控除申告書去年の分と記載内容に変わりがないか
金融機関発行の年末残高証明書申告書に記載されたローン残高と一致するか
その他前職の源泉徴収票(原本)年の途中で入社した人は必要。支払金額と源泉徴収税額が記載されているか

従業員へ提出を依頼する際の注意ポイント

事前の周知を怠ってしまうと不備による再提出が頻発してしまい、余計に時間がかかってしまいます。

提出書類について、あらかじめ伝えておきたい大切なポイントは次の通りです。

  • 保険料控除証明書や国民年金証明書は原本を提出する
  • 正確な配偶者の合計所得金額を把握しておく
  • 住宅ローン控除の初年度は年末調整で対応できない

保険料控除証明書や国民年金証明書は、所得税法によって原本が必要と定められています。コピーの提出では認められないことを事前に周知しておきましょう。

配偶者控除・特別控除を受けるためには、配偶者の正確な合計所得金額が必要です。会社での住宅ローン控除は2年目から、という決まりも忘れがちなので、初年度は確定申告が必要である旨もしっかり周知しておきましょう。

配偶者控除・特別控除の判定のためのフローチャート

配偶者控除・特別控除が適用されるのか、判断に迷った時に役立つフローチャートを作成しました。

ステップ判定基準YESの場合Noの場合
A:申告者本人の合計所得金額の要件適用1,000万円以下であるか?次のステップBへ控除対象外
B:配偶者が控除対象配偶者の要件適用民法の規定による配偶者生計を同一にしている青色申告者の専業専従者等ではない次のステップCへ控除対象外
C:配偶者の合計所得金額の要件適用48万円以下であるか?
※給与収入のみの場合は103万円以下
配偶者控除 が適用される次のステップDへ
D:配偶者の合計所得金額の要件適用48万円超 133万円以下であるか?
※給与収入のみの場合は103万円超201万円以下
配偶者特別控除が適用される控除対象外

配偶者控除が適用される場合は、申告者本人の合計所得金額に応じて控除額が決定されます。

控除額は次の通りです。

申告者本人の合計所得金額控除額
900万円以下38万円
900万超950万円以下26万円
950万円超1,000万円以下13万円

48万円超133万円以下の要件で配偶者控除が適用される場合は、申告者本人の合計所得金額と、配偶者の合計所得金額の両方によって、細かく控除額が決定されます。申告書(兼基礎控除申告書)裏面の控除額の計算表に基づいて、正確な金額を確認しなければいけません。

実務上の重要なチェックポイント

配偶者控除・特別控除の申告は、年の途中の所得の見積額に基づいて行われます。年末調整で計算する際は、見積額が、実際に確定する所得と大きく乖離していないかチェックしましょう。

最終的な納税額は実際の所得で計算されるため、見積額との剥離が大きい場合は予想外の納税となるケースがあります。

また、配偶者が70歳以上の老人控除対象配偶者に該当する場合、同居の有無で控除額が変わるため注意が必要です。

まとめ

年末調整の控除には、所得控除と税額控除がありますが、特に大変なのが所得控除です。いくつもの控除ごとに適用要件がことなります。どんなに慣れた人でも、すべてを完全に把握するまでには、それなりの時間がかかります。

作業の効率化を図るには、一目でわかるチェックリストやフローチャートを用意しておいた方が良いです。自作で用意するのも良いですが、よろしければ本記事のチェックリストをご活用ください。

大変な年末調整の一助になれば幸いです。

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