DXの最前線!TOMAコンサル流、生産性を高めるAI活用術
25名体制のIT部門責任者が語る、DX化と人材育成の秘訣とは Vol.1

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 中小企業診断士 持木 健太
株式会社TOMAコンサルタンツグループのIT部門は、実質1人の担当者から始まった。それが今や新卒を含む25名体制にまで拡大し、社内外を巻き込むDXを推し進めている。今、彼らが注力するのがAI活用による全社の生産性向上だ。労働人口減少という課題に対し、AIを「アシスタント」と位置づけ、業務の効率化を図っている。本記事では、IT部門を率いる持木氏に、推進プロジェクトを立ち上げ、アナログな業務をデジタルへと変革させたDX化の歩みと、AIと共に拓く未来の働き方について迫った。
IT部門の黎明期から拡大へ
社内ベンチャー精神が拓いた道とは
2025年には25名体制になったTOMAコンサルタンツグループのIT部門ですが、
発足から今に至るまでの経緯を教えてください。

専門のポジションとして「IT担当」ができたのは、私が入社した19年前の2006年にまで遡ります。当時は企画部の一部門として、社内ITのサポートと、外部のお客様向けの会計ソフト導入支援を手掛けていました。外部向けの営業活動は私一人で行っていたんですよ。そこから徐々に組織が大きくなり、事業規模の拡大に伴って「IT課」、「ITコンサル部」へと名称を変えつつ、今はITコンサル事業部として4つの部門を抱えるまでに成長しました。
IT課で私が課長になった時点では3名体制、ITコンサル部では5名体制と組織名が変わるにつれてメンバーも増えていきましたが、基本的には社内ベンチャーのような感覚で業務を進めていました。5名体制から現在の25名体制へと拡大したのはここ5年ほどのことです。社内改善に本格的に着手するようになり、人手が足りなくなったため、特に新卒採用を強化しました。
その結果、現在ではITコンサル事業部の半分以上が20代という、非常に若い組織になりました。
人数が増えるにつれて、業務内容も変わっていったのでしょうか?
対クライアントとしては、当初は会計ソフトや販売管理、給与計算といったパッケージソフトの導入支援が中心でしたが、そこから業務改善コンサルティングへと領域を広げました。システムを導入するだけでは業務改善が進まないという課題があったため、コンサルティングとして深く入り込むようになったのです。
さらに、カスタマイズが必要な製品については、RFP(提案依頼書)の作成支援やシステムベンダーの選定サポート、要件定義への同席なども手掛けるようになりました。中小企業ではシステムの要件整理が難しいケースが多いため、外部コンサルタントとして私たちが要望を整理し、ベンダーとユーザーの間に入って認識の齟齬がないようにサポートしています。
kintone導入と社内DX推進
全社を巻き込む変革が始まる
社内におけるデジタル化はどのように進められたのでしょうか。
2016年1月に「IT推進プロジェクト」が発足したのを契機に全社でIT化、デジタル化が始まりました。私がプロジェクトリーダーを務めていたのですが、会議で毎月打ち合わせを行い、幹部会議で承認を得て、システム導入などを進めていく形を取っていました。プロジェクトはデュアルディスプレイ化から始まり、デスクトップPCからモバイルPCやスマートフォンの導入、ペーパーレス化を進めました。段ボール約50箱分あった顧客ファイルを全てスキャンしてデータ化し、空いた空間をカフェスペースにしました。
社外から社内サーバーにアクセスできるインフラ整備もこの時期からです。それまで業務に個人スマホを使っていたところを、社用携帯の貸与を開始し、セキュリティ管理ツールの「SKYSEA」も導入してデータレスPC化を推進しました。決算業務や確定申告もデジタル化を進めたのも同時期です。2017年にはフリーアドレス化やシングルサインオンツールの導入も進め、2018年に経済産業省から初版のDXレポートが発表されたタイミングで、プロジェクト名を「DX推進プロジェクト」に変更しました。FAXのペーパーレス化と電子契約を進め、請求書等の電子化として「Bill One」「楽楽明細」を採用、コミュニケーションツールとしてはChatworkを導入しました。
抜本的で大がかりな改革に全社を挙げて舵を切られたのですね
これだけの規模のDX推進となると費用もかかりますが、一気に体制を変えるのではなくできる部分から進めていくこと、在宅勤務の推進による通勤交通費の削減や、ペーパーレス化による印刷代の3分の1以下に削減など、コスト削減も同時に実現させています。
コロナ禍では「ovice」というバーチャルオフィスも導入しました。コロナ禍で在宅勤務が半分以上になり、出勤者数の7割減も要請される中で、このバーチャルオフィスによって、社内を移動するように他の部署の人と話したり、画面共有しながら打ち合わせができるようになりました。2025年現在も、ITコンサル事業部ではメンバーの半数以上が在宅勤務です。新入社員は入社3ヶ月は出社するルールがありますが、コンサルタント職以上は基本的に自由な働き方をしています。

