登録免許税とは?計算方法や軽減税率、免税措置についても解説

登録免許税は、不動産登記や会社設立登記などを行う際に課税される国税です。
登記の時しか掛からない税金ですが、不動産の価額をベースにしているため、高額な不動産取引ではかなりの税額になることもあるので、軽減税率、免税措置を適用するのを忘れないようにすることが大切です。
登録免許税についておさらいしましょう。
目次
登録免許税とは
登録免許税とは、不動産や法人関係の登記、船舶の登記、航空機の登録、その他、特許、免許、許可、認可、認定、指定、技能証明を受ける際に、国に対して納税する税金です。
多くの方は、不動産の売買や相続、法人の設立などで登録免許税を支払うことになります。
登録免許税の計算方法

登録免許税の計算は2種類あります。次のとおりです。
- 課税標準×税率=登録免許税
- 申請件数1件当たりの定額の登録免許税
課税標準とは、不動産登記の場合なら、「不動産の価額」のことです。会社設立登記であれば、「資本金の額」になります。
この課税標準に対して、登記原因に応じた税率を掛けます。例えば、不動産の売買なら、原則として、「1,000分の20」。不動産の相続ならば、「1,000分の4」というように決まっています。
また、登記原因によっては、申請件数1件当たりの登録免許税の額が決まっていることがあります。
例えば、不動産であれば、更正登記は1件当たり、1,000円となっています。株式会社設立登記についても、資本金の額×1,000分の7で計算した金額が15万円に満たないときは、申請件数1件につき15万円になります。
登録免許税の納税義務者は誰か?
登録免許税は誰が納税するのか問題になることがあります。
例えば、不動産売買の登録免許税の場合、売主と買主のどちらが支払うべきなのかという問題が生じることがあります。
登録免許税法では、「登記等を受ける者」が納税義務者とされています(登録免許税法3条)。そのため、不動産売買の登録免許税は、買主が支払うことになります。
一方、民法に則ると売主負担と解したり、売主と買主双方で折半すると解することもできます。売主負担と解する説の根拠は、民法485条の「弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。」との規定です。
不動産売買による移転の費用は売買契約を履行するための弁済費用であると解し、所有権移転登記の債務者である売主の負担とすべきと考えます。
売主と買主双方で折半するべきと解する説の根拠は、民法558条の「売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。」との規定です。所有権移転登記の登録免許税は、売買契約に関する費用であると解するわけです。
なお、判例は、大審院時代のものですが、「不動産売買契約における所有権移転登記は、権利移転に必要不可欠の手続きであるから、その登記に必要な登録免許税は売買契約に関する費用である」と解するものがあります(大審院大正7年11月1日)。
この判例に従うなら、売主と買主双方で折半するべきということになります。なお、民法の規定は任意規定なので、当事者が特約で買主負担とすることも可能です。
不動産売買の実務では、買主負担とすることが多いようです。
登録免許税の税率、税額
登録免許税の税率、税額については、登録免許税法の別表にまとめられています。
登録免許税を支払う理由に応じて、こちらの一覧表で確認しましょう。
この記事では、よく使う不動産の登記と法人の登記の登録免許税の税率、税額をまとめておきます。
土地の登記
- 売買:不動産の価額×1,000分の20
- 相続:不動産の価額×1,000分の4
- 贈与:不動産の価額×1,000分の20
不動産の価額とは、市区町村で管理している固定資産課税台帳に登録されている価格です。固定資産課税明細書で「価格」又は「評価額」として記載されている価格になります。
建物の登記
- 所有権の保存:不動産の価額×1,000分の4
- 売買:不動産の価額×1,000分の20
- 相続:不動産の価額×1,000分の4
- 贈与:不動産の価額×1,000分の20
所有権の保存とは、建物を新築した時に最初に行う登記のことです。
商業登記
商業登記とは、会社設立などの法人の登記のことです。
- 株式会社設立登記:資本金の額×1,000分の7(15万円に満たないときは、申請件数1件につき15万円)
- 合同会社設立登記:資本金の額×1,000分の7(6万円に満たないときは、申請件数1件につき6万円)
- 役員変更登記:申請件数1件につき3万円(または1万円)
役員変更登記は、資本金の額が1億円を超える場合は3万円、1億円以下の場合は1万円です。
登録免許税の軽減税率とは?

