重加算税が課されるケースや税額、対策

重加算税が課されるケースや税額、対策

重加算税は、過少申告、無申告、不納付が発覚し、かつ、隠蔽や仮装などがあった場合に課される附帯税で、過少申告加算税等よりも多額の税率を課されてしまいます。

重加算税を課された場合は、青色申告の承認が取り消されるなど様々なリスクがあるため、日頃から、適切な会計処理を行い、申告と納税を正確に行うことが大切です。

重加算税が課されるケースや税額、対策についてまとめます。

目次

重加算税とは

重加算税とは、過少申告、無申告、不納付が発覚し、かつ、隠蔽や仮装などがあった場合に、国税通則法68条の規定により課される附帯税です。

本来の納税額のうち、未納部分の税額である「追加本税」に対して、一定の税率を掛けることにより算出します。さらに、重加算税は、税務調査などで発覚することが多いことから、「延滞税」もセットで課されることが多いです

そのため、重加算税を納税する際は、「追加本税+重加算税+延滞税」という税金がかかってしまいます。

重加算税の対象となるケース

重加算税の対象となるのは、次の3つの加算税が課せられるケースで、かつ、隠蔽や仮装などがあった場合です。

  • 過少申告加算税
  • 無申告加算税
  • 不納付加算税

一つ一つ確認しましょう。

過少申告加算税

過少申告加算税は、期限内に納税した者の納税した金額が本来納めるべき金額よりも少なかったために修正申告書の提出又は更正を行う場合に加算される税金です。

原則として、修正申告又は更正により納税すべき金額に対して、10%の税率が加算されます(国税通則法65条)。

無申告加算税

無申告加算税は、期限内に申告を行わなかった場合に、本来納めるべき金額に対して、加算される税金です。

納付すべき税額に応じて次の税率が加算されます(国税通則法66条)。

税額税率
50万円以下15%
50万円を超え300万円以下まで20%
300万円超える部分30%

不納付加算税

所得税の源泉徴収税額について、法定納期限までに完納しなかった場合に課される税金です。納税すべき金額に対して、10%の税率が加算されます(国税通則法67条)。

重加算税による税率

重加算税は、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税を納付すべきケースで隠蔽や仮装などがあった場合に課せられます。

隠蔽や仮装といった行為はより悪質性が高いため、重加算税という形で税額が加算されます。

原則的な税率からそれぞれ次の額になります。

原則の税率重加算税の税率
過少申告加算税10%35%
無申告加算税15%~30%40%
不納付加算税10%35%

重加算税はさらに重くなることもある

重加算税は、税務調査によって発覚することが多いですが、税務調査ではまず、過去3年分について調査を行います。

この際、重加算税の対象となる過少申告、無申告が発覚した場合は、さらに過去にさかのぼって調査が行われます。問題が認められた時は5年、重大な問題が認められた時は7年さかのぼって調査が行われます。

そして、5年前の分についても無申告加算税が確認された場合は、重加算税がさらに10%加算されてしまいます。

通常の重加算税の税率加算後の税率
過少申告加算税35%45%
無申告加算税40%50%
不納付加算税35%45%

また、電子帳簿保存法に基づいて保存していたデータに関して重加算税が課されるケースでは、重加算税が自動的に10%加算されてしまいます(電子帳簿保存法8条5項)。

重加算税が課された場合のリスク

会社などの法人や個人事業主などに重加算税が課された場合は、様々なリスクが生じます。主なリスクを確認しておきましょう。

納税額が増額されてしまう

重加算税が加算されることにより、本来納付すればよい税額よりも高額な納税を求められてしまいます。事業の規模や金額によっては、経営や業績にも響きかねないこともあります。

青色申告の承認が取り消される恐れがある

青色申告は、帳簿書類の備付け、記録、保存などがしっかり行われていることを前提に、税務署が承認を出しています。

重加算税が加算されるケースでは、帳簿書類等の隠蔽や仮装が行われていたことになりますから、青色申告の承認が取り消されることもあります。

国税庁の「青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」にも、隠ぺい又は仮装の場合等における青色申告の承認の取消しの指針が定められているので確認しておきましょう。

