属人化こそ私の生きる道
浪速の女性税理士が語る「女性起業家」のリアルと独自のSNS戦略とは? Vol.2

西村税理士事務所 西村 真衣
結婚、出産を経て、自らの事務所を立ち上げた税理士の西村真衣先生。ライフワークとしているのが、女性起業家のサポート。家事・育児と開業を両立させた経験を糧に、起業家のよき相談相手として日々、奮闘している。女性起業家との接点は、SNS。積極的な投稿で情報発信に取り組む一方、SNSの知見をいかした西村先生ならではのサービスも展開している。女性サポートという初心を貫きながら、新たなビジネスにも果敢に挑む西村先生の思いに迫った。
やみくも、は厳禁!
SNS成功のカギとは
女性起業家と接点を持つために、先生はSNSを積極的に活用していると伺いました。
そもそもSNSに関心を持たれたきっかけのようなものはあったのでしょうか?
2021年、コロナ禍で事務所を開業したことが大きかったです。ご承知のように、対面で顔を合わせるのがとても難しい時期でした。それまで専業主婦をしていましたから、いざ開業となったとき広告を出すような経済的な余裕もありませんし、時節柄、集客のための飛び込み営業のようなこともできませんでした。
そうした状況で、私と同じような起業したての、しかも女性を顧客のターゲットにしようと考えたとき、私自身が普段から使っているSNSを有効活用できるのではないかと思いついたのです。
SNSと女性起業家、どんな親和性があるのでしょう?
私は、連絡手段の形式にこだわりはありません。業務のやり取りは電話やメールでなければならない、というような考えは全く持っていません。むしろ、ラインやチャットワークなど、簡易的な文章で気軽にやり取りできるツールの方を好んで使っています。ちょっとした家事の合間などに連絡を取り合えるので専業主婦のときから利用していましたし、同じ理由でこうしたツールを抵抗なく用いている女性起業家も多い気がします。
極端な例かもしれませんが、女性起業家を相手にする場合、ファックスや電話、メールでしか対応しないなどというのは論外なのです。私の経験上、昼夜問わず家事に追われ、子どもが学校に行っている間が業務や相談のチャンスというのが、多くの女性起業家の現実だと思います。だからこそ、素早くコミュニケーションがとり合えるSNSのようなツールが合っているのです。
反響はいかがでしたか?
もちろん、最初からうまくいった訳ではありませんが、少しずつ顧客の輪が広がっていった感じがします。私としては、「こういう税理士がいる」と、既存の顧客がSNSを通じて他の誰かに紹介してくれるような形で集客ができればと考えていました。ホームページだけでは伝わらないような、税理士としての私の特徴や考え方、サービス内容の他、人柄が伝わるようなプライベートな情報などにも触れてもらえるのがSNSの利点です。面識がなく、全く接点のない方から「顧問をお願いしたいです」と連絡をいただくこともあり、SNSの活用が功を奏していると実感しています。
SNSを有効活用するために、どんなことが必要なのでしょうか?
技術的には、色々なことが挙げられます。更新頻度を上げたり 、写真の撮り方を工夫したりするなど、できることは様々あります。特に私は、SNSの中でもインスタグラムを中心に据えているので、どんな写真や動画が目を引くのかは常に考えています。また、ネガティブではなく、ポジティブで前向きな内容の投稿を心掛けてもいます。 ただ、もっと根本の部分で大切なのは、何のためにSNSを使うのかという点を明確にすることです。私の場合はまず、集客のために活用しようと決めました。目的を集客に絞ったら、次に行うべきはいわゆる「ペルソナ」の設定です。
どういう顧客に問い合わせをして欲しいのかを考え、そこから逆算して、そうした顧客にとっての「理想の税理士像」を作り上げていくのです。
思いを届けたい人に好かれる自分がどういう人間かというところを客観的に考えて、そういう自分をSNSを通じて発信していく、ということです。
もともと私には、女性起業家の力になりたいという強い思いがありました。さらに、そうした方々に寄り添うには普段の自分をそのまま表現すればいいと思っていたので、「ペルソナ」の設定や「理想の税理士像」の創出にはそれほど苦労しなかった気がしますが、SNSを有効に使うにはとても大切な思考プロセスだったと思います。
強みをいかした新サービス