社内DXを進めるうえで、特に力を入れられた取り組みは何でしたか。
私が旗振り役を担った全社へのkintoneの導入も、社内DXの推進を後押ししました。ちょうど、社内改善の加速化を進めていた時期にサイボウズ社からkintoneがリリースされ、試してみたところ大きな可能性を感じたのです。最初は外部への提案からでしたが、社内でも活用できないかと検討していたところ、ちょうどSFA(営業支援システム)とCRM(顧客関係管理)の刷新プロジェクトが立ち上がり、kintoneを全社システムとして導入することが決まりました。
全社へのkintone導入の狙いは何だったのでしょうか。
情報の一元化です。紙やExcelでの業務が飽和状態で情報が分散していたため、情報を一元的なデータベースで管理しようと考えました。税理士業務でもkintoneは活用しており、タスク管理や社内チェック、例えば決算チェックの管理などを全てkintone上で行っています。ISOの手順などもkintoneに組み込み、ExcelやWordで、それぞれ個別で管理していたものを一元化することで、作業の効率化を図っています。電帳法が義務化された時期には電帳法コンサルティングも多数実施しており、ピーク時にはサイボウズ社のオフィシャルパートナーとして特別賞も受賞しました。
現場の声を基に次々とkintoneアプリ化
社内発アプリを外部展開
最初に作られたkintoneアプリは、どのようなものだったのですか?
Excelで行っていた進捗管理、顧客管理、顧客関連の申請業務、決算・確定申告の進捗管理などを、最初にアプリ化しました。その他、社内申請やスタッフへの業務依頼、完了報告といったアナログ業務の効率化にも活用しました。

現在では運用前のアプリも含めると500ほどのアプリがあり、その半分以上はIT部門が作成しています。契約書申請、お歳暮管理、お客様アンケートの回答から担当者への連絡、評価が良い場合の「ニコニコカード」連携といったワークフローなど、多岐にわたるアプリが動いています。
アプリ開発は年間を通して進めており、各部署の要望をITコンサル事業部がヒアリングし、開発メンバーをアサインしています。最近では、複数の生成AIツールを使い分けているため、機密情報を入れてよいツールとそうではないツールを区別するための管理も、kintoneアプリで行っています。
社内で特に大ヒットしたアプリはありますか?
社内で最も活用されているのは、顧客企業の予算と実績を比較・管理する予実管理と案件管理のアプリですね。以前はExcelで管理していたためデータが重いうえに、Excelと実際の販売管理の金額が合わないといった課題がありましたが、予実管理をkintoneで一元化したことで、この問題が解消されました。また、案件管理アプリでは、見積書作成と同時に案件が自動で立ち上がるため、登録漏れがなくなりました。こういった社内で作り上げたノウハウを外部に提供する際は、「うちはこんなふうに使っていますよ」と事例を提示しつつ、お客様の業種や要望に合わせてカスタマイズして案内しています。
プロフィール |
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TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 中小企業診断士 持木 健太
DX推進の総責任者として、テレワーク環境構築・ペーパーレス化・電子帳簿保存法対応・ビジネスモデルの再構築などで活躍中。 企業の労働生産性向上や付加価値向上を目指して、中小企業から上場企業まで幅広く対応している。 |