参考:個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)
参考:法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)

税務調査が厳しくなる恐れがある

重加算税が加算されるケースでは、帳簿書類等の隠蔽や仮装が行われていたわけですから、今後も、税務署は厳しく税務調査を行うようになる可能性があります。

税務調査の頻度も増えて、調査内容も厳しくなることが予想されます。

重加算税が課される隠蔽又は仮装とは?

重加算税は、隠蔽や仮装などがあった場合に課されるわけですが、では、隠蔽又は仮装とは何でしょう?

隠蔽又は仮装に該当するケースについては、国税庁が様々な通達を出しているので、正確にはこちらを参考にしましょう。

おおむね、次のようなケースが隠蔽や仮装と判断されてしまいます。

  • 二重帳簿の作成
  • 帳簿書類の破棄又は隠匿
  • 帳簿書類の改ざん、虚偽記載などの仮装の経理
  • 帳簿書類への不記録
  • 損金算入又は税額控除の要件とされる証明書を虚偽の申請などにより取得している
  • 簿外資産に係る利息収入等の不計上
  • 簿外資金による役員賞与等の支出
  • 同族会社なのに非同族会社と偽っている
  • 使途不明金及び使途秘匿金に関して帳簿書類の破棄、隠匿、改ざん等がある

参考:法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
参考:申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
参考:源泉所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)

重加算税対策として税理士がやるべきことは?

クライアントの企業等が税務調査で重加算税を課せられないようにするためには、税理士が日頃から、クライアントの企業の帳簿書類等をチェックしておくことが大切です。

税務調査されることを防ぐ

重加算税対策として最も有効なのは、税務調査されることを防ぐことです。

正しく申告し、納税していれば、税務調査の対象となることはないはずです。仮にミスを指摘されたとしても、過少申告加算税等にとどめることができ、重加算税まで課されることはないでしょう。

そのためには、帳簿や会計方法を税理士が日頃からチェックし、申告時も念入りに再点検することが大切です。法令改正に対応していなかったり、会計処理が誤っている場合は、税務調査の対象となる可能性があるので注意しましょう。

クライアントに経理のベテランがいたとしても、細かい法令改正まで知っているとは限らないため、税理士が専門家としてサポートする必要があります。

税務調査されやすい事業では税理士を顧問につける

税務調査は、会計の不正が行われている企業だけが対象となるわけではありません。重点業種と言い、会計の不正があるかどうかに関わらず、税務署が重点的に税務調査を行う業種もあります。

例えば、風俗営業、廃棄物処理業、土木工事業などの業種です。

こうした業種については、税務調査がいつ入ってもよいように、税理士を顧問につけて、日頃から帳簿書類のチェック等を重点的に行っておくことが大切です。

また、他の業種でも、業績が良い会社や売り上げの増加率が高い会社なども税務調査が行われる可能性があります。

税務調査された時は隠蔽又は仮装ではないことを主張できるようにしておく

税務調査された時は、指摘事項に対して、隠蔽又は仮装ではないことを主張できるようにしておくことが大切です。

単純な帳簿への記録のミスや領収書の取り違え等であれば、冷静に主張できるようにすることが大切です。そのためには、税理士が税務調査に立ち会って対応するのが最善です。

まとめ

重加算税が課されるケースや重加算税の具体的な税額について解説しました。

クライアントの企業に税務調査が入り、重加算税が課された場合は、税金が増額されてしまうだけでなく、青色申告の承認が取り消されたり、今後の税務調査が厳しくなるといったリスクがあります。

重加算税を課せられないようにするためには、税理士が日頃から、クライアントの企業の帳簿書類等をチェックし、税務調査の対象となりやすい項目を是正するといった対策が重要です。

税理士.ch 編集部

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