租税特別措置法により、登録免許税の税率については、軽減措置を受けられることがあります。
軽減税率が適用される場合、登録免許税が安くなります。
土地の売買関係の登録免許税の軽減税率
土地の売買や保存登記に関して設けられている軽減措置です。
登記の種類 | 本則 | 軽減税率 |
所有権の移転の登記 | 1,000分の20 | 1,000分の15 |
所有権の信託の登記 | 1,000分の4 | 1,000分の3 |
住宅用家屋の関係の登録免許税の軽減税率
住宅用家屋一般に適用される軽減税率と、長期優良住宅等に適用される軽減税率があります。
いずれの場合も、住宅用家屋の床面積が50㎡以上であることや、新築又は取得後1年以内に登記を申請しているといった要件を満たすことが求められます。住宅用家屋の所在地の市区町村長の証明書等の添付が必要になることに注意しましょう。
住宅用家屋の所有権の保存登記等の税率の軽減税率
登記の種類 | 本則 | 軽減税率 |
所有権の保存の登記 | 1,000分の4 | 1,000分の1.5 |
所有権の移転の登記 | 1,000分の20 | 1,000分の3 |
住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記の軽減税率
登記の種類 | 本則 | 軽減税率 |
抵当権の設定の登記 | 1,000分の4 | 1,000分の1 |
特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等の税率の軽減
登記の種類 | 本則 | 軽減税率 |
所有権の保存の登記 | 1,000分の4 | 1,000分の1 |
所有権の移転の登記(マンション) | 1,000分の20 | 1,000分の1 |
所有権の移転の登記(家屋) | 1,000分の20 | 1,000分の2 |
認定低炭素住宅の所有権の保存登記等の軽減税率
登記の種類 | 本則 | 軽減税率 |
所有権の保存の登記 | 1,000分の4 | 1,000分の1 |
所有権の移転の登記 | 1,000分の20 | 1,000分の1 |
特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記の軽減税率
登記の種類 | 本則 | 軽減税率 |
所有権の移転の登記 | 1,000分の20 | 1,000分の1 |
登録免許税の免税措置とは?
登録免許税の免税措置、つまり、本来登録免許税がかかるものの特例により免税されるケースもあります。
代表的なのは相続登記の登録免許税の免税措置です。
相続登記の登録免許税の免税措置とは?
相続登記の登録免許税の免税措置とは、1次相続と2次相続が発生している場合において、1次相続の相続登記が未登記でも、1次相続分については登録免許税が掛からないという特例措置です。
例えば、祖父が所有していた土地を父が相続し、その父も亡くなったために、子が相続したとします。
そして、子がその土地の相続登記をしようとしたところ、その土地の登記名義が祖父のままだったというケースです。この場合、まず、祖父から父の相続登記(1次相続)を申請した後で、父から子の相続登記(2次相続)を申請しなければなりません。
本来なら、1次相続と2次相続とで別々に、登録免許税が掛かります。
ただ、当面の間は、相続登記の登録免許税の免税措置により、1次相続分については、登録免許税が掛からないものとされました。
不動産の価額が100万円以下の土地に係る相続登記の登録免許税の免税措置とは?
不動産の価額が100万円以下の土地について相続が発生した場合は、相続登記における登録免許税が免除されます。
相続登記の登録免許税の免税措置を受けられる期間
上記に紹介した相続登記の登録免許税の免税措置を受けられる期間は、「平成30年4月1日から令和9年(2027年)3月31日まで」の間です。
令和6年(2024年)4月1日、相続登記が義務化されています。
原則として、相続開始から3年以内に相続登記を済ませなければなりません。
令和6年4月1日以前に相続が発生していて相続登記がなされていない場合も同じです。
令和9年3月31日までに、相続登記を行えば、1次相続については登録免許税が掛からないので、その間に相続登記を行うように促す意味合いがあると考えられます。
まとめ
登録免許税の実務は、税理士よりも司法書士が関与することが多いです。
ただ、税理士でも、贈与と相続とでは、登録免許税がどれくらい違うのかという形で、相談を受けることもあります。
相続関係の実務では、必要な知識なので押さえておきましょう。

税理士.ch 編集部
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