お客さま第一と同時に働く人を幸せにする(小宮一慶先生 経営コラムVol.94)

本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.144(2025.10)に掲載されたものです。
株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶 先生
多くの方のおかげで経営コンサルタントとして独立して早いものでもう30年目になります。たくさん会社を見てきましたが、やはり、経営の原理原則をしっかり守っている会社がうまくいっていることを実感しています。どんな時代も原理原則がとても大切なのです。
経営の原理原則の一丁目一番地は、これまでも何度か説明してきましたが、「お客さま第一」です。外部思考かどうかです。
具体的には、お客さまは商品やサービスを買いますから、その商品やサービス、そしてその価格が、本当にお客さま本位になっているかどうかを見るのです。ピーター・ドラッカー先生が「特有の使命を果たす」と言っているのと同じです。もちろん、それを支えるための普段からの言葉遣いや態度もお客さま第一の社風作りには大切です。
そして、それと同時に、働く人が活き活きして幸せかどうかもとても重要です。ドラッカー先生は「仕事を通じて働く人を活かす」とおっしゃっています。
理想の会社は、お客さま第一を実践し、それを通じて働く人が働きがいを感じているのです。違う見方をすると、お客さま第一はやっているものの、働く人が疲弊している会社を時々見かけます。こういう会社は、ベストではないのです。お客さま第一をやっており、お客さまから見て問題がないため業績はそこそこですが、離職率が高いなどの大きな問題があります。離職率を私は良い会社かどうかを見極める大きなポイントにしています。
私は、「良い仕事」として、①お客さまが喜ぶこと、②働く仲間が喜ぶこと、③工夫を挙げています。工夫は、お客さが喜ぶことや働く仲間が喜ぶことをより良く、より早くやることです。それにより、働き甲斐を感じることが大切なのです。また、それが実践されている会社は当然、業績も良いので、働く人の経済的幸せも得られやすくなります。
いずれにしても大切なことは、お客さま第一や良い仕事を通じて、働く人の働きがいや経済的幸せを同時に実現することなのです。
先日、私の経営者の集大成の『経営者の教科書〔増補改訂版〕』(ダイヤモンド社)を出版しました。15年前に出した『社長の教科書』を8年前に改訂したのが『経営者の教科書』で、おかげさまで、どちらの本もそれぞれ8刷りが出るロングセラーとなっていましたが、この度、大改訂を行いました。ここで述べたような原理原則に基づく経営をどう実践するかを説明しているので、ぜひご一読ください。

小宮 一慶
こみや・かずよし/京都大学法学部卒業。 米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、 日本福祉サービス(現: セントケア)を経て独立。名古屋大学客員教授。 企業規模、業種を超えた「経営の原理原則」をもとに幅広く経営コンサルティング活動を 展開する一方で、年100回以上講演を行っている。 『稲盛和夫の遺した教訓』(致知出版社)など著書は150冊以上で、経済紙等にも連載を抱える。