いでよ 個性派女性税理士
そうした考え方や手法は、どうやって学んだのですか?
本を読んだりセミナーに参加したりして、自分なりのやり方を追求してきました。その中で感じたのは、他業種と会計業界では、SNSの活用の仕方に違いがあるということです。
例えば化粧品のメーカーであれば、自社の製品をより多く売るのが至上命題となります。たくさん売るという目的のために、一人でも多くの人の目に留まり印象に残るような広告やプロモーション戦略に舵を切るでしょう。SNSでいえば、いわゆる「バズらせる」ための投稿内容が多くなるかもしれません。
しかし、税理士がサービスを売る場合、つまり集客する場面ではそうしたことはあまり考えないものです。最も大事なのは、顧客に自分の考え方をいかに知ってもらい、信頼してもらうための情報を提供できるかなのです。もちろん、多くの顧客を獲得したいという思いはあります。ただ、投稿をバスらせてたくさんの問い合わせをいただいても、全てに対応することは難しいというのが現実です。一方で、信頼に値するとは思えないような税理士に、自分の大切な資産の相談などそもそもしないでしょう。過度に目立つような投稿が、必ずしもプラスに働く訳ではないのです。
こうした知見を、「SNSコンサルティング」サービスという形で広める取り組みも始めています。
具体的に、どのようなサービスなのでしょうか?
今のところは2パターンを用意しています。一つは、ある程度はご自身でSNSを運用していただいて、行き詰ったタイミングで私に相談してもらうパターンです。私はいわゆる「壁打ち」の相手のようなイメージで、低価格の「ライトプラン」になっています。 もう一つは、懇切丁寧に指導するパターンです。最初は、動画や写真の撮影に同行しながら、「こんな感じのアングルで撮ると綺麗だよ」とか「表情はもう少し晴れやかな方がいい」とか、アドバイスしています。SNSの「タグ付け」機能や、X(旧ツイッター)のリツイートなど基本的な用語や使い方を動画にしてお渡ししています。
もちろん、投稿内容やプロフィールの文面についても目を通しています。必要なキーワードを入れるとか、SEO対策に工夫を凝らすとか、顧客と一緒に考えながら有効な方策をお伝えしています。私の実働も伴いますし、毎月必ずミーティングするというプランですので、こちらの方が単価は高く設定しています。
先生ならではのコンサルティングサービスですね。
極めて「属人的」な業務だと思っています。
よく、「業務の属人化は避けよう」といわれることがありますが、誰がやっても結果が変わらない業務については、徹底的な脱属人化が必要だと私も思っています。しかし、特定の人間しかできない業務については、「属人化」がむしろ必要なのではないでしょうか。SNSコンサルティングは私にしかできないサービスだと自負していますので、今後も力を入れていきます。
今年5月には、このコンサル業務を請け負う株式会社「MAIN(マイン)」も、会計事務所とは別に設立しました。

MAINでは、SNSコンサルティングの他、イベントやセミナーの企画にも力を入れていきたいと考えています。会計業界や他士業の先生方とのコラボレーションがメインになります。いずれも、私個人のコネクションを最大限いかしていくつもりです。
先生のような女性税理士が増えると、会計業界も活性化するかもしれませんね。
個人的には、税理士というのは女性が目指し易い資格の一つだと思います。一科目ずつ、確実に合格できるよう勉強を進めて徐々にステップアップしていけるというのは、魅力的な試験制度です。私自身、出産し、子どもの世話をしながら税理士試験の勉強を続け、資格を得ることができました。
当時は家にいる時間が圧倒的に長かったので、合間を見つけながら、気長に勉強することができました。合格まで決して平たんな道のりではありませんが、1回の試験のみで合否が決まる公認会計士などに比べて、税理士の方が目指し易いというのは、個人的な実感として間違いないと思います。
時間を有効活用して、多くの女性に税理士を目指して欲しいです。その上で、自身の強みをいかした、個性的な税理士として活躍していただきたいと思っています。

プロフィール |
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西村税理士事務所 西村 真衣
父も祖父も税理士という家系に長女として生まれる。 |