上流を制するタスキーのDX戦略 真の人手不足解消に効く“パッケージ型BPO”の設計哲学 Vol.2

タスキー税理士法人 代表社員 公認会計士・税理士 菊池 友博

仙台・つくばを拠点に成長を続けるタスキーグループは、税務・労務支援に加え、コンサルティングやBPO、さらに地域に根ざしたまちづくり事業までを展開するユニークな存在だ。最大の特徴は、人手不足の根本解消を狙う「パッケージ型BPO」。DXを単なるツール導入とせず、業務の上流設計から整理することで仕組み化を徹底している。社内でも「箸の上げ下ろしまで」と表現するほどの徹底したルール化を実践し、業務をブレずに進められる効率的な仕組みを整えている。本記事では、タスキー税理士法人代表社員であり、タスキーグループつくばオフィスの所長でもある菊池友博先生に、同社のDX戦略と成長の裏側を聞いた。

今後はスタートアップ・飲食業界支援を強化
「バックオフィスのモデルルーム」構想も

現在の顧客獲得状況を教えてください。

ありがたいことに、仙台やつくばでは地域性や事務所としての特色から、営業活動に力を入れずとも、紹介や問い合わせで顧客を獲得できています。
仙台においては、クラウド会計やBPOを積極的に導入する事務所がまだ少ないため、私たちの取り組み自体が差別化要因となっていますし、つくばには研究学園都市として、大学や研究機関、スタートアップが多く集まっており、新規顧客が獲得できています。
例えば、「社長は代替わりしたけど、税理士先生は先代のままで、ちょっと話しづらい」といったようなところから切り替えのお話をいただくとか、「管理部門の方の定年退職が近いから、その前にブラックボックスを何とかしてほしい」という相談をいただくような形もあります。

今後の顧客開拓に向けて、特に注力している業界や取り組みを教えてください。

ふたつありまして、ひとつはスタートアップ支援の強化です。これまでもスタートアップの顧客は多かったのですが、今年から社内に「スタートアップ支援事業部」を立ち上げ、さらなるサービス拡充に向けて動いています。スタートアップは人的リソースが少なく、当法人の強みであるバックオフィス支援とも相性が良いためです。
つくばに加え仙台でも、大学や自治体と連携し、セミナーやイベントを通じてスタートアップ業界での存在感を高めています。すでに東北大学での講師登壇や仙台市主催イベントへの出展など、積極的に活動中です。

もうひとつは飲食業界です。飲食店は現場優先でバックオフィスの効率化が進んでいないことが多く、提供できる価値も大きいと考えています。既存顧客も抱えていますし、坂東太郎グループの知見を活かしつつ、今後さらに広げていきたい分野です。
その一環として、まちづくり事業も兼ねて、つくば市の研究学園駅近くに「公園併設のベーカリーカフェ」を今冬オープン予定です。

ベーカリーカフェの運営がどのように飲食業界の支援につながるのですか?

このカフェには、タスキーが提唱するバックオフィス業務の「モデルルーム」としての役割を持たせる予定です。レジのシステムや売上のリアルタイム管理など、「タスキーのベストプラクティス」といえるような効率化された仕組みを導入し、顧客が自社での運用を具体的にイメージできるよう、実際に見て回れるツアーを実施します。
タスキーはこのモデルルームを通じて、効率化のノウハウを示し、同様の課題を抱える飲食店の支援につなげたいと考えています。まちづくり事業と会計事務所の事業を連携させ、双方にシナジーを生み出すねらいもあります。


税務・労務にこだわらず
AIが代替するなら次の挑戦へ

昨今の生成AIの活用状況と、「税理士の仕事の多くがAIに代替される」
という言説に対するご見解はいかがでしょうか。

生成AIへの法人としての統一的な取り組みはこれからですが、個人レベルでは一次的な壁打ちや情報整理、スライド作成などに使っています。税務相談についても、一般的な内容であればAIで完結する時代は近いと思います。ただし、個別の事情に応じた応用的な判断やグレーな論点でのリスク判断、「やる・やらない」といった最終的なジャッジは、人だからこそ担える部分です。
とはいえAIの進化は速く、いずれ専門的な判断まで代替される可能性もあるでしょう。だからこそ私たちは学び続け、AIにはできない「根本的な課題解決」という価値を提供していく必要があると考えています。

タスキーグループのビジョンは「LOCALから新たな価値を」だと伺ました。
仮に税務業務の多くがAIに代替されたとしても、
そのビジョンの実現にはまだ幅広い可能性があるように思います。

まさにその通りで、私たちは「地域を元気にしたい」「地域で面白いことをしたい」という思いを軸にしており、税務や労務にこだわっているわけではありません。現在はその手段として税務や労務を担っていますが、将来的にAIがそこを代替するなら、私たちはさらに新しい挑戦に踏み出せます。その一例が、いま進めている「まちづくり事業」です。


ビジョン「LOCALから新たな価値を」
その「LOCAL」に込めた意図

「まちづくり事業」とはどういったものでしょうか?
概要や、取り組み中のプロジェクトについて教えてください。

まちづくり事業は、代表・青谷の親族が経営する外食産業グループ「坂東太郎」の遊休資産活用を目指して始まりました。長期間使われていない土地や古民家といった地域の資源を、地域活性化につなげていく構想です。
この「まちづくり」の考えは、「LOCALから新たな価値を」というビジョンとも合致しています。私たちは、地域で頑張っている人々をバックオフィス支援を通じて支え、地域全体を元気にしたいという思いが根底にあります。まちづくり事業は、こうした理念を体現するための取り組みの一つとして位置づけられています。

具体的には、さきほどお話ししたベーカリーカフェのほか、筑波山のふもとにある廃墟遊園地「ガマランド」の再生や、古民家のワーケーション施設としての活用などのプロジェクトを進めています。

「LOCALから新たな価値を」というビジョンの通り、
今後も地方での事業展開を進めるのでしょうか?

私たちの考える「LOCAL」は、特定の地域に限定されるものではなく、「個人の独自性やユニークさ」のような意味合いを持ちます。地方で活動する人も、東京でユニークなアイデアを持つ人も、それぞれの「尖った部分=LOCAL」を強みとして最大限に発揮し、活躍してほしい。そのために必要な支援を提供する、というのがタスキーの「ビジネスインフラ」の発想です。

将来的には、インフラとしての機能を拡充するため、司法書士業務などを担う法務部門の内製化も目指しています。そのためにも、まずは地縁のある宮城と茨城で「地域で稼ぐモデル」を実証実験しているところです。
再現性のある形にまとめられたら、それをパッケージ化し、他の地域にも展開していくつもりです。それは東京かもしれないし、まったく違うエリアかもしれません。面白い出会いがある場所で、活動を広げていけたらと思っています。

プロフィール
タスキー税理士法人 代表社員 公認会計士・税理士 菊池 友博

東北大学経済学部卒業後、有限責任監査法人トーマツに入社。上場会社の会計監査や上場準備会社の株式公開支援、スタートアップ支援等に従事。主な担当業界は、製造業、ソフトウェア開発業、金融業、建設業、卸売業など。地域の経済に貢献したいとの思いから、2023年10月にタスキーグループにジョインし、つくばオフィスの立ち上げに参画。2024年タスキー税理士法人の代表社員に就任。クラウドを活用したバックオフィスの総合アウトソーシングサービス事業等により、仙台・つくばエリアのスタートアップや中小企業の成長支援を行っている。

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